黒田東彦前日銀総裁は30日、日本と米国の金利差が近く縮小するとして、「円は1ドル=120〜130円前後まで上昇する可能性が高い」との見解を示し、行き過ぎた円安をけん制した。しかし、長期円安を招いた当事者でもある黒田前総裁の発言には、「無責任」「説得力に欠ける」との批判が相次いでいる。
参照リンク:黒田前日銀総裁、1ドル=120-130円前後に向けた円高進行見込む Bloomberg
- 黒田前総裁は「日米金利差の縮小が進めば、円は対ドルで上昇に向かう」「年末までに日銀利上げが実施される公算が大きい」と発言。
- 「物価上昇率はすでに2%に達し、経済成長率もおおむね1.5%前後で推移している。失業率も2.6%程度と極めて低い」と述べ、植田和男総裁のもとで日銀が利上げを続けられる状況にあるとの見方を示した。
- 米国の利上げ停止や日本の金融正常化によって、金利差が縮まると分析した。
- その際、1ドル=120〜130円前後を想定する見通しを示した。
- だが、黒田前総裁自身が量的緩和・マイナス金利・YCC(長短金利操作)を導入し、円安を長期化させた張本人でもある。
- 市場や識者からは「円安を作った本人が円高を語るのは無責任」「自らの政策を総括すべき」との批判が出ている。
- また、「円高への転換には政策の信頼回復が必要」「金利差だけで説明するのは単純すぎる」との指摘もある。
黒田前総裁の「円高予想」は理屈としてはあり得るが、その発言に誠実さを感じる市場関係者は少ないようだ。長年の異次元緩和がもたらした円安・国債バブルの「後始末」こそが、いま日本経済の最大の課題である。黒田前総裁がまず語るべきは「展望」ではなく、過去の自身の政策の「検証」であり、その責任と向き合うことではないだろうか。
黒田前総裁 日本銀行HPより