バロンズ:新変異株を受け世界同時株安、過剰反応と想定される理由

バロンズ誌、今週のカバーはテクノロジー大手IBMを取り上げる。10年前、IBMが開発したコンピュータ・システムの”ワトソン”がクイズ番組”ジョパディ!”に登場し、歴戦のクイズ王ケン・ジェニングズ氏とブラッド・ラター氏と対戦、見事勝利し世間の話題をさらった。その後、ワトソンは世界を揺るがす画期的なツールになるかと思いきや、逆にIBMの失われた10年の証となってしまった。2013年をピークにIBMの株価は21%下落、S&P500の255%高と明暗を分けた。投資家はIBMを見捨てたも同然だが、同社に変化が起こりつつある。2020年1月にアービンド・クリシュナ氏が最高経営責任者(CEO)に就任したが、彼の抜擢は、2014年のマイクロソフトにおけるサティア・ナデラ氏のCEO就任を彷彿とさせる。ナデラCEO誕生の際にマイクロソフト株を取得し損ねた投資家は、IBMに注目すべきだ。IBMは同社の才能豊かな人材から選出され、再編を行い、クラウドとAIに特化し、2022年は10年間で初めて成長を遂げようとしている。バンク・オブ・アメリカのハードウェア担当アナリストも「クリシュナ氏は、ナデラ氏同様、変化をもたらすリーダーとなりうる」と太鼓判を押す。IBMの今後の展望と株価見通しなど、詳細は本誌をご覧下さい。

JANIFEST/iStock

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は南アフリカで発見された変異株オミクロンを受け急落した米株相場を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

ブラックフライデーは投資家に打撃を与えたが、パニックに陥るべきではない―Yes, Black Friday Was Painful for Investors, but You Shouldn’t Panic.

ブラックフライデーと言えば、小売業者が大幅な値引きを行う買い物に打ってつけの日とされる。株式市場に始まり商品先物市場、米金利など、26日は南アフリカで確認された新型コロナウイルス変異株、オミクロンを受けて急落した。しかし問題は、変異株の潜在的な影響よりも、その時の市場の状態だろう。

感謝祭明けの金曜日となるブラックフライデーは、通常通り非常に薄商いだった。従って、一部の市場参加者の思惑で価格が大きく変動する上、足元はアルゴリズムで取引されるだけに、一方向に傾きやすい。実際のところ26日の急落劇は、誰も変異株の実態について理解していないにも関わらず、ヘッドラインに反応した結果と言える。

世界保健機関(WHO)が”オミクロン”と名付けた変異株は、感染しやすいのか否か不明だ。現時点で、政策当局者は米国や欧州連合(EU)を始め、南アフリカからの渡航制限を課している。しかし、経済活動を制限するに必要な措置が講じられるべきか、現状では判断しづらい。何より、オミクロンへの効果は不透明とはいえ、世界中の国民の多くがファイザーやモデルナのワクチンを接種済みだ。

オミクロンが金融政策にどう影響するかも、不確実性を伴う。オミクロンのニュースが飛び交う26日のアジア時間で、金融市場は米連邦準備制度理事会(FRB)によるテーパリングの加速を見込み、当初予想より早いテーパリングの終了は早期の利上げにつながると予想された。

11月2~3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、毎月150億ドルずつ資産買入規模を縮小する方針を決定した。しかし、インフレはそれから一段と加速しており、市場参加者は早々のテーパリングの終了が必要と判断し始めている。

何よりバイデン大統領によるパウエルFRB議長再指名とブレイナードFRB理事の副議長指名が、政策不確実性を低下させた。両者は、あらゆる層での雇用の最大化を重視している。

Fedが重視するインフレ指標、個人消費支出(PCE)価格指数は10月に前年同月比5.0%、コアPCEで同4.1%へ加速した。

チャート:PCEは上振れ傾向、1990年11月以来の高い伸びに

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(作成:My Big Apple NY)

雇用の最大化については疑問が残り、潜在的な労働者が市場に戻ってきていない事情がある。失業率は4.6%と2020年2月に達成した3.5%を上回るが、25~54歳の働き盛り世代では7月以降、伸び悩みが続き、失業保険上乗せ終了で改善するとの見立てに反するものだ。

ドイツ銀行のエコノミスト、ジャスティン・ウェイドナー氏は、介護の必要性や託児所不足などが働き盛り世代の労働参加率の伸び悩む理由の半分を担うと指摘する。残りの半分は不明だが、ウェイドナー氏はコロナへの警戒を一因に挙げる。仮にこの状態が続くなら、同氏は完全雇用のレベルはパンデミック以前の水準を上回りかねないとも分析する。

もし完全雇用の水準がコロナ前を上回るならば、Fedの統治目標である雇用の最大化と2%を暫く上回るインフレ率の達成に近い状態となる。ブラックロックでアメリカス・ファンダメンタル・フィクスト・インカムのヘッドを務めるボブ・ミラー氏は「2020年3月以降に決定した緊急事態対応は、現状の実体経済と一致しない」と指摘する。

オミクロン前、FF先物市場は2022年に2回の利上げを予想し、2022年6月の利上げ開始が確実と織り込んでいた。26日はというと、五分五分より若干上回る程度となっている。

米11月雇用統計は通常、12月14~15日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)にとって重要だ。エコノミストは、失業率が再び低下し4.5%と予想、非農業部門就労者数(NFP)も前月比52.5万人増を見込む。オミクロンさえなければ、こうした結果が実現すれば早期のテーパリング終了を正当化していただろう。

――ダウは変異株オミクロンを受けた渡航制限や景気減速への懸念から、50日移動平均線を超えて急落しました。ここからは再び個人の押し目買いに期待したいところですが、オミクロンを受けて買い物客が減少するならば、年末商戦期待の剥落で一段と下落するリスクも。そうなれば、次の節目は200日移動平均線が走る34,000ドルと考えられます。

チャート:ダウ、次の節目は200日移動平均線がある34,000ドル

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(出所:Stockcharts)

また、9月後半から10月初めにかけての下落局面でも、34,000ドルが一旦のサポートとなりました。もちろん、バロンズ誌が指摘するようにオミクロンの感染力次第ですけどね・・。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年11月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。