バロンズ:テーパリング議論を開始したFed、ボラティリティ上昇の火付け役に

バロンズ誌、今週のカバーは自動運転の未来を取り上げる。あなたが今、ネバダ州ラスベガスのマッカラン空港に降り立ち、配車サービスのリフトのアプリで車を手配し目的地まで行こうとして、BMW 5シリーズがやってきたとしよう。運転席には人が座っており、何事もないように見える。しかし、1982年に公開された映画「トロン」のように、運転席のスクリーンには横断歩道のない場所を横切る歩行者や車両、街灯が確認でき、スムーズにカーブを曲がり、ハンドルは勝手に動いている。目的地に到着する頃には、まるで人生が変わったかのような気持ちに包まれるだろう。

JANIFEST/iStock

自動運転をめぐり、投資家は苦渋を味わってきた。配車大手ウーバー・テクノロジーが上場時、大風呂敷を広げた自動運転ビジネスを2020年12月に売却した時には期待値は下がり、今年に入りリフトも自動運転部門を今年トヨタに5.5億ドルで渡した。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)も自動運転を掲げるが、今となっては(筆者注:事故30件以上を確認できる事情もあり)空しく聞こえる。自動運転関連銘柄は、年初来で30%下落し、S&P500が過去最高値を更新した動きと正反対である。しかし、自動運転の未来が近づいたことも事実だ。例えば、ラスベガスでは、リフトがアプティブと現代自動車の合弁会社モーショナルによって生産され完全ドライバーレスの最新ロボタクシーを送り出し、2023年までに主要都市へ展開する見通しだ。アルファベット傘下のウェイモやGMも、それぞれアリゾナ州やサンフランシスコで完全ドライバーレスの試験走行を行っている。それでは、自動運転をめぐりどこに投資すべきなのか。詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週のカバーは6月15~16日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)における結果と、それを受けた金融市場の見通しを取り上げる。抄訳は、以下の通り。

ボラタイルな市場に備えよ:Investors: Prepare for a Volatile Summer.

北半球に夏至が訪れ、多くの人々はワクチン普及と経済活動の再開に伴い旅行へ思いを巡らせているに違いない。同時に、これまで夏は金融市場にとって凪の時期を表してきた。しかし、今年は例年と様相を異にし、夏に荒波が訪れる可能性が高まりつつある。

先週のFOMCが超緩和的な政策スタンスからシフトし始めたためで、金融政策の変更こそしなかったものの、2023年のFOMC参加者のFF金利誘導目標の見通しは前回の2023年末まで据え置きから、2回の利上げを示唆した。ユーロダラー先物は既に2023年に数回の利上げを織り込んでいたとはいえ、市場に衝撃を与えたものだ。

さらに、パウエルFRB議長は月1,200憶ドル(米国債800億ドル、住宅ローン担保証券400億ドル)の資産買入につき、縮小する方向での議論開始を認めた。即ち、2020年3月のコロナ禍で立ち上がった超緩和政策に期限が設定されつつあるということだ。

2013年のテーパー・タントラムを思い出してほしい。当時のバーナンキFRB議長が資産買入の縮小に言及すると、米債市場と米株市場は混乱に飲み込まれた。現在、FRB議長を務めるパウエル氏はかなり事前に市場に通知すると発言してきたが、不確実性により市場のボラティリティが高まってもおかしくない。BTIGのジュリアン・エマニュエル氏は「株式市場が緊張性昏迷状態に近い状態では、ボラティリティが高まるのは自然の成り行き」と語る。

本来ならば超緩和策の巻き戻しを受けて金利は上昇するところだが、期債を中心にFOMCの翌日に利回りは低下し米30年債利回りは2.104%と2月18日以来の水準をつけた。一方でFedの金融政策の変更に敏感な米2年債利回りは0.226%と2020年3月以来の水準へ上昇、イールドカーブはフラット化した。こうした乖離は近年まれで、R.J.オブライエンのウィリアム・ネイフィン氏によれば、1995年以降でマネーマーケットの金利が上昇し米債利回りが低下したのは33回あったが、2011年以降は1回しかない

BTIGのエマニュエル氏は、米債利回りの低下が商品先物の急落による影響との考えを退けている。そもそも、バンク・オブ・アメリカの機関投資家調査が示す通り、商品先物取引は極めて過熱状態にあった。いずれにしてもFOMC後の利回り低下、商品先物の下落、ドル高はディスインフレ方向の圧力を加えよう。

