バロンズ:同時多発テロ事件以降、膨れ上がる米連邦政府債務

バロンズ誌、今週のカバーは住宅市場に焦点を当てる。ミレニアル世代が世帯を持ち住宅市場に参入するなか、ベビーブーマー世代は減少傾向にあり住宅市場はコロナ以前の水準より過熱してきた。低金利に加え、コロナ禍で住宅需要が高まる上に在宅勤務の浸透で住まいを選ぶ自由度が高まったためだ。販売向け住宅の在庫ひっ迫も影響し、不足数は2018年の250万件から、2020年には380万件へ増加した。全米リアルター協会によれば、中古住宅の販売価格・中央値は前年同月比18%上昇の35.9万ドルとなり、そのうち89%が前月比で販売件数が減少していた。在庫薄とあって人気エリアの価格は急騰、フロリダ州の湾岸地域からマサチューセッツ州のバークシャー郡に至るまで、4~6月期に前年同期比35%も上昇する有様だ。リアルター・ドットコムが今春に実施した調査によれば、米国人は在宅勤務を好み、半数近くはパンデミック収束後も企業が在宅勤務を承認すると見込む。また、16%が今より長い通勤時間を受け入れると回答ミレニアル世代に至っては22%が必要であれば厭わないと回答していた。ミレニアル世代の台頭と、在宅勤務の普及に伴う米住宅市場はどのように変化するのか、詳細は本誌をご覧下さい。

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名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は同時多発テロ事件発生20周年を財政の切り口から取り上げる。抄訳は、以下の通り。

同時多発テロ事件から20年、とめどなく膨らむ政府債務―Two Decades After 9/11, the Fiscal Wounds Run Deep Too.

2001年9月11日にテロリストによる攻撃が発生してから20年が経過しただけでなく、筆者ランダル・フォーサイスの個人的な話をするならば、このコラムの執筆が開始してから20年を迎える。

筆者の同僚、ローレン・ルービンが前週取り上げたように、バロンズ誌とダウ・ジョーンズのスタッフは、世界貿易センターの向かい側にあったオフィスが相当な被害を受けたため、ダウンタウンから退去せねばならなかった。当時、筆者はロングアイランドの自宅でコラムを執筆する際、WTOがあった場所から広がる粉塵を眺めつつ、小学1年生だったわが娘の友人の父親を始めカンターフィッツジェラルドに勤めていた人々に思いを馳せたものだ。

当時のコラムでは、テロとの戦いによるセキュリティ強化の代償について論じていた。当時誰も予想していなかったのは、イラクとアフガニスタンに投じたコストが2兆ドルに積み上がっただけでなく、戦地に向かった数えきれない兵士が身体的、精神的な傷を負ったということだ。

ブッシュ大統領(当時)の首席経済顧問が、2002年にイラク戦争のコストを1,000億~2,000億ドルと試算したのは、失笑に値する。世紀の変わり目にあった財政黒字は泡と消え、今は兆単位の赤字がパンデミック以前から重く圧し掛る状況だ。

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チャート:米連邦政府の財政赤字、01年以降は金融危機、税制改革、パンデミックにより拡大傾向(作成:My Big Apple NY)

同時多発テロ事件以降、Fedは「世紀に一度」と呼ばれる危機に対応し、システムに巨額の資金を提供してきた。筆者が同時多発テロ事件5周年に執筆したコラムで取り上げたように、当時のFedは世界恐慌以来の水準まで金利を引き下げ、住宅バブルを招き、結果的に2008年9月のリーマン・ショックを引き起こした。

2010年に、当時のバーナンキFRB議長は量的緩和を正当化すべく、住宅価格に値ごろ感を与え、企業の投資を支え、株価を押し上げ、個人の富を拡大させると論じていた。あれから10年以上が経過し、新型コロナウイルスのパンデミックが世界を飲み込むと、Fedは当時のようにゼロ金利と量的緩和を再開させた。バーナンキ氏の考え方は、現在、月1,200億ドルの資産買入を行うFedと同様で、雇用や家計の所得を増やすより資産価格を押し上げている。

過去20年間の政策は、政府債務を急増させた。同時多発テロ事件が発生した頃。2001年7~9月の政府債務は米GDPの半分を少し上回る程度だったところ、足元は25%上回る規模に膨れ上がっている

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チャート:GDP比の米連邦政府債務(作成:My Big Apple NY)

同時に米国債が主体となるFedの保有資産は11倍の8.3兆ドルに至る。結果、金融システムは過剰流動性に直面し、Fedの翌日物リバースレポの規模は1.1兆ドルを突破した。20年前に、誰が想像しただろうか。

――約1.2兆ドルのインフラ計画が成立すれば、米議会予算局(CBO)の試算に基づくと、米財政赤字が今後10年間で約2,560億ドル拡大する見通しです。さらに3.5兆ドルの育児・医療支援策が満額で可決すれば、当然ながら一段と赤字が膨らみます。世論調査をみると、USAトゥデー・サッフォーク大学が8月15~20日に実施した結果では、約1.2兆ドルのインフラ計画を支持するとの回答は63%3.5兆ドルの育児・医療支援策の支持は52%と、米国人は概ね賛成する状況です。後者については、民主党支持者は約90%、無党派層は50%近く、共和党支持者の約20%とあって、民主党にすれば財政調整措置を使って成立させる上で国民の理解を得たとも同然なのでしょう。問題は、民主党上院の中道派、マンチン議員やシネマ議員で、一波乱あってもおかしくありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年9月12日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。