バロンズ:超緩和策がもたらした過剰流動性の、思わぬ効果とは

バロンズ誌、今週のカバーはマリファナ株を取り上げる。米国のマリファナ関連企業、キュラリーフやグリーン・サム・インダストリーズ、トゥルーリーブ・カンナビス、クレスコ・ラブズなどは、大麻を扱う業務が承認された州でライセンスを受けて営業している。とはいえ、マリファナ業界は米連邦政府において違法薬物であることに変わりはない。だからこそ、キュラリーフは90億ドルの時価総額ながら、カナダ証券取引所で上場しつつも取引所を介することなく、店頭売買される場合が多い。実際、マリファナ使用が合法なカナダのマリファナ生産大手キャノピー・グロース、ティルレイ、アフリアなどがナスダックで上場している程度で、これらの売上は米国の生産者を下回り投資家に損失をもたらしている。

Pineapple Studio/iStock

しかし、状況は米国のマリファナ生産者にとって好転しつつある、4月19日、下院はマリファナが合法な州で銀行が同産業と取引できる法案を321対101で可決、上院指導部もこれを支持している。さらに、コロナ禍で歳入に喘ぐ州はマリファナの売上に目を付け、ニューヨーク州やニュージャージー州、バージニア州、ニューメキシコ州などが他13州に倣い娯楽用大麻使用を合法化させた。娯楽用大麻の売上がこうした州で伸び歳入増につながれば、他の州も追随する公算が大きい。マリファナ産業の見通しは、本誌をご覧下さい。なお、日本領事館はNY州やニュージャージー州での娯楽用大麻使用の合法化について、以下の通り注意喚起しております点を申し添えます。

「日本の大麻取締法は、国外において大麻をみだりに、栽培したり、所持したり、譲り受けたり、譲り渡したりした場合などに罰する規定があり、罪に問われる場合があります。この規定は日本国内のみならず、海外においても適用されることがあります。つきましては、在留邦人の皆様及び日本人旅行客の皆様におかれては、日本の法律を遵守の上、日本国外であっても大麻に手を出さないように十分注意願います」

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は過剰流動性の効果を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

過剰流動性の恩恵を受ける株主と住宅売り手にとって、引退が容易に-Flood of Liquidity Is Sweetening Retirement for Stock Owners and Home Sellers.

金融危機の最中、”棚からぼたもち(Pennies From Heaven”という曲が経済的に打撃を受けた米国民の間でもてはやされた。その頃、米連邦準備制度理事会(FRB)の議長だったバーナンキ氏は、経済学者ミルトン・フリードマン氏の思想を現代風にアレンジに量的緩和を通じヘリコプター・マネーを米国にもたらした。

足元、米国は米政府の経済支援とFedによる月1,200億ドルの資産買入を通じ、溢れんばかりの流動性を享受している。こうした流動性は経済や株式市場に流れ、主要な株価指数はそろって最高値圏で推移する状況だ。過剰流動性は途切れる様子はなく、バイデン政権は1.9兆ドルの追加経済策を成立させてすぐ、2.25兆ドルに及ぶインフラ計画”米国雇用計画”、さらに育児・医療支援策”米国家族計画”を提示した。米国内総生産が4~6月期にコロナ前の水準を回復する道筋にあっても、Fedは超緩和策の継続を表明している。

緩和的な財政政策と金融政策の効果は、経済指標で明確となっている。米1~3月期実質GDP成長率は予想以上に加速した。在庫投資を除く最終消費は前期比年率9.2%増、さらに海外への支出額を加えた純国内最終消費は同9.9%増に及んだ。何より、米3月個人所得は前月比21.1%増に達し、1,400ドルの現金給付が奏功したことは明白である。ビアンコ・リサーチのジム・ビアンコ氏は、過去1年間の個人所得の33.8%は2020年の景気刺激策と合わせ、米連邦政府によるものと指摘する。

こうした財政支援は、パンデミック下にある人々の生活の悪化を食い止めるものだ。貧しい人々への食料提供の行列が長くなる一方で3月の貯蓄率は27.6%へ上昇しており、今後の食費や光熱費などその他の支出を念頭に塩漬けされたのだろう。

ただし、余剰の現金は投資信託特に上場投資信託(ETF)へ流入しており、株式ファンドには744億ドルと過去最大の流入額を記録した。同時に、現金はメインストリートにも流れ、住宅価格は前年比で2桁上昇を記録。Fedが毎月、800億ドルの米国債と400億ドルの住宅ローン担保証券を買い入れていることが大きい。パウエルFRB議長は4月27~28日開催のFOMC後の記者会見で住宅市場を支援する意図はないと発言しつつ、こうした買い入れを継続する意思を表明した。

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チャート:S&P/ケースシラー住宅価格指数は全米と主要20都市で2桁上昇 作成:My Big Apple NY

米労働省は5月7日に米4月雇用統計の発表を予定するが、3月の大幅増に続き、エコノミストは100万人増を見込む。そうなれば、コロナ前からの落ち込みが一段と解消されるが、問題は企業が従業員を採用できるか否かだ。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのエコノミスト、ジョセフ・ソン氏によれば、970万人もの失業者に加え、約460万人が非労働力人口に転じているという。そのうち、約145万人が新型コロナウイルスを懸念し職を探していない。さらに、約100万人は寛容な失業保険を受けて職に就かずにおり、別の約70万人は採用側が求めるスキルを持っていない状況だ。さらに、65歳以上の約120万人はコロナ禍を受け人生の優先事項を評価したという。

過去の景気後退期と異なり、株価や住宅価格は高騰し、棚からぼたもち以上の効果を与えた結果、多くの人々は不自由なく引退し始めた。一部の人々にとって、雨が降る時はいつもどしゃぶり(流動性の意味で)のようだ。

--バロンズ誌では、65歳以上を中心に引退を決意したようにみえますが、実はそれだけではありません。過剰流動性の効果を受け、若い世代の米国人も引退し始めています。そのお話は、次回のコラムでお伝えしますね。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年5月1日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。