FOMC参加者の発言を数多く予定することも、ボラティリティ上昇の要因だ。第1弾が18日のブラード・セントルイス地区連銀総裁の発言で、同氏は予想より早く利上げを行う可能性に言及すると共に、2022年の利上げを予想したことを表明。市場予想に基づけば、ウエル氏は8月26日開催のジャクソンホール会合で、資産買入縮小の計画について発言する公算が大きい。BTIGのエマニュエル氏は、その前の7月27~28日開催のFOMCで、テーパリングについて何らかの進展につき明らかにすると見込む。

とりわけ、住宅ローン担保証券の買入400億ドルを縮小すべきとの声が高まっている点に注目。セントルイス地区連銀総裁も「住宅市場が過熱するなかで、住宅ローン担保証券の購入が必要ないとの見方に傾きつつある」と言及していた。なお、Fedが米国債の買入規模を抑制しない状況下、保有資産は16日に8兆ドルを突破しパンデミック前の水準の約2倍に達した。

bs

チャート:Fedの保有資産と、S&P500の推移(作成:My Big Apple NY)

RBCで米国株ストラテジーのヘッドを務めるロリ・カルバシナ氏は、4~6月期の米10年債利回りの低下をめぐり経済の鈍化を示すものと指摘する。それは、当コラムでも1週間前に提起していた。また、同氏によれば、米長期債利回りの低下は市場が注目するISM製造業景況指数の頭打ちが影響したとみられ、指数の牽引役だった景気敏感株の下落に連動しているという。その上で、同氏は短期的に下落局面で光るディフェンシブ銘柄、つまり生活必需品や公益、ヘルスケアなどの切り返しを見込む。カルバシナ氏は同時に、これまで米株高を主導してきた金融やエネルギー素材は長期的には依然として投資妙味があると分析する一方、資本財は割高観から魅力に欠けると指摘した。

BTIGのエマニュエル氏も、ヘルスケアなどのディフェンシブ銘柄を選好する。米10年債利回りが再び上昇し2%へ向かうと予想するためで、それが米株の向かい風になると分析しているためだ。また、同氏は金利上昇を見据え、輸送や割高感の高いグロース株にも慎重だ。その他、ボラティリティ上昇を予想する上で、7月30日に権利行使を迎えるS&P500のストラドル、コールとプットのオプションの購入を推奨する。

FOMCが超緩和的な金融政策から軸足をシフトさせるなか、ダウは週足でファイザーのワクチン有効性をめぐる朗報が届いた2020年11月以前、同年10月30日以来の下落率を記録し、S&P500も50日移動平均線を割り込んで引けた。特に下落が激しかったのリフレ・トレード関連で、例えばSPDR S&P金属・鉱業ETF投資信託(XTE)は12%も急落した。一方で、石油関連銘柄は他のコモディティと比較し堅調で、油価も18日に70ドル台を維持して取引を終えた。BCAのコモディティ・エネルギー・ストラテジーのチームは、世界の石油需要の改善と供給抑制要因から、2022年のWTI原油価格につき74ドル、2023年に81ドルを予想。OPECについては非加盟国を含めた生産抑制に加え、米国のシェール関連企業には資本規制を受け生産活動の減速が見込まれるためだ。 エネルギー・セレクト・セクターSPDR (XLE) の益利回りが1年間で4%と、米30年債利回りの2倍以上という側面もあり、エネルギー銘柄が今後注目されよう。

――FOMCの”変心”については、こちらでご紹介した通りですが、2021年の資産買入縮小が2013年5月のバーナンキ氏によるテーパリング示唆の後と同じような道のりを歩むのか、注目されます。当時、結局テーパー・タントラムを受けFRBによる発表は同年12月まで、開始は2014年1月まで待たねばなりませんでした。仮に今後、米株市場のボラティリティが急伸し、米経済指標も鈍化を示すならば、少なくとも当時のスケジュールが視野に入ります。

その一方で、2011年の量的緩和第2弾(QE2)の終了と今回の資産買入縮小においての類似点にも注意したい。当時は2011年6月にQE2を終了した後、債務上限交渉の膠着に伴う市場の混乱を経て、同年9月からオペレーション・ツイストを決定しました。今年も7月末に債務上限停止の期限が迫ります。今年も債務上限絡みの交渉の決着に時間が掛かれば金融政策にも影響しかねず、例えば仮にテーパリングを実施するにしても、住宅ローン担保証券だけに絞るなど緩和的余地を残す手段を選択するシナリオを想定したいところです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年6月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。