バロンズ:12月FOMC後の米株安、機関投資家のリバランスが背景か

バロンズ誌、今週は2022年の米株見通しを取り上げる。12月14~15日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を経て、1982年以来のインフレ加速を受けてテーパリングの加速を決定。タカ派にシフトしたFedは、2022年に向け約4年ぶりとなる利上げへの道筋を開いた。一方で、2022年に企業業績は鈍化する見通し。2021年とは様相がガラリと様相が変わるが、パンデミックは引き続き米経済の重しとなりうる。こうした状況で、専門家の2022年の米株相場につき今年より慎重な見通しを示す。2021年の増益見通しは50%超えだが、2022年はベース効果や供給制約、利上げ観測などを背景に、ウォール街の予想は9%程度しか見込んでいない。S&P500は12月17日に4,620.64で引け年初来リターンは23.0%高のところ、悲観的なストラテジストは2022年に4,400(12月17日比で4.8%安)を予想楽観的なストラテジストでも5,100(10.4%高)にとどめ、今年のような大幅高を見込んでいない。そのほか、業種別など見通しの詳細は、本誌をご覧下さい。

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当サイトで定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週はタカ派的と判断されたFOMCの決定を受け、急落した米株相場を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

Fedが正常化へ急ぐなか、米株は急落-Stocks Stumble as Fed Speeds Up Stimulus Phaseout

スコット・フィッツジェラルドは、かつて「一流の知能を有しているか否かは、2つの正反対のアイデアを抱えながらも、同時に分別する能力を持ち合わせているかで分かる」と語った。こうした判断基準は、米株相場と米債相場を評価する上で、有用だろう。

米株は12月13日週、FRBをはじめ主要国のインフレ警戒を背景とした正常化の動きを嫌気して下落したと言われている。しかし、その裏側でインフレ高進による利上げ警戒が高まるなか、米債利回りは低下した。

FOMCは、予想通りテーパリングの加速を発表すると共に、早ければ2022年3月に向け利上げへの扉を開いた。英国ではイングランド銀行がオミクロン株感染拡大に見舞われ感染者数が過去最多を更新するなかでも、主要国で初の利上げを実施。欧州中央銀行(ECB)は、2022年に資産買入規模を縮小し2023年に利上げを行う示唆を与えた。

米株はFOMCの決定直後の15日こそ上昇したが、以降は下落に反転。S&P500はアップル、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、テスラの5社が押し上げてきたが、今回は下落の波に逆らえなかった。こうした5社の上昇は、その他の銘柄の下落を打ち消してきた。J.P.モルガン・チェースのストラテジスト、マルコ・コラノビック氏によれば、米国の個別銘柄は平均で高値から28%下落したが、ラッセル3000などのような指数は22%高となっている。こうした乖離につき、コラノビック氏は「小型の景気敏感株やバリュー銘柄が過去4週間において、記録的なオーバーシュートに見舞われたため」と分析する。

BNPパリバの株式デリバティブ・ストラテジストのマックスウェル・グリナコフは、機関投資家によるリバランスにより、米株が年末にかけて売り圧力にさらされると予想。S&P500の債券に対するアウトパフォームを受け、1兆~1.4兆ドル相当が株式から債券へシフトする見通しだ。

こうした見方こそ、米債への需要の堅調さを的確に説明するものだ。FF先物市場では2022年3月に利上げ、並びに3回の利上げを完全に織り込むなかでも、米10年債利回りは低下した。

チャート:22年3月15~16日開催FOMCの利上げ織り込み度、据え置きと利上げが拮抗

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:22年12月13~14日開催FOMCの利上げ織り込み度、3回が3割超え

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(作成:My Big Apple NY)

12月のFOMCで公表された経済・金利見通しでは、個人消費支出(PCE)デフレーター見通し中央値が2021年の5.3%から、2022年には2.6%に、2024年には2.1%に引き下げられた。興味深いことに、市場はFRBの予測通りにインフレ加速が収束すると市場が信じているようだ。米5年物インフレ連動債の利回りは2.7%と、1ヵ月前の3.17%から大幅に低下している。

経済金利見通しは、今後インフレ圧力が後退し、完全雇用を目指すなか、Fedが利上げに向かっても比較的緩和的な政策を維持し実質FF金利をマイナスに維持する可能性を示す(筆者注:名目のFF金利中央値はPCEデフレーター以下であるため)。そうなると、米株は足元で急落したが、一流の知能をもって状況を見極めることが必要だ。

――こちらで筆者が指摘したように、FF金利見通しは中立金利まで引き上げる見通しになっていないため、理論上は利上げ局面でも緩和的な金融環境が続くことを意味し、今週のバロンズ誌もそれを指摘しました。そうなれば、経済正常化の進行とともに米株は2022年も上昇する期待が膨らみます。

ただし、不確定要因としては、ベース効果に加え、①パンデミックがもたらすインフレ圧力と供給制約、②地政学的リスク(ロシアのウクライナ侵攻など)、③バイデン政権の対中政策--などが挙げられます。①については追加の支援が期待しづらく、②は油価への影響が懸念され、米株相場の重しとなりかねません。③は米中通商協議でポジティブな進展がみられれば米株を支える半面、膠着や悪化はネガティブ材料となること必至。2022年の米株相場は、2021年より方向性と銘柄の見極めが重要になりそうです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年12月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。