バロンズ:パウエルFRB議長、ジャクソンホール会合で何を語るか

バロンズ誌、今週のカバーはIT大手企業を取り上げる。7月後半の3日間は、IT大手企業は決算という素晴らしいショーを展開した。アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、フェイスブックはパンデミックでも繁栄を続け、4~6月期の売上高は5社合わせて前年同期比36%増の3,320億ドルに及んだ。ただし、株価は下落で反応。一因は、一連の企業への規制強化が挙げられ、エバーコアISIのマーク・マハニー氏によれば、規制強化はIT関連株を10%押し下げてきた。今後、一連の企業は規制強化の荒波を無事潜り抜けるのか、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週はFedによる資産買入縮小に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

資産買入を調整しつつあるFed、注目すべきポイントとは?―The Fed Is Trying to Sort Out Its Bond Buying. Here’s What It’s Looking At.

武装勢力タリバンによるアフガニスタン制圧は米株市場にほとんどを影響を与えず、むしろ市場は金融政策を注視しているようだ。7月27~28日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、資産買入をめぐる議論が明らかとなり、参加者は雇用の最大化と物価安定という二大目標につき、物価については「さらなる一段の進展」を遂げたたとの見解で一致した。雇用の最大化では確認できなかったが、FOMC参加者は経済が予想通りに拡大すれば、年内にも買入縮小(テーパリング)を行うとの考えを寄せた。

主要株価指数は、Fedのバランスシートが2020年3月の4.2兆ドルから8.3兆ドルへ膨張に合わせ、上昇をたどってきただけに、テーパリングは投資家にとって重大事だ。オンライン開催に切り替えられ8月27日に開催されるジャクソンホール会合では、パウエルFRB議長による午前10時(米東部時間)から開始する講演に注目が集まることは想像に難くない。

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チャート:FedのバランスシートとS&P500 (作成:My Big Apple NY)

7月FOMCから、あらゆることが起こった。米7月雇用統計は就労者の大幅増と失業率の低下を確認した。その一方で、米消費者信頼感指数は低下、米7月小売売上高や米7月住宅着工件数もそれぞれ弱い数字にとどまった。

何より、デルタ株感染拡大はリアルタイムで経済に影を落としている。バンク・オブ・アメリカのエコノミストは、クレジットカードやデビットカードの利用額で判明した支出鈍化などを表すデータを受け「夏の寒気(summer chill)」と呼んでいた。

ウイルスとワクチンの影響は、TLRによれば州経済でその違いが見て取れる。ワクチン接種を完了した人口の割合が全米の51%を上回る州では7月に雇用が平均で0.8%増加し、3~6月の間は平均で0.3%増だった。逆に全米以下の州では7月に0.5%増、3~6月は0.2%増にとどまっていた。

デルタ株の感染拡大を背景に商品市況は下落、特に原油先物は7月上旬から15%以上も下落し5月以来の安値をつけ、ディスインフレ圧力を加え米債利回りの低下につながっている。米10年債利回りは3月末に1.75%をつけた後、足元は1.25%で推移する状況だ。

一方で、主要株価指数は前週、1~1.25%下落した。その結果、ダウとS&P500、ナスダックはそれぞれ8月上旬につけた最高値から1.24~1.74%下回る。しかし、IT大手企業は株価を押し上げに寄与しており、ナスダックに連動するインベスコQQQ上場投資信託(QQQ)の過去3ヵ月間のリターンは12.8%高だが、SPDR S&P500 ETF投資信託(SPY)は7.1%高にとどまる。

パウエル議長 FRB HPより

Fedは相反する問題を抱えており、テーパリングを決定する上で細心の注意が必要だ。パウエル議長は、商品先物価格の下落というディスインフレ圧力が進行しつつあるなかで、高止まりするインフレに対応せねばならない。雇用統計の著しい改善は、デルタ株の感染拡大という難題に直面している。ただ、米新規失業保険申請件数がコロナ禍で最低を更新し続け、学校も再開が相次いでおり、ワクチン接種率も再び進むなかで、経済の一段の加速も期待できる。これらを全て踏まえれば、パウエル議長の講演は転換点となるのか、あるいは早期のテーパリングを断念するのか、それが問題となるだろう。

――さて、主要株価指数ですが前週17~18日の急落に反し、見事な切り返しを遂げました。パウエル議長の講演テーマが、2%超のインフレを容認する平均インフレ率導入を発表したような「政策枠組み見直し」ではなく、「経済見通し」とされ、ひとまず早期のテーパリング開始を発表するとの観測が後退したようです。金融政策に関わる重要な発表を行う場合、2020年のパウエル氏自身の講演に加え、2010年8月27日にバーナンキFRB議長が量的緩和第2弾を示唆した当時のタイトルも「経済見通しと金融政策」であり、「政策」との文言が入っていました。FRB高官は文言など過去分を踏襲する傾向があるため、金融政策に関わる重要な決定を下す方針にはないとの判断につながったのでしょう。

もちろん、あらゆるシナリオを想定して臨むべきであり、パウエル氏が重要な政策方針を明らかにする可能性を残します。ただ、バンク・オブ・アメリカによれば、米株安を迎えた17~18日を挟む18日までの1週間の株式ファンドへの資金流入額が239億ドルと、過去9週間で最大となりました。弊職が出演した「ひろこのスペシャリストに聞く!」でもご説明したように、潤沢な資金を有する米個人投資家などが下値を拾ったとみられ、さながらジャクソンホール会合でのテーパリング発表を意識していないかのようです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年8月22日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。