与野党がインフレを強めかねない「ガソリン暫定税率」廃止で合意

自民党や立憲民主党など与野党6党は10月31日、ガソリン税と軽油引取税にかかる暫定税率の廃止で合意した。高市政権にとって初の物価高対策となるが、対症療法にすぎず将来の財政負担を増やすとの指摘もある。今回の措置は、地方へのガソリン利用者への恩恵が大きく、選挙対策との見方も根強い。

  • 暫定税率の廃止に合意
    自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、共産党の計6党が、ガソリン税の暫定税率(1リットルあたり25.1円)を25年12月31日に廃止することで合意した。
  • 軽油引取税も廃止へ
    軽油引取税の暫定税率(同17.1円)についても26年4月1日に廃止することで一致。対象は全国の給油所に及ぶ。
  • 価格はさらに15円程度下落へ
    現在は政府による補助金により、すでにガソリン1リットルあたり10円の価格引き下げが実施中。暫定税率廃止により、ガソリンの実勢価格は年末以降、さらに15円ほど下がる見通し。
  • 「高市政権の見直し第1弾」との評価
    高市首相は物価高対策の「即効性」を強調。ガソリン価格の引き下げが生活者の負担軽減へ直結すると説明している。
  • 経済界・専門家の批判も
    浜田宏一エール大学名誉教授ら専門家からは、「景気対策として筋が悪い」と指摘。ガソリン利用者にのみ恩恵が偏り、財源は赤字国債に依存するとの批判がある。OECD諸国の中でも日本のガソリン価格はすでに安い部類であり、インフレを昂進させる「バラマキ」政策である。
  • 将来世代の負担増加への懸念
    暫定税率廃止によって毎年1.5兆円規模の税収減が発生する見込み。これを国債で穴埋めする動きへの批判が高まっており、10年で合計20兆円超の財政負担が発生するとするとの試算も出ている。

ガソリン減税年内実施へ流れ 自民党HPより

ガソリン・軽油の暫定税率廃止は、国民の生活支援を目的とする一方、財源が不透明で将来世代の負担増につながる危険性をはらむ政策である。短期的にはガソリン価格が15円程度下がる見通しだが、物価全体の上昇抑制につながるかは疑問視されている。

ガソリン減税年内実施で一致した与野党6党の実務者 自民党HPより