ワクチンを打つほどコロナに罹りやすくなる直接的な証拠

小島 勢二

Warchi/iStock

2023年になっても、コロナの流行が収束する気配は見えない。図1に示すように、わが国における100人あたりのコロナワクチンの追加接種回数は、世界でもダントツである。

多くの国では、昨年の初めから、ワクチンの接種回数は頭打ちであるが、日本のみ増加が著しい。それに見合う効果は得られているだろうか。

図1 コロナワクチンの追加接種回数

図2には、最近の新型コロナウイルスの感染者数を示す。日本の感染者数は昨年の11月から、10週連続で世界でも最多である。それも、日本に続く米国や韓国の2倍以上である。

図2 新型コロナウイルスの新規感染者数

ワクチンを打つのは、感染予防でなく重症化ないし死亡数を減らすことが目的だとよく言われる。ワクチン接種回数が世界一になったことで、新型コロナウイルスによる死亡数は減っただろうか。

昨年12月の1ヶ月間で、日本の新型コロナウイルスによる死亡者数は1万人を超えた。2020年2月の流行開始から累積死亡者数が1万人をこえたのが、2021年の4月であることから、14ヶ月間に匹敵する死亡数が、わずか1ヶ月でみられたことになる。

図3は、新型コロナウイルスによる死亡者数を示すが、日本は米国についで第2位である。日本の総人口が米国の3分の1であることを考慮すると、日本は米国を凌いで、実質世界一である。

図3 新型コロナウイルスによる死亡者数

ワクチンの追加接種回数もマスクの着用も世界一の日本の感染者数や死亡者数が世界最多であることには首をかしげるほかはない。

筆者は、これまで疫学的検討から、ワクチンを追加接種すると感染が増える可能性を論じてきた。10月24日付けのアゴラ記事では、ワクチンの追加接種率が上位5県と下位5県のワクチン接種率と新規感染者数を検討すると正の相関が見られることを報告した。すなわち、ワクチンの接種率が最も高い秋田県や山形県では、最も低い沖縄県や大阪府と比較して人口あたり2倍以上の新規感染者がみられた。

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オミクロン株対応2価ワクチンの相対予防効果を検討するには、従来型ワクチン接種者と感染率を比較することが必要である。これまで、オミクロン株対応2価ワクチンの予防効果を報じた論文には、ワクチン未接種、2回、3回、4回接種者における感染者数と非感染者数とが記載されている。

表1には、この数値を用いて算出した各接種回数群における感染率の比較を示す。対象人数が33万人を超えるICATTが行なった研究注1)では、未接種、2回、3回、4回接種と、ワクチンの接種回数が増えると、感染率は29%、33%、38%、41%と増加することが示されている。

VISION Networkの行なった研究注2)でも、未接種者、2回、3回、4回接種者の感染率は13%、11%、11%、10%とほとんど変わらない。3,300人を対象とした感染研からの研究注3)では、未接種者の感染率は62%であったが、2回、3回、4回接種者の感染率は、51%、51%、47%とほとんど差がなかった。

表1 コロナワクチンの接種回数と感染率
筆者作成

最近、米国のクリーブランドクリニックから、5万人を超える雇用者を対象に、ワクチンの接種回数と感染率を検討した結果が報告注4)された(図4)。ICATTからの報告と同様に、未接種者の感染率が最も低く、2回、3回、4回と接種回数が増すと、感染率も増加している。この図は、ワクチンを打つほどコロナウイルスに感染しやすいことを明確に示している。

図4 コロナワクチンの接種回数と感染率

Science誌に掲載された研究注5)で、3回のワクチン接種により、武漢株、アルファ株、デルタ株に対する抗体結合反応、中和抗体の産生、メモリーB細胞の頻度、T細胞免疫能の増強が見られたが、オミクロン株に対しては抑制されることが示された。ワクチンを3回接種するとオミクロン株に対する免疫能が特異的に抑制されるようである。

マウスにおける実験注6)でも、組み換えワクチンを追加接種すると、中和抗体のみでなく、オミクロン株に対する細胞性免疫も抑制されることが示された。

最近発表された基礎研究、臨床研究はともに、ワクチンの追加接種のリスクが報じられており、追加接種率が世界でトップの日本が、感染者数や死亡者数で世界でも最多であることを裏付ける結果である。

今もってワクチン接種を推奨するわが国のコロナ対策は、再検討が必要ではないだろうか。

注1)Effectiveness of Bivalent mRNA Vaccines in Preventing Symptomatic SARS-CoV-2 Infection — Increasing Community Access to Testing Program, United States, September–November 2022

注2)Early Estimates of Bivalent mRNA Vaccine Effectiveness in Preventing COVID-19–Associated Emergency Department or Urgent Care Encounters and Hospitalizations Among Immunocompetent Adults — VISION Network, Nine States, September–November 2022

注3)新型コロナワクチンの有効性を検討した症例対照研究の暫定報告(第五報):オミクロン対応2価ワクチンの有効性

注4)Effectiveness of the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Bivalent Vaccine

注5)Immune boosting by B.1.1.529 (Omicron) depends on previous SARS-CoV-2 exposure

注6)Extended SARS-CoV-2 RBD booster vaccination induces humoral and cellular immune tolerance in mice