バロンズ:「根拠なき熱狂」に酔う米株投資家に必要なのは・・

バロンズ誌、今週のカバーはディズニーを取り上げる。カリフォルニア州のディズニーランドは、今月末に営業を再開する予定だ。パンデミックの状況を鑑み、入場者数を従来の25%に制限し、マスク着用を義務付け、ハイタッチを始め恒例イベントのパレードや花火は行わない。とはいえ、米国の経済活動の再開を表す象徴的な動きと位置付けられよう。

Meinzahn/iStock

カリフォルニア州より格段に広いフロリダ州では、昨夏より既に安全に営業を再開させており、入場制限は銃らの25%から35%へ引き上げられ、一時帰休に入っていた従業員も徐々に戻りつつある。そのディズニーの最高経営責任者(CEO)は、ディズニーランドなどパーク部門の責任者だったボブ・チャペック氏だ。チャペック氏は、バロンズ誌とのビデオ・インタビューでディズニーランドがコロナ禍以前の水準を回復することに大いなる自信を表明。ード関連は今やモバイル・オーダーが84%を占めコロナ前の13%を大幅に上回り、行列による密集回避に役立てている。財務面でも、閉鎖に見舞われた2020年度(20年9月末終了)にフリーキャッシュフローを36億ドル積み上げ、今年は33億ドルとなる見通しだ、20年に配当の中止を決定したものの投資家は進展を歓迎しているようで、株価はチャペック氏がCEOに就任してから45%上昇し、S&P500の30%高を超える。時価総額は3,400億ドルと、かつて越されたネットフリックスを約1,000億ドル上回り、さらなる飛躍が期待されるところだ。今後の展開について、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は最高値更新を続ける米株市場の熱狂に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

根拠なき熱狂か?足元の異常な盛り上がりはITバブル超えも―Irrational Exuberance? Today’s Wacky Markets Could Be Beyond That.

一部の世代にとって、グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が「根拠なき熱狂(irrational exuberance)」と発言してから四半世紀が経過したというのは、衝撃的だ。当時のITバブルがいかに常軌を逸していたかを象徴的に表した言葉である。最近では、市場の熱狂ぶりを捉えた表現として、ニューヨーク・マガジンがウィリアム・アンド・メアリー大学のピーター・アトウォーター非常勤教授(経済学)による「Can I SPAC My Stonks With NFTs?」を表紙に掲げた(筆者注:特別買収目的会社(SPAC)を通じた新規株式公開(IPO)の隆盛と、 NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン、ブロックチェーンを使ったデジタル資産の一種)の取引量急増を取り上げると共に、”Stock=株式”を敢えてスペルミスしたスラングであるStonksを用い、金融知識が十分でない人々が市場に群がっていることを指す)。

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画像:ニューヨーク・マガジン、4月16日号の表紙 出所:New York Magazine

このような時、筆者はポール・マクレイ・モントゴメリー氏に相談できたらと願う。同氏は、行動経済学が学会で認知される以前に「市場は理性的である」と捉えた通説に疑問を低した人物だ。モントゴメリー氏は時流を捉えた雑誌としてタイム誌を取り上げ「タイム誌表紙指数」を世に送り出した。同指数によれば、熊(ベア)が表紙に掲載された当時、1973~74年の弱気相場の底打ちとほぼ一致していた。また、80年代前半には「金利による苦痛」との文字が躍ったと同時に、金利が頭打ちした。

仮にいま、モントゴメリー氏がニューヨーク・マガジン4月16日号の表紙「Can I SPAC My Stonks With NFTs?」を見たならば、市場の熱狂がピークに達したと指摘するのかもしれない。とはいえ、グリーンスパン氏の「根拠なき熱狂」との表現が実際に的中しITバブルが崩壊するまで、5年掛かった。

こうしたトレンド指標とは別に、市場が有頂天になっていることを表す指標が存在する。その最たる例こそ、暗号資産の取引所コインベース・グローバルのIPOで、時価総額は850億ドルに達した。もうひとつは、著名な投資家デビッド・アインホーン氏率いるグリーンライト・キャピタルが投資家向け書簡で取り上げたマイクロキャップ(超小型銘柄)、ホームタウン・インターナショナルの存在だろう。同社の時価総額は、ニュージャージー州にあるデリを1店経営し売上高は過去2年間でたった3.5万ドルだったというのに、時価総額は一時1億ドルに及んだ。これは、アインホーン氏が極めて辛辣に指摘するように、当局による監督怠慢で企業幹部の違法行為がまかり通った事例と言えよう。

しかし、こうした異常事態が発生した源泉は過剰流動性にあり、株価や投機的格級の債券の価格を未曽有の水準まで押し上げてきた。後者に関し、バンク・オブ・アメリカのクレジット・ストラテジスト、オレグ・メレンティエフ氏がCCC格付けのジャンク債を14倍のレバレッジを掛けて取引しながら利回りが6.5%というのは、利回りを求める声が限界に達したことを表すと語る。

一方で、米国の大手銀は、低金利を機会を捉え大規模な車載発行に踏み切っている。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは決算発表後まもない16日に150億ドル起債、JPモルガン・チェースの記録である130億ドルをたった1日で破った。

このように相場に高揚感が漂う時、投資家は一定の冷静さを持つことが必要だ。しかしマルクス兄弟が「オペラは踊る」で盛り込んだ台詞のように、「正気ではない」時には難しい。

--コラムに対する読者コメント欄に、面白いエピソードがありましたので紹介します。差別的な表現と受け取られ、不快な思いをされる方がいらっしゃるならば、そういう意図はございませんが先にお詫び申し上げます。

とある60代の男性は1年前、バイデン政権の大統領選での勝利をにらみ、再生可能エネルギー関連銘柄に投資した結果、彼のポートフォリオは300%も急騰しました。有頂天になっていた彼に、妻はパフォーマンスを一覧した上で全ての銘柄を売るよう指示したのです。売却した銘柄の株価は、その後2倍に膨らんだため当初は妻に激怒した彼、今となっては「60代だというのにロビンフッダーのように取引していた」と反省すると共に、「妻こそが最高の投資だ」と感謝の気持ちを表すほど。彼のコメントに対する他読者の返信も「だからこそ、企業の取締役に女性を含めることが重要だ」などと同調するトーンが続いていました。パートナーのように、信頼できる人の冷静かつ客観的なアドバイスは、確かにプライスレスですよね。

振り返れば、筆者がNYに在住していた頃に出会ったウォール街の女性エコノミストには、強気派より慎重派が優勢だった印象があります。男社会で有名なウォール街でも、ジェーン・フレイザ―氏が2020年にシティグループのCEOとして就任、女性初の快挙を成し遂げましたが、歴史的にみて大手銀の幹部をみると、リスク判断が求められる最高財務責任者(CFO)には比較的女性が多い。例えば、JPモルガン・チェースの現在の最高財務責任者(CFO)はジェニファー・ピプスザック氏で、その前もマリアン・レーク氏でした。モルガン・スタンレーのCFOを務め2015年に年俸37億円でグーグルに移籍したルース・ポラット氏も、その例に洩れません。もちろん、今話題のアーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッド氏のように大胆にリスクを取る女性もいらっしゃいますが、コラム氏の読者コメント欄などに基づけば、女性は男性よりリスクに敏感な傾向が強いのかもしれません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年4月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。