バロンズ:増税や財政赤字拡大は、米株投資家に織り込み済みか

バロンズ誌、今週のカバーは配当銘柄で引退生活を楽しむ方法を掲げる。コロナ禍で米株相場は急落を経て力強い上昇局面の波に乗ったが、配当銘柄は他と比べパフォーマンスは出遅れているだけでなく、多くの企業が配当停止あるいは減配に踏み切った。S&P500構成銘柄のうち配当面での優良株は年初来で配当込みで8.1%高と、S&P500全体の12.7%高を下回る。とはいえ、2020年の急落とその後のアンダーパフォーマンスは、値ごろ感を強めている。そこで、バロンズ誌はいま買うべき配当10銘柄をピックアップした。通信やヘルスケア、公益、生活必需品を中心に選ばれし10銘柄の詳細については、本誌をご覧下さい。

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当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は米株高を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

増税?赤字財政支出?それでも米株相場が気にしない理由-Higher Taxes? Deficit Spending? Why the Stock Market Isn’t Worried.

ウォール街はバイデン政権下で成立した1.9兆ドルの追加経済対策が及ぼす影響を評価してきた。しかし、今後は法人税引き上げや所得税引き上げ、キャピタルゲイン税引き上げなど増税案について考え始めるはずだ。

投資家は動じているようには見えない。S&P500とダウは22日週に1.5%高で引け、26日には最高値を更新して取引を終えた。ただし、多くの割高銘柄は米長期金利の上昇が一服しているにも関わらず、売り圧力を受けている。ナスダックは22日週に0.6%安で引け、テスラやロクなどを含み投機的な銘柄の代表格として知られる「ARKイノベーションETF(ARKK)」は、6.9%安でクローズ、年初来のリターンは8.5%安という状況だ。

バイデン大統領は、法人税を21%から28%へ引き上げる方針について選挙戦で言及済みだ。ゴールドマン・サックスのストラテジスト、デビッド・コスティン氏は前週のレポートで法人税を25%に引き上げると予想。25%の引き上げやその他の方法で法人税負担が拡大する場合は、2022年の1株利益見通しは3%引き下げ197ドルになり、28%であれば9%引き下げ185ドルとなる。S&P500の26日の引け値3,974を踏まえ、GSの法人税25%で試算した2022年の1株利益予測値は20倍に相当する。

ブラックストーンのシニア投資ストラテジストであるバイロン・ウィーン氏いわく「増税は、市場にある程度織り込まれている」。また「バイデン氏が選出されてから、人々は既に増税に備えてきた」といい、同時に投資家は上院の共和党や上院民主党の保守派が法人税引き上げに反対することも了解済みだという。ウィーン氏は米10年債利回りが2%を超えたとしても、今年のS&P500に上昇余地を見込む。この水準であれば「米10年債利回りが2%を超えても、株価収益率20倍に耐えられる」と判断しているためだ。

一方で、赤字支出はほとんど注目されていない。ストラテガス・リサーチ・パートナーズのワシントン・チームは、2021年度(21年9月末まで)の財政赤字につき3.4兆ドル、GDP比16%になると予想し、実現すれば2020年度の3.1兆ドルを上回る。 ストラテガスは2022年度も、1.5兆ドルの赤字を見込む。

チャート:米議会予算局の財政赤字見通しは、ストラテガスより楽観的で21年度は2.3兆ドル(GDP比10.3%)

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作成:My Big Apple NY

とはいえ、米債と米株の投資家はレーガン元大統領の言葉「財政赤字を懸念していない。財政赤字は、赤字そのものが対応できるほど大きい」に同調し、気に掛けていないようだ。

株主総会のシーズンになると、企業は企業統治の説明に取り掛かる。5月1日にオンライン株主総会を控えるバークシャー・ハサウェイは、ウォーレン・バフェット最高経営責任者(CEO)の経営スタイルにより、例外と言えよう。多くの大手企業が多様性や社会的責任について焦点を当てる一方で、バークシャーは株主に対し、多様性の記録を数量化すること、並びに気候変動のリスクや機会への対応を詳説することへの提案を却下するよう求めた

バークシャーは「多様性、多様性の受け入れ、公正さ」にコミットするという。その一方で、同社は60社以上を束ねるコングロマリットとして「標準化された手法」を当てはめることが適切とは思えないとの立場を表明した。気候変動対策については「株主として、そしてバークシャーの将来の経営の観点から、気候変動のリスク管理の重要性を認識している」ものの、「非中央集権化した会社として、マネージャーに裁量の余地を与え、バークシャーの企業管理部門による統一した必要条件を提示して縛り付けない」との見解を寄せた。

さらに、取締役についても足元の流れに与せず。14名の取締役のうち女性は3名、非白人は副会長のアジット・ジャイン氏と元アメリカン・エクスプレスのCEO、ケネス・シュノールト氏の2人だ。

企業統治の考え方はさておき、エドワード・ジョーンズのアナリスト、ジェームズ・シャナハン氏は米経済において広範囲のエクスポージャーを有する同社の投資判断を「買い」としている。クラスA株が388,000ドルと、株式純資産倍率(PBR)の1.3倍と割安という点も魅力だ。バーリントン・ノーザン・サンタフェという鉄道会社を抱えるだけに、バークシャーの業績は今年押し上げられるに違いない。

――増税については、4月頃にインフラ計画と雇用対策との三位一体で提示されるであろう気候変動対策との絡みで、詳細が伝わってくることでしょう。法人税率が当初案の28%から25%へ引き下げられれば、想定以下で買いを後押しする期待がある半面、雇用への影響が気掛かりです。そもそも市場が本当に織り込んでいるのか、特に売買注文で約2割を占める個人投資家については機関投資家ほど増税への影響を加味しているかは不透明。債務上限引き上げ交渉を夏に控え、市場にボラティリティがもたらされそうな気配が漂います。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年3月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。