バロンズ:米株は年初来で最大の下落を記録後、過去最高値を更新

バロンズ誌、今週のカバーはデルタ株の感染拡大に伴い、観光・旅行業界への影響を取り上げる。クルーズ大手のロイヤル・カリビアン・グループのリチャード・フェイン最高経営責任者(CEO)は、6月後半にパンデミック以降、初の船出を行ってから「なんと素晴らしい朝だ」という歌を口ずさんでいたものだ。7月半ばには、次々に規制が撤廃されるなかで「今はずっと、はっきり見える」と歌っていた。しかし、今はデルタ株の感染拡大が問題視されている。感染力の高い変異株により感染者数はワクチンを接種していない人々の間で急増し、政府が再び規制を強化する恐れが出てきた。旅行・観光・娯楽銘柄は、2020年11月にワクチン接種への道が拓くに合わせ、教科書通りの展開をみせていた。 Dow Jones U.S. Travel & Leisure Total Return Indexは3月初め0.5%下落していたが、直近4ヵ月間で25%高を達成。同部門の業績が今後数週間にリリースを予定するだけに、デルタ株への影響が注目されよう。詳細は、本誌をご覧下さい。

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当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は急落を経て過去最高値を更新した米株市場に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

米株相場、急変動した週は大幅下落を経て最高値を更新―Stocks Go From Wretched to Record in Topsy-Turvy Week.

7月19日週は、ブルが後退しベアが市場を席捲したかのようだったが、それは短命に終わった。その間に、米国ではロングアイランドでバーニーという名の若い牛が脱走する一幕がみられたほか、ソフトボールチームが試合を行った福島あづま球場では熊が目撃され、米国代表チームを驚かせたという。

話を米株市場にもどすと、ダウは7月19日に2%超も急落し年初来で最大の下落を演じた後、史上初の3万5,000ドル台を突破して取引を終えた。S&P500やナスダックも最高値を更新し、それぞれ週足で1.08%高、2.84%高でクローズした。

週初の弱気の台頭を真っ先に察知したのは米債相場で、米10年債利回りはデルタ株の感染拡大に反応し19日に一時1.13%まで低下し、景気循環株は米債利回りと共に急落した。しかし週末にかけ、米10年債利回りは1.28%まで上昇し、前週比とほぼ変わらない水準まで切り返した。米債利回りが切り返すに合わせ、米株相場も決算を手掛かりに買い戻された。

J.P.モルガン・チェースのグローバル・クオンティテーティブ・アンド・デリバティブ・ストラテジー・チームによれば、米株の買い戻しは押し目買い意欲に支えられたものだ。個人投資家は、19日と20日に株式連動型の上場投資信託(ETF)を約70億ドル相当購入したという。年初来で、個人投資家の資金流入額は6,000億ドルにのぼり、仮にこのペースが維持されれば2020年の1兆ドルに及ぶ見通しだ。その一方で、特別買収目的会社(SPAC)の活動がスローダウンするなかで新規株式公開(IPO)が細り、新たな発行株数は前年比3,000億ドル減となり、自社株の拡大により流通株式数は減少しつつある。

7月19日週初めは、投機適格級の社債とハイイールドの社債が売り優勢となった。しかし、社債発行の勢いは止まらず、クルーズ大手カーニバルは2028年償還の社債を4%の利回りで発行、2020年の最悪期に発行した2023年償還予定の利回り11.5%の社債を買い戻すためだ。同社によれば、高利回り債のリファイナンスにより、1億3,500万ドルの金利負担を減らせるという。

ワクチンの普及が旅行関連株の買いにつながるほか、米連邦公開市場委員会(FOMC)の超緩和策も金利を低く抑える上で市場を支えている。ただ、デルタ株の感染拡大により、Fedの超緩和策の効果が試されよう。このような状況下、ブルとベアの目まぐるしい入れ替わりは今後も発生しそうだ。

――足元の米国における新規感染者数は、ご覧の通り。今年6月には一時2万人割れまで減少したものの、直近7月23日時点では約6.4万人に増加。

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(作成:My Big Apple NY)

ワクチン接種率と、投与回数はこちら。ワクチン投与回数は1日約30万回と、直近では20年12月末以来の低水準。

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(作成:My Big Apple NY)

バイデン大統領は7月16日、ワクチンに関する誤情報がソーシャルネットワーク上で拡散する問題を取り上げ「人々を殺している」と発言。後にで撤回し、サキ大統領報道官も、政権はSNSではなくウイルスと戦っているとの見解を表明しました。確かに、バイデン政権はワクチン未接種者を戸別に訪問するとの演説するように、大胆な取り組みでワクチン接種を進めようとしていることに間違いありません。米国での1回以上のワクチン接種率は7月24日時点で18歳以上の成人で68.8%、全米の人口で56.6%。5月にはワクチン接種年齢を12歳まで引き下げ、さらに足元でデルタ株の感染拡大が確認される状況で、感染者が増加中の州(アーカンソー、フロリダ、ルイジアナ、ミズーリ、ネバダ)で接種率がわずかながら上昇したといいます。ただ、AP-NORCセンター・フォー・リサーチが7月15~19日に実施した世論調査では、ワクチン未接種者のうち今後も「恐らく接種しない」が35%、「絶対接種しない」が45%、合わせて80%となりました。成人の接種率70%超えを目指すバイデン政権にとって、こうした人々が目標達成の障害となりそうです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年7月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。