バイデン大統領は、「憂鬱なクリスマス」を回避できるか

バイデン氏 ホワイトハウスTwitterより

米国でグリンチと言えば、「ドクター・スース」で知られる児童文学作家が描いたキャラクターで、クリスマスを台無しにしようとしました。

共和党にしてみれば、バイデン大統領はまさにグリンチそのもの。共和党陣営は、今年の年末商戦を民主党カラーのブルーと掛けて「バイデンの憂鬱なクリスマス(Biden’s Blue Christmas)」と呼び、中間選挙での勝利を呼び込もうとしています。バイデン氏の米大統領選でのスローガン「Build Back Better(より良い再建)」も、意識したに違いありません。

その理由は、供給網の制約による品不足懸念です。経済活動の再開に伴う需要急増②デルタ株感染拡大を受けたアジア諸国の生産など経済活動の停止③米国内での人手不足(生産者や港湾労働者、トラック運転など)による生産活動や物流の障害―を背景として品不足だけでなく物価高をもたらし、スタグフレーション懸念も強まる有様ですよね。ホワイトハウス高官も、10月12日に品不足のリスクを警告していました。

小売業者にとって、年間の約2割を占める年末商戦での売上確保は死活問題です。だからこそ、供給網の問題を背景に年末商戦を控え夏に輸入を拡大させていました。BBCロイターなどによれば、8月に扱ったコンテナの数はロサンゼルス港では通常より30%増、ロングビーチ港では23%増へ膨らみ、9月には過去最多の73隻もの大量の船が入港待ちを余儀なくされたのだとか。パンデミック以前の「一度に2隻以上の船が待機するのは稀」だったという状況から、一変したわけです。

もちろん、バイデン政権側も事態の深刻化を重々理解しており、年末商戦での品不足に警鐘を鳴らした翌日の10月13日には、供給網の制約解消に向けた異例の対策を発表しました。主な内容は以下の通り。

・太平洋の玄関口で、輸入品の4割を請け負うロサンゼルス港とロングビーチ港での運営を24時間とし、滞留する50万個のコンテナ処理を進める方針を表明
・小売大手ウォルマートと百貨店大手ターゲット、米配送大手UPSとフェデックス、半導体大手韓国のサムスン、米住宅リフォーム小売ホームデポの各社などと、港での夜間作業を強化することで合意。これにより、1週間あたりさらに3,500個多くのコンテナを扱えるようになる見通し。

また、レモンド商務官は10月20日付けのワシントン・ポスト紙とのインタビューで、供給網の途絶解消に向けバイデン大統領の指示の下で「あらゆる選択肢を検討している」とした上で、物流の円滑化を狙い「商用車の免許を有している」州兵を活用する方向を模索していると明かしました。

なお、バイデン政権は6月に供給網途絶タスクフォース(大統領令14017”米国のサプライチェーン”に基づいた行政措置:半導体、EV向け蓄電池、レアアースなど重要鉱物、医薬品の4分野の供給網の評価を行うもの)を始動。8月には供給網問題の割り出しに”港湾特使(ポート・エンボイ)”としてオバマ政権で運輸副長官だったジョン・ポルカリ氏を指名し、輸送や配送関連の民間企業と協力し、問題解決に努めています。

米金融経済誌バロンズが米小売業などは年末商戦の品不足に備え対策済みと報じたように、小売大手などは年末商戦前のセールを展開中です。服飾革製品ブランド大手コーチは10月初めから、オンライン小売大手アマゾンは10月半ば、電気製品小売ベストバイは10月19日から開催しています。8月頃から年末商戦に向けた在庫積み増しに走ったからこそ、実現した前倒しセールと言えます。

玩具大手ハズブロ、マテル、MGAエンターテイメントなども年末商戦の買い物を例年より早期に行うよう推奨したように、事前に対応した結果、アマゾンなどでのセールが展開できたと言えます。

小売業者やメーカーの努力が奏功し、年末商戦の前倒し在庫積み増しはそろそろ一巡しつつあるようで、配送コストはピークアウトの兆しを見せています。フレイトス・バルチック国際コンテナ指数(FBX)によれば、10月8日週の中国→米西部の場合、40平方フィート(12192mm×2438mm×2896mm、約3.3トン)のコンテナ1個当たりの運賃は10月に前月比22.3%も急落し1万6,004ドルとなりました。

チャート:FBX(中国→西海岸)は10月8日週に前月比22.3%安の1万6,004ドルに

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(作成:My Big Apple NY)

ただ、足元で急落してもコンテナ運賃は高止まりする公算が大きい。中国の電力不足により生産活動が押し下げられれば受注残を積み増すだけに、このまま一気にパンデミック前の3,800ドル付近へ値下がりしそうにありません。中国政府の要請により同国の主要石炭生産者は増産と価格抑制を表明しましたが、原油高や人手不足を背景に配送コストが企業や消費者に多大なコスト負担を強いることとなりそうです。

米国に視点を戻すと、バイデン政権や小売業、メーカーの努力や連携もあって、供給網の懸念を先取りして買い物を済ませた米国人には例年通りのクリスマスが訪れそうです。その数が多ければ多いほど、バイデン大統領が憂鬱なクリスマスを迎えるリスクも低下するでしょうが、果たしてハッピーホリデイを迎えられるのでしょうか?


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年10月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。