バロンズ:実質金利はマイナスでも、タカ派Fedを警戒し米株安

バロンズ誌、今週のカバーはコモディティへの投資に注目する。銅やコーン、原油の価格はテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)のツイートほどに投資家を熱狂させない。しかし、コモディティは足元、①インフレ高進、②中国の変容、③気候変動対策を背景とした化石燃料からの依存脱却――を受け、今年の投資テーマとして熱い視線を浴びつつある。バロンズ誌は1年前からコモディティへの投資機会を指摘し、それは的中した。ブルームバーグ・コモディティ・インデックスは2021年に27%高を記録し、過去10年間で最も高リターンを遂げたものである。今年も、前述した3つの理由でこうしたトレンドが継続するとみられるが、既に十分値上がりし、価格の高騰を招く3つの要因も短期的、長期的にインプリケーションが異なるだけに、見極めが必要である。今年のコモディティ戦略に関して、詳細は本誌をご覧下さい。

JANIFEST/iStock

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は表紙と同様に今年注目の投資先を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

昨年の懸念材料、引き続き米株と米債の重石に―Last Year’s Problems Are Still Hitting Stocks and Bonds. What to Watch.

新しい年を迎えたが、昨年に確認された懸念材料―すなわちインフレ高進と米連邦準備制度理事会(FRB)の政策対応は、米株と米債の市場に打撃を与えている。

米10年債利回りは1月3日週に急伸し、1.77%と2021年3月以来の水準へ跳ね上がった。短期債利回りも、Fedが2022年に3回あるいは4回利上げするとの観測から、上振れした。

何より重要なポイントは、Fedがテーパリングを加速したことより、2021年12月FOMC議事要旨で確認できたように量的引き締め(QT)に転じ、流動性を市場から吸収する可能性が高まったことだろう。

こうした見通しにより市場はリスク回避に傾き、高い株価収益率(PER)銘柄が多いテクノロジー株を中心に急落した。逆にバリュー株へ資金が流入し、利回り上昇で利ザヤ拡大が意識され金融株が上昇、そのほか経済活動の正常化で業績改善が期待される景気敏感株なども勝ち組に加わった。

2021年12月FOMC議事要旨に基づけば、Fedは二大目標のうちインフレが2%を暫く上回って推移し、過去の2%割れを相殺するという目標を達成したことになる。さらに、米12月雇用統計をみれば、雇用の最大化という目標も達成したも同然だ。米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)こそ予想以下だったもののの、失業率は3.9%とコロナ感染拡大直前にあたる2020年2月の3.5%に接近すると共に、12月FOMCでの2022年失業率見通しに並んだ。

チャート:2021年12月FOMC、経済金利見通し

fomc21dec_FF_SEP

(作成:My Big Apple NY)

雇用回復の鼓動は、平均時給にも現れている。平均時給は前年同月比4.7%で、過去6ヵ月間の平均では約6%に及び、コロナ禍を除いてみれば何十年ぶりかの快挙だ。ただし、賃上げはインフレ加速のペースに追いついておらず、米12月消費者物価指数(CPI)は前年同月比7%と予想されている。

エバーコアISIによれば、賃金や家賃は値上がり続ける見通しだ。企業自体も、今までにない価格決定力を有している。さらに、足元では”グリーンフレーション”が存在する。大気や水質の汚染の解決に努めた1970年代のように、帰庫変動対策への対応は物価を押し上げうる

ただ、同社によればインフレ加速の最大の要因は金融刺激にあり、マネーサプライ(ここではM2)は過去2年間で41%も増大した。これは、2008~09年当時の2倍に相当し、1970年代当時とは比べられない規模となる。

FRBの政策転換は、インフレ圧力と比較すれば穏やかなものにみえる。FF金利誘導目標はコロナ禍から2年近くが経過した今も0~0.25%程度だ。仮に年末までに0.75~1.0%まで25bpずつ3回引き上げられたとしても、FRBの重視するインフレ指標(個人消費支出デフレーター、CPIを下回る傾向あり)が今年末までに2.6%に低下するという非常に楽観的な予測に基づけば、実質のFF金利誘は依然としてマイナス圏に深く留まる見通しだ

とはいえ、Fedの新たな引き締めの見通しは、利上げと保有資産の圧縮によってS&P500指数が弱気相場となる20%安に肉薄した2018年後半の不愉快な記憶を呼び起こす。異なるのは、当時2.40%だったFF金利がCPIの1.9%を約0.5ポイント上回るなどインフレ率を大きく上回り、実質プラスになっていたことだ。

長期金利もインフレ率を上回り、米10年債利回りは3.25%程度で、実質的には1.35%のプラスである。CPIの7%と比較すると、現在の1.77%は実質的に大きなマイナスだ。米10年物インフレ連動債は今後10年間に予想されるインフレを織り込んでいるはずだが、今週はマイナス0.77%で終了した。

しかし、恐らく真の問題は、緩和的なFedの見通しが実質金利を引き上げ、それがリスク資産に打撃を与えたことである。米10年物インフレ連動債利回りは23bp上昇し、5年物TIPS利回りは28bp上昇した。

当然ながらリスク資産には悪影響があり、テクノロジー銘柄の比重が高いナスダック100種は週間で4.5%下落し、2021年2月以来で最大の下げを演じた。マイナス金利とはいえ、実質金利の上昇は金融資産価格を下落させるに十分だった。

――2021年末はタカ派へ軸足を移した12月FOMCを受けてもサンタ・ラリーが訪れましたが、一転して21年12月FOMC議事要旨で早期の量的引き締めが示唆されると、下落に転じています。ウォール街では2022年の米株高に慎重な予想を示していましたが、その通りとなりました。さて、その詳細についてはまたの機会にお伝え致します。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年1月10日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。