バロンズ:米インフレ、CPIが示すより上振れも

バロンズ誌、今週のカバーはインフレ加速に伴うリスクを取り上げる。ネブラスカ・ファニチャー・マートの会長を務めるアーブ・ブランキン氏は、コンテナ配送コストが6ヵ月前の3,500ドルから1万ドルに跳ね上がったと述べた。コンテナ不足により、海外のサプライヤーは在庫不足で生産が停止した結果、同社の受注残は数ヵ月前の6倍に及ぶ。また、サプライヤーは過去3ヵ月の間に次々と値上げに踏み切り、それぞれ3~8%上昇した。このように生産者からしてみれば、統計データとしての物価指標や政策当局者が語るインフレは別世界のように見える。生産者と消費者にしてみれば、エネルギーと食品を除くコアインフレを精査する余裕はない。なぜなら、17%も上昇した中古住宅価格は、そこに直接反映されていないためだ。何より、平均世帯にしてみれば、エネルギーと食品、住居に関わるコストは税引き前所得の半分を占める。賃金をみても、アマゾンが最低賃金を1時間当たり15ドルに引き上げたように、連邦政府が失業保険の上乗せを9月まで続けるなか、ピザ配達からトラック運転手、歯科助手など幅広い業種でも賃上げの輪が広がっている。果たしてインフレは米経済と米株市場にどのような影響をもたらすのか、詳細は本誌をご覧下さい。

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当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週はカバーと同じくインフレを取り上げる。抄訳は、以下の通り。

インフレ逸脱を止める方法とは―Here’s What Could Stop Inflation in Its Tracks.

1970年代の再来を予想しないにしても、消費者は明らかにスタグフレーション(インフレ加速と景気後退)を意識し始めたかのようだ米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は、ワクチンの普及と経済活動の再開が進んでいるにも関わらず82.8と、2月以来の水準に落ち込んだ。さらに期待インフレ率に至っては1年先が4.6%と前月の3.4%から急伸、5年先も3.1%と前月の2.7%を上回った。期待インフレ率がここまで上昇したのは2008年8月以来で、その頃ガソリン価格は4ドルを突破していたものだ。

また、消費者の購入見通しもそろって低下し自動車、住宅、耐久財はそろって1980年以来の水準へ落ち込んだ。実際のインフレ率は足元より格段に高かっただけに、ジェフリーズのエコノミストは「一連の結果を大いに警戒すべき」とコメントしていた。

米4月小売売上高をみても前月比横ばいにとどまりエコノミスト予想平均の0.8%増に届かず、消費意欲を後退させたようにみえる。米4月雇用統計で就労者数の増加ペースが大幅鈍化した動きと、整合的だ。

米4月消費者物価指数(CPI)が前年同月比4.2%上昇したように、インフレは加した。とはいえ、アライアンスバーンスティーンで首席エコノミストを務めていたジョセフ・カーソン氏によれば、CPIは帰属家賃が約3分の1を占める。従って帰属家賃が4月に前年同月比で2.0%とCPI全体の半分以下の伸びだったことを踏まえれば、CPIの数値を低く抑えた可能性を残す。なお、CPIが前年比で3%超で推移していた1995年、帰属家賃は前年比で3.4%上昇していた。つまり、足元のコアインフレは当時より広範にわたると捉えられよう。

さらに、帰属家賃は住宅コストを低く見積もっていてもおかしくない。なぜなら、住宅価格はカーソン氏いわく「中古住宅販売価格は過去1年間で18%上昇し、帰属家賃の9倍に及ぶ」ためだ。

CPIは過去、帰属家賃ではなく住宅販売価格を網羅していた。仮に住宅販売価格を盛り込むならば、カーソン氏の試算では今回の結果である前年同月比4.2%の約2倍上回るという。

インフレ加速の負の側面は、Fedの金融政策の方向性が挙げられよう。Fedはゼロ金利政策と月1,200億ドルの資産買入策を続けているが、米債市場はインフレの更なる加速を見込む。米10年物ブレークイーブンインフレ率は2.67%と2005年以来の水準へ上昇した。

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チャート:CPIと米10年物BEI (作成:My Big Apple NY)

米10年債利回りは1.69%と、3月後半以来の高水準をつけている。インフレ懸念を反映し、S&P500は一時4月1日以来の安値をつけた。それでもFedは足元、物価目標2%以下が続いた過去を踏まえ、2%超のインフレ容認する姿勢、並びに雇用の最大化を目指す立場を維持している。

2018年後半に米10年債利回りが3%を超えた局面で、米株相場は弱気相場入りに差し掛かった。ただ、当時より債務が拡大した現状を踏まえれば、小幅な利回り上昇でも米株相場に打撃を与えうる。問題は、どこが米株相場が容認できない水準がどこかということだろう。

―インフレを賃上げという観点でみると、こちらで指摘しましたように対面サービスや、現場での作業が必要な業種での賃上げが目立っていました。ワクチンの普及が進むとはいえ、コロナ禍において潜在労働者が一連の職に戻ってこない様子が浮かび上がります。だからこそ、少なくとも全米で5月14日時点で16州。全米50州のうち32%が失業保険の特例措置を早期終了を決定したと言えます。4月28日の施政演説で大きな政府への方向転換を宣言したバイデン政権、インフラ計画の”米国雇用計画”と育児・医療支援となる”米家族計画”をどのように通過させるのか、その交渉術が試されます。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年5月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。