公務員の”安定”は”ほんとうの安定”なのだろうか

中沢 良平

将来なりたい職業ランキング(第一生命調べ)で、公務員は安定の人気のようです。中高生の1位は男女ともにサラリーマンです。公務員も2位や3位です。YouTuberもスポーツ選手もあります。

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選択肢のカテゴリーがヘンですが、設問を作った人の意図なのか、見識がないのか、どちらなのでしょうか。第一生命的には保険料徴収のためにも、安定した収入のあるサラリーマンや公務員になってほしいのかもしれません。

けれども、小中学生の子ども心にまで公務員はいいものだという刷り込みが浸透しているのはすごいことです。

身分という意味では抜群の“安定”

公務員は、身分という意味では“安定”しています。

最近は、会計年度任用職員というものまで飛び出してきて、年度のみの雇用で身分は安定していないのに、それ以外の責任は公務員と一緒という一線を越えた職員採用を行っているようですが。

公務員や大企業のサラリーマンは、給与が毎月入ってきてそれを当たり前と思っています。そういう意味でも“安定”しています。

安定と引き換えに失ったもの

けれども、安定を最優先した結果、国家公務員も地方公務員も、教育公務員も、大切なものを失いました。失われた何十年の末に、日本人は“安定”さえ保証されれば、あとはなにもいらないという価値観になってしまいました。

公務員のような日本の組織には、マネジメントはないように見えます。だれが管理職の神輿になっても、下々の人たちが忖度して動いてくれるからです。それは身分の“安定”からきています。一生お世話になるのだから、波風立ててはいけないという配慮が一人ひとりに生まれるからです。

だから、長時間労働になります。“安定”と引き換えに交渉の余地はなくなってしまったからです。

また、同程度の報酬の転職が極めて困難なので、職場の人間関係から逃げられません。それを”安定”していると言うのならば、そうなのでしょう。

日本の組織の運営者は、ジョブ型雇用に移行したいというのが本音だと思います。けれども被雇用者から見れば、それは欧米的ジョブ型と日本的メンバーシップ型忠誠心の悪いところ取りの雇用形態になる可能性があります。

これからも安定第一でいけるか

そして、今後も公務員の身分は安定でしょうか。身分保障があろうがない袖は振れなくなります。公務員のリストラは、身分保障ゆえにかなりいびつな形で進行するでしょう。そのとき、組織運営の要を担っていた優秀な人から辞めていくはずです。

技術職や技能職でも、公務員の場合、転職は容易ではありません(一部コンサルに転職などありますが)。職務経歴書に書くことがほとんどないからです。

そうなったときにはじめて、人々は“ほんとうの安定”とはなんだったのかを考えて、ほんとうの働き方改革が進むのかもしれません。


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