バロンズ:クリプト・クラッシュは、第2のITバブル崩壊か

バロンズ誌、本日のカバーは大離職時代に今までにないほど立場が改善された労働者の今を取り上げる。パンデミックにより、ベビーブーマー世代の退職が加速し移民は減少し、こうした問題が長期化するリスクがある。何より、雇用の最大化に到達したも同然の今、労働力をめぐる競争は熾烈を極めよう。直近で前年同月比5%台に乗せる平均時給は、経済学者が「粘着性」と呼ぶ通り、経済の他の側面が落ち着いたとしても高止まりしそうだ。

企業は採用や現状の労働力を確保すべく、賃上げだけでなく勤務時間を融通したり社用車を使用させる、社員の電話料金を負担するなど、福利厚生を充実させた結果、利益率を犠牲にしてきた。それでも、退職者の増加や採用のコストを考えれば、そうせざるを得ない。このように、今や労働者側の交渉力が強まる上、労働組合に対する国民の支持は1965年以来の高水準に達し、2021年10~12月期の組合代表者届出件数は過去20年間で最も高いペースで増加している。このまま労働者側に有利な労働市場が続くのか、詳細は本誌をご覧下さい。

Eoneren/iStock

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は暗号資産の急落を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

暗号資産の急落が、株式投資家に切迫したリスクを与える理由―Crypto’s Fall Points to Deeper Perils for Stock Investors.

決まり文句は、本質的な真実を含んでいなければ、存在しない。特に歴史に関連するものには、歴史は繰り返されるものであり、そこから学ばなければ、人は過去の過ちを繰り返すことになる。

過去から学ぼうが学ばなかったかは別として、それほど遠くない時代の再来は驚きに値する。

今年のスーパーボウルで暗号資産の広告が大量に放映されてから、実に3ヵ月少ししか経過していない。大一番の試合を別としても、俳優マット・デイモンがクリプト・ドットコムの広告で「幸運は勇敢なる者を好む(fortune favors the brave)」と語るのをひたすら目にしたものだ。

画像:マット・デイモン、水の次は暗号資産への投資の呼び水に

(出所:Youtube

シーブリーズ・パートナーズのダグ・カス氏は、20年以上前のスーパーボウルのドットコム広告を思い出し、この広告から1つの明確な投資的意味を見出した。ズバリ、暗号資産のショート戦略である。

5月9日週に、テーブルコイン(法定通貨と連動する暗号資産)であり韓国誕生のルナ(LUNA)が一夜で価値がゼロと壊滅的な局面を迎えた結果、同じくステーブル・コインのテラ(TERA)、そしてビットコインが連れ安となった。いわゆる”クリプト・クラッシュ”を受け、カス氏の戦略が正しかったことが立証された。バークシャー・ハサウェイウォーレン・バフェット最高経営責任者(CEO)は最近、ビットコインの全てに25ドルすら払わないと発言しているが、損失は現実のものとなっている。ブルームバーグによれば、暗号資産はこの1週間で約2,700億ドルを吹き飛ばした

暗号資産の保有者などが、暗号資産につき価値保存する手段として有効で、従来の金融資産のリスクから切り離されていると主張しても、ビットコインは株式市場と相関性を高めており、特にテクノロジー関連がウェイトの約半分を占めるナスダックと連動してきた。特に、ナスダックとの連動でいえば、ITバブル崩壊を彷彿とさせ、まるでデジャヴだ。なお、1999年のITバブルの狂乱との類似性は2020年後半に明らかになったようで、エアビーアンドビーの新規株式公開時に同コラムで指摘していた。

チャート:パウエル議長やブレイナード理事(当時)がインフレ抑制こそ最優先事項と表明した21年11月以降、ナスダックとビットコインの相関性高まる

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(作成:My Big Apple NY)

5月9日週、弱気相場はARKイノベーションETF投資信託からFAANGに至るまで広がった。特にナスダックの急落は、20年前のITバブル崩壊を彷彿とさせる。ただ、2021年11月の高値から5月12日まで、約6ヵ月間の下落幅は28.9%と、2000年2月から5月までの3ヵ月で同程度急落したほどのスピードではなかった。

そして、13日の金曜日にリスク資産は反発し、ナスダックは3.82%高と21年11月3日以来の上昇率で取引を終えた。これは回復の兆しなのか、あるいは弱気相場の中でのラリー(弱気ラリー、弱気相場中の一時的な上昇局面)なのだろうか?

ITバブル崩壊時を紐解くと、ナスダックは2000年5月末から8月まで23%上昇しテクニカル的には強気相場に入った。しかし、それは一段の弱気相場へ向かう序曲に過ぎず、結局は2002年9月末まで73%も落ち込んだ。

Fedの金融政策も、当時と今は類似している。当時は、ITバブルの空気を抜こうと、Fedは1999年6月から金融引き締めを開始、FF金利誘導目標を4.75%から2000年8月まで6.5%まで引き上げた。足元、Fedは0.0~0.25%から、0.75~1.0%へ引き上げ、6月と7月にも50bpの利上げが予想されている。

Fedは米株が下落しても、金融引き締めの手をゆるめることはないだろう。米消費者物価指数が前年同月比で8%を超えるなか、金融緩和があまりにも長きにわたって続いた以上、パウエルFRB議長は中央銀行の最優先事項は信頼の回復だとしている。投資家は、”パウエル・プット”つまりFedが緩和策を講じて米株市場を支援する可能性は低いと見込む。

一方で、世界の金融システムから流動性が流出し続けており、パウエル氏は暗号通貨の急落はその兆候であると見ている。今週のヘッドラインで失われたのは、香港がドル対米ドルのペッグ制を守る必要性だ。エバーコアISIは、世界的な金融緩和が終了するにつれ、香港こそ世界で最も注目すべき市場であるという。ただし、それは恐らく香港だけではないのだろう。

――暗号資産がITバブル崩壊後のナスダックと同じ道を歩むならば、Fedが緩和路線へ舵を切り直した際に再び上昇する余地があるとも言えます。もちろん、当時のナスダック構成銘柄のように、生き残る暗号資産とそうでないものに振り分けられることでしょう。また、その頃には中央銀行デジタル通貨(CBDC)が登場し、再び暗号資産の価値が見直されるかもしれません。暗号資産はボラティリティが高く、さらなる規制が必要なことは明白ですが、需要がある限りバブルが崩壊しても存続していくのでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年5月15日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。