バロンズ:債券自警団が再登場も、ブラックマンデーの歴史は繰り返さず

バロンズ誌、今週のカバーは宇宙産業を取り上げる。2017年に宇宙産業の波が訪れ、同誌が表紙に掲げた当時は、リチャード・ブランソン氏率いるバージン・ギャラクティック・ホールディングスが特別目的会社(SPAC)を通じ新規株式公開する2年前にあたり、ビアサットは衛星関連として数少ない上場企業の一つだった。当時、バロンズ誌が推奨した宇宙関連銘柄は、防衛関連企業のロッキード・マーティンやボーイングにとどまっていたものだ。今では、コスト低下と投資家需要がそのそうした状況を一変させ、宇宙旅行ビジネスは大いに注目を集め、投資家は衛星事業やロケット打ち上げ事業、宇宙関連の物流ビジネスにも資金を投じている。宇宙関連の時価総額は今では約250億ドルと、数年前のほぼゼロから大きく変化し、そこにはテスラのイーロン・マスク氏が創業したスペースXや、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が立ち上げたブルー・オリジンなど非上場企業を含まない。今後さらに拡大が見込まれる宇宙産業はどのように成長していくのか、注目銘柄などを含めた内容は本誌をご覧下さい。

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当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は米金利上昇を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

債券自警団が新たなブラックマンデーを引き起こす可能性は低い―Bond Vigilantes Are Unlikely to Cause a New Black Monday for Stocks.

債券自警団が市場に戻ってきたようで、米国債に制裁を加えるだけでなく、ナスダックの高PER銘柄にも打撃を与えている。彼らは、1987年10月のブラックマンデーのように、米株相場を急落させるのだろうか?

1980年代と言えば、債券自警団が市場を席巻し、インフレ加速の脅威をもたらす過剰な緩和策にペナルティを与えていた。彼らは金利を上昇させ、株価下落を招いた。

現在に視点を移すと、米債市場と米株市場は連動し、バッドニュースは金利低下につながるグッドニュースとして解釈されている。1980年代との違いは、「Fedと戦うな」という市場の格言を無視し債券自警団がFedと争っていることだ。Fedは、雇用の最大化とインフレの2%超えを達成するまで、ゼロ金利政策と月1,200億ドルの資産買入を続けると表明した。

ディスインフレ下で米債は1980年代に強気相場に突入、米10年債利回りが1981年に15%でピークアウトすると低下トレンドを続け、2020年8月には0.5%まで低下した。2020年末に0.92%へ上昇した当時は、ほとんど米株に影響を与えなかった。しかし、足元での米国債売りは既に大きな影響を及ぼしている。「iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF(TLT)」の3月18日までの年初来リターンは14.9%安だ。米10年債利回りは1.73%、米30年債利回りは2.45%と過去と比較して未だ低水準であるにも関わらず、この状況である。コロナ禍でFedが導入した超緩和策の巻き戻しと言えよう。

これまで、金融市場は広範にわたって金利上昇局面で踏みとどまっており、ダウは17日に3万3,000ドル台を突破した。Fedがゼロ金利を維持するなかで、金融株は金利上昇の波に乗り買いが入った。米2年債と米10年債の利回り格差は157bp(1.57ポイント)と、2015年7月以来で最大となる。

ただし、米債利回りの上昇は高PER銘柄の下落につながり、「インベスコQQQトラスト・シリーズ1(QQQ)」はナスダック100の非金融銘柄に連動するが、年初来で0.54%安で、テスラに代表されるグロース株が集まる「ARKイノベーション(ARKK)」は3.55%安となる。

米債利回りは一体いつまで上昇し、米株相場にどこまで影響を与えるのだろうか?

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チャート:米債利回りの推移 作成:My Big Apple NY

アカデミー・セキュリティーズのマクロ・ストラテジー部門のヘッドであるピーター・チャー氏は、テクニカル的に利回りは短期間において上昇を続けると予想。米10年債利回りは1.87%をつけると見込むが、2.1%超えも視野に入りそこを抜けた場合は約2年前の水準である2.5%まで上昇してもおかしくないという。ただし、こうした局面はパウエルFRB議長のいう「無秩序な動き」と判断され、Fedが介入してこよう

パウエルFRB議長率いる米連邦公開市場委員会(FOMC)は、足元で米債利回りが上昇するなかで、資産買入策を修正しなかった。これは、豪準備銀行が3年債利回り目標にコミットする姿勢を固め、欧州中央銀行が資産買入の加速を決定した動きと一線を画すものである。

足元で利回りが上昇しつつあるとはいえ、米債取得に疑問を持つ市場関係者は少なくない。ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者、レイ・ダリオ氏はその1人で「なぜ人は債券を購入するのか」と題したリンクトインへの寄稿で、機関投資家や年金が利回りの低い、時にはマイナスに突入する債券に資金を流入させていることに疑問を投げ掛けていた。グッゲンハイム・インベストメンツのグローバル・チーフ・インベストメント・オフィサーのスコット・ミナード氏は、これまでの推移を踏まえ足元の利回り上昇について限定的と指摘、レーガン時代に長期債が一時200bp上昇し1983年に12%をつけた後、1986年に7%まで低下したと振り返る

