バロンズ:雇用拡大でも、Fedは利上げに急がす株高に好材料

バロンズ誌、今週のカバーはミーム銘柄、仮想通貨、NFT(非代替性トークン)におけるバブルを取り上げる。ゲームストップやAMCエンターテイメント・ホールディングスなど、ネット・ユーザーが買い上げてきたミーム銘柄は、年初来で10倍以上の値上がりを遂げた。iPhoneより歴史の浅い仮想通貨も、時価総額は3兆ドルとゴールドの4分の1に迫る。ドッジコインと呼ばれる犬をモチーフとした仮想通貨の時価総額は35億ドルと、創業127年で世界85ヵ国で展開するチョコレートメーカーの老舗ハーシーズの36億ドルに並ぶほどだ。NFTのオークションでは今年、とあるクリプトパンク(24✕24ピクセルで構成されたデジタルアート、売買にはイーサリアムが必要)が1,180万ドルで落札され、有名デジタルアーティスト、ビープルの一作品には6,800万ドルの値が付いた。こうした資産クラスの急騰は、17世紀に住宅1軒分の価格へ駆け上がったチューリップ・バブルを凌ぐ勢いだ。これらのバブルは、今後どのような展開を迎えるのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

JANIFEST/iStock

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は米10月雇用統計と米株見通しを掲げる。抄訳は、以下の通り。

米10月雇用統計の好結果、株高が続く可能性を示唆―Good Jobs Report Points to Continued Good Times for Stocks

主要3指数は11月第1週、新型コロナウイルス関連や労働市場からのグッドニュースを追い風に再び過去最高値を更新して取引を終えた。11月2~3日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)が予想範囲内で、強気派の水を差さなかったことも、材料視されたのだろう。

米10月雇用統計は、文字通り力強い経済を表す内容だった。労働参加率のみ改善せず失望させる結果となり、賃上げペースが加速しさらにインフレを押し上げよう。

Fedは、予想通りテーパリングを決定した。コロナ禍で大規模な資産買入を決定してから約1年半を経ての発表となったが、その間に株価は最安値から2倍に膨らみ住宅価格は過去最高の上昇率を記録するようになった。Fedが買入規模を月150億ドル減額する方針を決定した半面、パウエルFRB議長はFOMC後の会見で利上げを協議していないとの示唆した。また、雇用の最大化の定義をめぐり明確化を避けた一方で、統治目標である「雇用の最大化」の達成まで道半ばと言及した。

チャート:テーパリングの進行見通し

bss

(作成:My Big Apple NY)

米10月雇用統計の結果は、非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想を上回る増加を遂げ、過去2ヵ月分も大幅に上方修正された。業種別で雇用減が見られたのは政府で、これは公立学校の教職が6.5万人減となったためだ。季節調整の影響もあるが、パンデミックを受け疲弊しきった教師が離職したとの説もある。

失業率は、就業者の増加幅が35.9万人と、労働市場への参入者10.4万人を上回ったため改善した。失業保険給付上乗せ措置の終了により潜在的な労働者が市場に戻ってくると期待されたが、限定的にとどまっている。離職者数の増加も、労働参加率の伸び悩みを招く状況だ。バンク・オブ・アメリカのエコノミストは、賃上げ圧力の高まりを意識し、Fedがテーパリングを決定したように緩和策から脱却しつつあると説く。しかし現状、Fedを始めイングランド銀行など主要中銀は引き締め策を望んでいるようには見えない。イングランド銀行は11月4日の英金融政策委員会で利上げを見送ったが、これにより米10年債利回りは米10月雇用統計の好結果を受けながら1.5%を割り込んだ。

バージニア州知事選を始め、11月2日の選挙では共和党候補が予想外の勝利を収めるなどレッドウェーブが民主党を飲み込んだが、ウォール街はそれほど反応しなかった。しかし、民主党の目を覚まさせたようで、下院は上院が可決したインフラ計画法案と1.75兆ドルの歳出案へ向け前進した(注:インフラ計画法案は6日未明に可決も、1.75兆ドルの歳出法案は採決見送り、後述)。AGFインベストメンツのグレッグ・バリエール氏は、今回の結果を受け「市場にはウィン―ウィン」と評価する。インフラ計画法案は広範囲にわたって企業に恩恵を与える一方で、1.75兆ドルの歳出法案は冬にかけ停滞しかねず、そうなれば財政赤字拡大は抑制される。

その上、製薬大手ファイザーが同社開発の新型コロナウイル向け飲み薬につき入院・死亡リスクを89%減少させたと発表、メルクを上回る効果を発揮した。一段の財政悪化見通しが後退し、金融政策も利上げに慎重で米株高を下支えする環境において、誰にとってもグッドニュースになったことだろう。

――1.75兆ドルの歳出法案をめぐっては6日、下院民主党員の一致団結により221対213で、審議入りの動議を可決しました。しかし、党内の調整が必要とあって、インフラ計画法案との採決には至らず。新たな動きとして、下院歳入委員会のリチャード・ニール委員長(マサチューセッツ州)が言及するように、一旦断念した有給休暇措置を復活させる方向で動いています。その他、下院ではニューヨーク州など北東部の州やカリフォルニア州など富裕層の多い州の要請を受け、州・地方税(SALT)の税額控除額の上限を1万ドルとする税制改正法の措置の一時撤廃に向け、妥結が図られつつあるようです。

一方で、マンチン議員など上院中道派は米議会予算局(CBO)による分析を確認してから支持する姿勢を示します。CBOの試算は約2週間掛かるだけに、上院での採決は11月20日頃まで持ち越されること必至。何より、上院中道派が下院案を支持するかも不透明で、1.75兆ドル歳出法案をめぐるドラマは、早々に終わりそうもありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年11月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。