バロンズ:6月も乱気流続くか、市場は3回連続の50bp利上げ織り込む

バロンズ誌、今週のカバーに結婚と出産のラッシュに潜む米経済の罠を取り上げる。産業界のデータによれば、パンデミック下で延期やキャンセルが相次いだ反動で、2022年は結婚ラッシュの年にあたり恋人をもつ独身者のうち25%以上が結婚する見通しだ(筆者注:2021年12月に「北野誠とのトコトン投資やりまっせ。」でお伝えしたように、結婚式サービス大手ザ・ノットによれば、2022年に行われる結婚式は推定260万件と1984年以来で最多となる見通し)。

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しかし、ベビーラッシュが続くかというと、話は別だ。2021年に米国での出生者数は確かに7年ぶりに増加したが、合計特殊出生率はトレンドとして低下をたどる。経済へのリスクは、明白だ。人口が減少する国々では高齢化が進み、経済成長の減速や、政府支出の抑制に直面している。出生者数の減少は、経済のけん引役である消費支出を押し下げかね,ない。「失われた10年」という言葉が生まれた日本では、急速な少子高齢化を受け長期の経済低迷に喘いだ。中国でも、2016年まで続いた一人っ子政策により同様の問題に直面しうる。米国と世界における出生率低下の問題についての分析と見通しは、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は6月の米株見通しを届ける。抄訳は、以下の通り。

6月の株安懸念で投資家は四苦八苦、反発する可能性は?―Fear of a June Swoon Rattles Investors. Is a Rebound Lurking?

「6月に稀な日があるとすれば、完璧な1日だろう」――ジェームズ・ラッセル・ローウェル氏の詩的な音場は、ある年の6ヵ月後を的確に表しているかのようだ。しかし、2月の最も暗い時期のようなムードが立ち込めたところでは、そう感じられないだろう。

悪い予言は、企業にとって最悪なことのようにみえる。JPモルガンチェースのジェイミー・ダイモンCEOは先週、「ハリケーンに備えよ」と警告した。テスラのイーロン・マスク氏は、テスラ従業員に対し電子メールで米経済をめぐり「極めて悪い印象(super bad feeling)」を持つと警告、電気自動車メーカーに10%の人員削減が必要との見解を表明した。

ニューヨーク・ポスト紙は、解雇追跡サイトのデータに基づき、テクノロジー企業の66社が5月に16,800件の人員削減を行い、パンデミックに伴い経済活動が極めて限定的となった2020年5月以降で最多となったと報じた。これらの企業の多くは、有望ではあるが利益はなく、かつて活況を呈していた米株市場によって与えられた大量の資金を使い果たした企業と言える。

しかし、J.P.モルガンやテスラような資金調達に市場に依存していない企業でさえ、株価低迷の影響を感じるかもしれない。セバスチャン・マラビー氏による元連邦準備制度理事会議長の伝記”The Man Who Knew”によれば、この考え方はアラン・グリーンスパン元FRB議長が数十年前に提唱したものだという。J.P.モルガンとテスラの株価がそれぞれ最高値から25%と43%下落しており、CEOとしてはとても無視できないだろう。

マイケル・ハートネット氏率いるバンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト・チームが集計する強気・弱気指標も「極めて弱気」にシフトし、経済活動が徐々に再開過程にあった2020年6月以来の水準を記録した。ウィリアムズ・アンド・メアリー大学の経済額教授であるピーター・アトウォーター氏は、英エコノミスト誌のカバーで取り上げられたように、核戦争と米景気後退など不吉な見通しを描く。

逆張り派は「これだけ悪い状況なら、良くなるしかない」と推測しがちだ。BofAの指標は3月以降「買い」のシグナルが点灯し、6月3日の終値4,108.54から4,400へ反発を見込むアトウォーター氏も、小型株の株価収益率(PER)2020年のパンデミック下での低水準や金融危機後の2009年の底に達したと指摘する。足元の株安は、ARKインベストメントのキャシー・ウッド氏が「これまで高値圏にあった銘柄が屈辱を受けた」との言葉を思い出させる。アトウォーター氏によれば、足元の絶望から逆転により、平和と繁栄の急拡大し、コロナ禍の米国で広がった政治的偏向の終焉を伴うかもしれない。

BofAは、S&P500が4,400に到達した時点でのショートを推奨する。中銀が保有資産の縮小を含めた金融引き締めを開始するためで、BofAは「Fedが引き締めを終えるまでお楽しみはやってこない」と分析する。

チャート:S&P500、4,250の雲の上限を超えても25日移動平均線が4,300に控える

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(出所:Stockcharts)

米5月雇用統計は米景気後退懸念などCEOなどの暗い見通しと裏腹に、労働市場は力強さをみせつけた。平均時給は4月と同じく前月比0.3%の上昇にとどまったが、生産労働者・非管理職では同0.6%に加速していた。TSロンバードの首席エコノミスト、スティーブン・ブリッツ氏によれば「週次給与総額の指標(雇用、賃金、労働時間を含む)は5月に0.6%上昇し、前年同月比では9.9%上昇した」と分析する。ブリッツ氏によれば、給与の増加は個人消費を支えるはずだが、賃上げ分は物価の上昇によって大半が吸収されるだろう。

実質ゼロをはるかに下回る水準で、Fedが利上げによりインフレを抑制できると考えるのは希望的観測に過ぎないと、ブリッツ氏は付け加える。CMEのFedウォッチによれば、メモリアルデーの休暇を前にFF先物市場において利上げ観測は後退していたが、5月30日週には6月、7月、9月の3回の米連邦公開市場委員会(FOMC)でそれぞれ50bpずつ3回の利上げを、2023年半ばにはFF金利誘導目標レンジが3.25~3.5%に達すると織り込んだ

チャート:2022年末の利上げ織り込み度は2.75~3.0%が54.6%と最も高く、50bpの利上げ3回の見通しが優勢(6月3日時点)

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:2023年6月までの利上げ織り込み度、3.25~3.5%が33.2%と優勢(6月3日時点)

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(作成:My Big Apple NY)

その結果、米10年物債利回りは3%近くへの上昇に転じ、週足で主要株価指数は約1%下落した。S&P500とナスダックは過去9週間で8回目の下落となる 。現代の投資家達は、6月(June)と卒倒(swoon)と韻を踏んだ連句に傾倒しているのかもしれない。

――CFRAが1945年以降のS&P500の月足動向を調査したところ、6月は平均0.14%高と12ヵ月間で3番目に弱いリターンでした。また、上昇する確率は55%。ただし、12月に次いでボラティリティが最も低い月となります。とはいえ6月と言えば、保有資産の縮小が始まり、14~15日開催のFOMCでは50bpの利上げに踏み切る見通しで、市場が平静さを保てるかは微妙です。

6月FOMCの焦点は、経済金利見通しとドットチャートであるに違いありません。問題は9月の利上げ中断の可能性を示唆したアトランタ連銀総裁の他、9月の25bp利上げの可能性に言及したフィラデルフィア連銀総裁など、ハト派の見通し修正が中央値に影響するのか。9月利上げ中断の可能性は現段階で極めて低いものの、経済減速やそれに伴う物価の見通し下方修正が示されれば、利上げ織り込み度が再び巻き戻される余地を残します。米5月消費者物価指数の発表は10日であるだけに、まずはここがカギを握ることでしょう。

チャート:Fed高官、5月の主な発言内容

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(作成:My Big Apple NY)

仮にハト派寄りの姿勢が読み取られれば米株の買い戻しにつながりそうです。ただその時期は、利上げやQTの効果を確認できる9月以降にずれ込んでもおかしくありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年6月5日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。