過去は再び韻を踏むのかもしれない。経済活動の再開と財政刺激に押し上げられ、需要が急回復しインフレが一時的に上振れしたとしても、供給側のボトルネックにつながるだろう。しかし、ミナード氏によればこうした動きは一時的で、供給側の問題が解消され、すぐに需要に追いつき、インフレを沈静化させるはずだ。

ミナード氏は米10年債利回りが短期的に上昇し2~2.25%のレンジに向かうシナリオを排除していない。とはいえ、グッゲンハイムのモデルによれば既に利回りは上放れした状態にあり、利回りは今後低下に向かいゼロ%を割り込む可能性を残す。しかし、利回りの低下は経済や金融システムにバッドニュースがもたらされた場合に起こりうる。

1987年10月19日のブラックマンデーは、米10年債利回りが10%へ急伸し、株価収益率(PER)が20倍を超え株式が割高に振れた局面で発生、ダウは1日に22%と過去最悪の下落率を記録した。

2018年後半には、米10年債利回り3%台へ上昇し、米株相場は20%下落し弱気相場入りしたものだ。その結果、Fedは利上げを18年12月末で終了させ、19年7月には予防的利下げへ転じることになる。

いずれにしても、債券自警団が1987年当時のように米国債と米株相場を圧迫する前に、パウエル氏率いるFedは対応策を講じるだろう

3月末にかけ、機関投資家や年金が四半期末を控えポートフォリオのリバランスを行うとみられ、一時的ながら米債利回りの上昇にブレーキが掛かる見通しだ。ウェルズ・ファーゴによれば、年金は280億ドルもの資金を債券に流入させるとみられ、その規模は2009年以来で最大になるという。特に年金ファンドは債券、株式、不動産、オルタナティブの間で資産のアロケーションを調整、期間ごとのポートフォリオ・リバランスによって割高な銘柄を売り、押し目買いする傾向がある。現状、長期ゾーンの米国債と社債は1~3月期のリターンが11.2%安なだけに、米債は年金ファンドの47%を占め最大の資産クラスとなるが、彼らが買い増す可能性がある。

年金ファンドにとってグッドニュースは、株高と利回り上昇を受け、ソルベンシー(支払い余力)が改善したことにある。確定給付型年金の年金ファンドの場合、ソルベンシー・マージン比率(年金支払いのために積み立てている支払い余力を測る指標)は平均で96%と、20年10月時点の93%をつけてから最高となった。

個人投資家は、年金ファンドと違って目に見えるリターンを選ぶだろう。UBSのグローバル・ウェルス・マネジメントで最高投資責任者を務めるマーク・ハーフェレ氏によれば、米債利回りが上昇しているとはいえ、安全資産である米債利回りはインフレ率を上回る見通しにはない。そうなれば、個人投資家は配当銘柄や社債などのリスク資産に目を向けよう。経済回復は、投機的格級のエネルギー企業の社債など高利回り債への資金流入を招くはずだ。

UBSでは、顧客にリフレーション・ポジションを推奨する。つまり、エネルギー関連と金融株などバリュー株の推奨を意味する。これらの銘柄は、2020年のアンダーパフォームを巻き戻し、小型株は大型株を上回るリターンを遂げる見通しだ。

機関投資家がポートフォリオを調整する一方で、個人投資家は1,400ドルの現金給付を受け取る。ジェフリーズのエコノミスト・リサーチによれば、3月17日には預金口座に2,420億ドルもの資金が流入した。バンク・オブ・アメリカのストラテジストによれば前週、株式ファンドに683億ドルもの資金が流入したという。現金給付は支出に向かうというより、株式市場へ流入したと言えそうだ。

――債券自警団とは、物価上昇を招く財政・金融政策を行う当局に対し債券売りで抗議する投資家を指します。足元の金利上昇は、3月末に補完的レバレッジ比率(SLR)の時限措置打ち切りを阻止する上での動きだったようにも見え、結局19日に予定通り終了を発表すると売り圧力は限定的となり、米10年債利回りの上昇はわずかにとどまりました。3月末のリバランスも視野に入ったのかもしれません。ただし、リバランスはあくまで3月末までですから、問題は4月以降の経済指標に対する市場の反応となります。20年3~4月の落ち込みからの反動に加え、現金給付の押し上げが予想され、物価と個人消費は上振れする見通し。ただ、7月末の債務上限の適用停止の期限切れに伴う交渉再開で不透明性が高まれば、短期ゾーンを中心いに米債利回りが低下に向かい、Fedもオペレーション・ツイスト再開で対応する余地を生むのでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年3月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。