米1月個人消費支出は大幅回復、代償は貯蓄率の低下

米1月個人消費支出は前月比2.1%増と、市場予想の1.5%増を上回った。前月の0.8%減(0.6%減から下方修正)から増加に転じた。

個人所得は前月比横ばいと、市場予想の0.3%減に反しマイナスを回避した。前月の0.4%増(0.3%増から上方修正)には及ばなかった。

個人消費支出の伸びが所得を上回ったため貯蓄率は6.4%と、前月の8.2%(修正値)を下回った2013年12月以来の低水準となる。詳細は以下の通り。

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〇個人消費支出
米12月新車販売台数が年率1,504万台と7ヵ月ぶりの水準を回復したように、耐久財が3ヵ月ぶりに増加に転じた。非耐久財は、積雪による電力需要拡大を受け、増加に反転。オミクロン株の感染拡大がピークアウトするなか、サービスは小幅ながら11ヵ月連続で増加した。

実質ベースでみると、個人消費は下方修正された前月と合わせ2ヵ月連続で減少した。

・前月比2.1%増と市場予想の1.5%増を上回る、21年12月は0.8%減
・前年比11.8%増と11ヵ月連続で増加、21年12月は13.1%増
・インフレを除く実質ベースでの個人消費は前月比1.5%増、21年12月は1.3%減
・前年比では5.4%増と11ヵ月連続で増加、21年12月は6.9%増

個人消費支出の内訳(前月比ベース)
・財 5.2%増と過去6ヵ月で5回目の増加、前月は3.2%減
・耐久財 9.7%増と3ヵ月ぶりに増加、前月は5.1%減
・非耐久財 2.6%増と6ヵ月間で5回目の増加、前月は2.2%減
・サービス 0.5%増と11ヵ月連続で増加し年初来で11回目のプラス、前月は0.5%増

チャート:個人消費、前月比の項目別内訳

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(作成:My Big Apple NY)

〇個人所得
→所得は名目ベースで3ヵ月連続での増加を経て、横ばい。賃金・給与は11ヵ月連続で増加したが、家賃収入に加え、子育て世帯向けの税額控除が2021年の3,000ドルから2,000ドルに減少(追加経済対策の期限切れ)が響いたほか、家賃が7ヵ月ぶりに減少し所得を押し下げた。なお、米疾病対策センター(CDC)は21年8月、新型コロナウイルス感染予防策対策として、感染率が高い地域を対象に新たに21年10月3日まで住宅立ち退き猶予期間を設定。しかし、家主や不動産団体が撤回を求め提訴し、米連邦最高裁判所が21年8月26日に無効の判断を下した結果、家賃の上昇が進み始めている。その他、利回り上昇や配当の増加を受け、資産収入も増加に寄与した。

実質ベースの個人所得は年初来で10回目、5ヵ月連続でマイナスに陥り、物価上昇が所得増加分を吸収していたことが分かった。

・前月比0.3%増と年初来で8回目のプラス、市場予想と一致、11月は0.5%増
・前年比では7.3%増と8ヵ月連続で増加、11月は7.6%増
・実質ベースでは前月比0.1%減と年初来で9回目のマイナス、11月は0.1%減
・前年比は1.4%増と年初来で8回目のプラス、11月は1.8%増

所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。

・賃金/所得 0.5%増と11ヵ月連続で増加(民間は0.5%増、政府部門は0.4%増)、前月は0.7%増
・経営者収入 0.4%増(農業は13.8%増、非農業は0.2%減)、前月は1.3%減
・家賃収入 0.3%減と7ヵ月ぶりに減少、前月は0.7%増
・資産収入 0.3%増(金利収入が0.3%増、配当が0.3%増)と4ヵ月連続で増加、前月は0.6%増
・社会補助 1.3%減、前月は横ばい
・社会福祉 1.3%減、前月は0.1%減(メディケア=高所得者向け医療保険は1.1%増と9ヵ月連続で増加、メディケイド=低所得者層向け医療保険は0.6%増、失業保険は12.2%減と10ヵ月連続で減少、退役軍人向けは1.6%増と増加基調を維持、その他は14.6%減)

チャート:個人所得、前月比の項目別内訳

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(作成:My Big Apple NY)

〇可処分所得
・前月比0.1%増、4ヵ月連続で増加、21年12月は0.2%増
・前年比は4.4%減、8カ月ぶりに減少、21年12月は4.4%減
・実質ベースの可処分所得は0.5%減、6ヵ月連続で減少、前月は0.3%減
・前年比は9.9%減、10カ月連続で減少、21年12月は0.5%減

〇貯蓄率
・6.4%、21年12月の8.2%を下回り2013年12月以来の低水準

チャート:実質の個人消費は、貯蓄率の低下と共に大幅に伸びが縮小

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(作成:My Big Apple NY)

〇個人消費支出(PCE)デフレーター
→油価の上昇やサプライチェーン途絶による影響を受け、上振れ傾向が続く。PCEデフレーターの前年比は1982年2月以来の高水準コアPCEも1983年4月以来の高い伸びを記録した。Fedは一連の結果が公表される前、1月FOMCで①テーパリングの3月終了、②3月の利上げ、③保有資産圧縮の着手――示唆した。

・PCEデフレーターは前月比0.6%上昇し市場予想の0.5%以下、21年12月は0.5%の上昇
・前年比は6.1%上昇し市場予想と一致し1982年2月の高い伸び、21年12月は5.8%の上昇
・コアPCEデフレーターは前月比0.5%上昇、市場予想と前月と一致、21年12月は0.5%の上昇
・コアPCEの前年比は5.2%上昇。市場予想の4.1%超え1983年4月以来の高い伸び、21年12月は4.9%の上昇

チャート:物価上昇を受け、実質賃金の伸びに下方圧力

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(作成:My Big Apple NY)

――米1月個人消費支出は前月の減少を完全に打ち消す大幅増加を遂げたものの、貯蓄率は一段と低下し2013末以来の水準でした。2010~19年平均の7.2%も下回ります。インフレ高進を受け、裁量消費が一段と狭まるリスクをはらみます。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻もあって、インフレ加速は必至。3月15~16日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では50bp利上げの観測が後退しつつありますが、その分、長く曲がりくねった利上げの道が続きそうです。その先に、バロンズ誌が指摘するようなスタグフレーションが待ち構えていなければよいのですが・・。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年2月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。