バロンズ:インフレ加速でも、S&P500は過去最高値を更新

世界の長者番付で、興味深い事態が発生した。アマゾンの創業者、ジェフ・ベゾス氏が一位から陥落し、高級品ブランド大手LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンのベルナール・アルノー氏がトップを奪取した。LVMHと言えば、75のブランドを抱え、世界中に約5,000店舗を構える老舗だ。その最高経営責任者(CEO)であるアルノ―氏の資産は、フォーブス誌によれば1,950億ドル。アルノー家の持ち株会社アルノー・ファミリー・グループを通じ、LVMHの株式の約47%、議決権株式の60%を保有する。しかし、アルノー氏が世界一の富豪となった理由は、株式だけではない。パンデミック下でも業績を伸ばした、卓越した経営手腕が挙げられよう。コロナ禍で株安や不動産の下落に直面しながら、富裕層がますます豊かになった恩恵を受け、2021年にLVMHの売上高は前年比38%増の620億ユーロが見込まれる。力強い成長を続けるLVMHが今後のどのようなパフォーマンスを遂げるのか、詳細は本誌をご覧下さい。

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当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週はインフレ加速でも止まらない株高を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

インフレ率が39年ぶりの高い伸びを記録も、株価は過去最高値を達成―Stocks Notch Record Even as Inflation Hits a 39-Year High

ビートルズは、”サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド”のアルバムで、”いずれ好転すると受け入れなければならないのさ”、”これ以上、悪くなりようもない”と陽気に歌っていた。

この歌詞は、ウォール・ストリートのインフレに対する現在の見方をよく表している。米11月消費者物価指数が約39年間で最も高い伸びを記録しても、来年のインフレ率が少なくとも今より悪化することはないためだ。しかし、メイン・ストリートでは、インフレは消費者にとって最大の問題であり、例え労働市場の見通しが楽観的となり賃金が上昇しても、実質ベースで賃金は下落し貧しくなっている。

株価をみると、感謝祭明けにオミクロン株確認を受け急落した分を取り戻し、S&P500に至っては12月10日に過去最高値を更新して取引を終えた。同時に、FRBが遅れてインフレに軸足を置いた政策転換を進めるなか、強まった金利上昇への懸念も後退し、長期金利は低下している。

12月14~15日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、テーパリングの加速を発表する見通しだ。利上げへ向けた道筋も、明確になると見込まれる。

しかし、一連の金融政策の見通しは、TINA-There Is No Alternative-株式以外の選択肢はないといった見方を揺るがすものではない。利上げを行ったとしても、長短金利は低推移にとどまると想定されているためだ。米10年債利回りが1.5%で米11月CPIが前年同月比6.8%ならば、確かに投資家にとって株式以外の選択肢はないように見える

チャート:S&P500、感謝祭明けの下落を完全に打ち消し見事なV字回復

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(出所:Stockcharts)

米12月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は約10年ぶりの低水準近くにあり、インフレは最大の懸念と位置付けられよう。1年先のインフレ見通しは4.9%で、油価が100ドルを超え過去最高値を記録した2008年7月以来の高水準にある。さらに、回答者の76%がインフレを米国が直面する深刻な問題として捉えていた。

しかし、ブラックロックのグローバル・フィクスト・インカムで最高投資責任者(CIO)を務めるリック・リーダー氏は、供給制約の段階的な解消を背景に2022年末にかけ全体もコアも2.5~3.0%のレンジに落ち着くと予想。ただ、賃金の上昇が続くと見込むが、好業績を追い風に賃上げも増益も可能だという。

株式市場は7~9月期、インフレ加速に追いつけず、株式資産は3,000億ドル減少した。しかし、家計純資産は2.4兆ドル増の144.7兆ドルを記録、不動産の価値が押し上げた。とはいえ、12月6日週にS&P500は3.8%高と2月以来で最も高い上昇率を遂げた上に、過去最高値も更新した。

コーナーストーン・マクロのマイケル・カントロウィッツ首席投資ストラテジストによれば、もはやS&P500というより、S&P5の状態だ。その5銘柄の1つがアップルで、同週に10.9%高を達成し時価総額は3兆ドルに迫った。大手優良株は、悪化するより良くなる公算が大きい。

――米株相場はオミクロン株確認を受けた下げを打ち消し、再び強気モードです。12月3日に2月18日までのつなぎ予算が成立し、下院が可決済みの債務上限引き上げ関連法案を12月9日に上院も通過させたため、不透明感が払しょくされたことも一因です。あとは1.75兆ドルの社会保障関連・気候変動対策向けの歳出法案をめぐる動きが注目されますが、シューマー院内総務が目指すクリスマスまでに成立できなくとも、さすがに1月末予定の一般教書演説までに妥結するのでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年12月13日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。