バロンズ:強気派、恒大集団より過剰流動性に期待か

今週は諸事情により、配信が遅れて失礼致しました。

9月最終週のバロンズ誌、カバーに医薬品関連株を取り上げる。市場は足元の医療業界について「ヘルスケア産業革命」、「生物学の世紀」、「医薬品版ムーアの法則」などと呼ぶが、すべて正しいのかもしれない。生物学や新たな技術の発展に加え、パンデミックも重なり、診断を始め手当て、消耗性疾患などへ治療などが劇的に変化しつつある。患者やヘルスケア関係者、そして投資家にとって、医薬品株やバイオテクノロジー株の夜明けを迎えたといっても過言ではない。そこで、バロンズ誌は秋恒例のヘルスケア・ラウンドテーブルを開催。運用資産200億ドルの5ツ星格のファンド「T. Rowe Price Health Science fund (PRHSX)」を運用するジアド・バルキ氏の他、エバーコアISIのマネージング・ディレクター兼バイオテクノロジー担当アナリストのリサ・ベイコ氏、モデルナの取締役で同社その他のバイオテクノロジー関連企業の創業に関わったスティーブン・ベレンソン氏、JPモルガン・チェースのマネージング・ディレクター兼ヘルスケア・アナリストのクリス・ショット氏の4人がそれぞれの展望と推奨株を紹介する。詳細は、本誌をご覧下さい。

Pineapple Studio/iStock

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は中国恒大集団のデフォルト懸念を跳ね除け上昇きちょへ戻す米国株に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

市場は中国の問題をものともせず、イージーマネーに期待―Markets Shrug Off China and Focus on Easy Money Instead.

9月20日週は、ジェットコースターのように乗った場所で降りたような気にさせた。9月20日に2%近くも急落したかと思えば、主要株価3指数はそろって前週の水準へ戻して引け。まさに、中国恒大集団の債務不履行(デフォルト)懸念が世界の株式市場を覆い、米連邦公開市場市場委員会(FOMC)がテーパリングを開始すると示唆し、米金利が急伸する過程で、BTFD=Buy The F&%king Dip(押し目買い、注:原文のまま)の展開を迎えたわけだ。米政府機関の閉鎖や、米政府のデフォルト・リスクなど、お構いなしのようだ。

9月20日の急落は言わずもがな、負債総額3,000億ドル(約33兆円)を抱える恒大集団のデフォルト懸念によるもので、一部では中国版リーマン・ショックとの指摘が聞かれ、売りが売りを呼んだ。ニコラス・パニギルゾグロウ氏率いるJPモルガンのクオンティテーティブ・デリバティブ・ストラテジー・チームによれば、9月17日と19日の2日間で株式ETFから340億ドルの資金流入を確認したといい、その規模は3月19日の260億ドルと3月22日の100億ドルの合計額360億ドル以来となる。

しかし、その後の株式市場の変動をみると、9月22日と23日に急激なリバーサルが入ったとみられる。S&P500は2日間で2.2%高と7月21日以来の上昇率を遂げた。この2日間のお陰で、9月20日週は0.51%高で引け。何より、S&P500は50日移動平均線を回復して取引を終えた。

spx

チャート:S&P500の他、ナスダックやダウも50日移動平均線を回復して9月20日週を修了した後、9月28日に再び急落(出所:Stockcharts)

米株市場より注目すべきは米債市場だ。米10年債利回りはこれまで1.3%付近で推移してきたが、9月24日には1.46%と7月1日以来の水準へ急伸した。

興味深いことに、米10年債利回りの上振れは9月21~22日開催のFOMC直後に発生しなかった。当時、声明文と同時に公表された経済・金利見通しでは、18名の参加者のうち9人が2022年の利上げを予想前回6月時点の2023年から前倒しされていたにも関わらず、である。

米10年債利回りの急伸は、イングランド銀行が資産購入枠の縮小と利上げの可能性を示唆し(筆者注:ノルウェー中銀が先進国で初めて利上げを行った)9月23日に確認でき、欧州中央銀行(ECB)を除き、主要中銀は超緩和政策からの巻き戻しを図りつつある。

こうしたイージーマネーは米家計のバランスシートを急拡大させ、4~6月末の家計純資産は前期比5.9兆ドル増の141.7兆ドルへ膨らみ、もちろん過去最大を更新した。最も増加に寄与したのは株式で3.5兆ドル増不動産も1.2兆ドル増だった。

家計純資産の増加は、Fedの月1,200億ドル、年間1.44兆ドルの資産買入がによってもたらされた。しかし、今後は恐らく月150億ドルのペースで漸減する見通しだ。

しかし、Fedが金融システムに過剰流動性を与えた一方で、マネーマーケットがマイナスに陥らないよう吸収されている点は考慮すべきだろう。

Fedが毎月、米国債を800億ドル、住宅ローン担保証券を400億ドルを購入するなか、バランスシートは8.4兆ドル超えと、パンデミックが直撃する前の2020年2月末時点の4.1兆ドルから4倍近くへ拡大しだ。しかし9月22日時点で、Fedが金融機関から資金を借り入れる”リバース・レポ”の利用額は1.4兆ドル近くに及び、こうした資金はFedがテーパリングを開始すれば市場への流入する見通しだ。

rrr

チャート:リバースオペの利用額、直近で一時1.4兆ドル近くに(作成:My Big Apple NY)

いわば、金融システムには流動性が潤沢にあるということだ。米10年債利回りが急伸したとはいえ1.5%で推移し、米10年物インフレ連動債利回りがマイナス1%付近で推移しているのは、民間の金融機関が巨額の運用資産を抱えているという証左だ。どんな悪材料が飛び出しても強気派が強気である理由は、こうした過剰流動性を見込んでのことだろう。

――バロンズ誌の名物コラムが指摘するように、9月19日週は確かに米個人投資家が押し目買い出動していました。バンダ・リサーチによれば、個人投資家は9月20日、株式ファンドを約19億ドル買い越し、SPYと「インベスコQQQトラスト・シリーズ1(QQQ)」を3億3,700万ドル買い越したといいます。7月に2営業日続落し相場が悲観に傾きかけた局面と同じく、逆張りの勝負に挑んだわけです。

しかし、9月28日に米株は再び急落し、S&P500は窓を開けて急落しただけでなく50日移動平均線も割り込んできました。バロンズ誌は楽観的でしたが、やはり①恒大集団リスク、②米政府機関の閉鎖と債務上限問題、③テーパリング+利上げ前倒し――を意識し、米株市場を始め金融市場はまだまだボラタイルな展開が続きそうです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年9月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。