読売新聞と早稲田大学の共同世論調査(国民の政治意識調査、有権者3000人を対象)の結果が2日付の朝刊に掲載されました。
30項目の及ぶ大規模な調査は、国民意識が男女別、年齢別、所得別、地域別、政治意識別、職業別などで細分化されていると思われます。大衆の均質性が崩壊し、一つにまとまった国民意識が形成されず、政治学でいう「ポスト・マス・デモクラシー」の時代に入っています。
政治を担う大政党は支持基盤が国民各層に細分化されてまとまりを欠き、一方、複数の少数政党はピンポイントで狙いを定めた支持層を獲得しようとしようとしています。大きな視野で長期的に国民の利益を考え、政策に取り組むことが困難になっていると考えます。
今回の調査で、「消費税を今後、どうするのがいいか」の問いに「税率引き上げ、今の税率を維持」が44%、「税率を引き下げる、廃止する」が56%です。懐疑派が過半数でも、存続派が44%もいれば、消費税をいじることはできないでしょう。懐疑派は主婦層、若年世代、低所得層で、存続派は高年齢層に多いと思います。
財源を聞かない調査は無意味
「景気対策のために財政出動を行うべきだ」に賛成・どちらかと言えば賛成が59%に対し、反対・どちらかといえば反対が38%で、これが高市首相の人気の一因になっていまずす。
その財源をどう確保するのかは聞いていない。これは欠陥のある調査です。「財政出動と増税のセット」か「財政出動と赤字国債のセット」かを問えば、拮抗する結果になったでしょう。
「外人労働者受け入れ」では、賛成・どちらかといえば賛成が39%、反対・どちらかといえば反対が59%です。単純労働者のことを聞いているようで、外国人技術者の受け入れはどうかを聞けば、賛成が増えたはずです。外人労働者受け入れを増やしていかないと、人手不足、成長停滞が進む考える有権者も多いでしょう。
政党支持率は自民24%で、残りは国民9%、立憲6%、維新5%、公明4%などに分散します。「絶対に支持したくない政党」(複数回答可)も聞いており、自民17%、立憲16%、維新11%、公明27%などです。自民賛成24%、自民反対17%は、国民の意識が細分化し、かつ対立していることが分かる。
多様な利害関係を吸収してきた大政党システムの崩壊
多様な利害関係を吸収してきた大政党システムが崩壊し、利害関係の分散化が進み、総意の形成が難しい。
多数派工作が難航するため、構造的な問題(財政赤字、社会保障、外人労働者など)には手をつけられず、目先の利害関係が争点となる。
こうした世論調査を掲載する各紙を読んで感じることは、舞台裏の政界話が多いことです。「高市氏は支持率が高い解散総選挙をしたい」、「麻生氏は高市氏が権力を握ることは愉快ではないだろう」とかの類です。
そうした舞台裏の話より重要なのは、日本が国際的にみて異常に選挙が多い国だということです。日本は過去15年に10回の国政選挙(衆参)がありました。多党化、民意の細分化の中で選挙をすれば、目先の勝利を求めたバラマキ財政、ポピュリズムに流れるのは必至です。
日本は国政選挙の数を減らそう
多党化になればなるほど、選挙回数をして勢力拡大を図りたいと各党は思う。やるべきことはその反対で、選挙を減らすことです。メディアはそのことをあまり主張しない。「首相が任意に議会を解散できる日本は例外的な国」(ChatGPT)です。
Chatさんによると、「英国は2011年に固定任期議会法を制定し、首相の解散権を大幅に縛った(ジョンソン政権の時に廃止)」。さらに「独仏伊では、議会解散の条件が明確に法定されている(議会が首相を信認しない、予算が成立しないなどに限定)」だそうです。
では日本はどうするか、「解散権を制限し、任期4年の固定制にする。解散したければ、議会の3分の2以上の賛成を得る」ようにすべきだと、Chatさんは指摘します。世論調査の表面的な数字より、メディアはこうした問題を考えることが必要です。
高市首相 自民党HPより
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2025年12月5日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。