人の死と宗教:46%が無信教とされる日本人の死生観

いつものブログネタとちょっと毛色が違う話題を振りましょう。普段は考えない「死」という言葉の重みは年齢共に感じるようになるもので、いつかは必ず来るその日を意識することで人間の行動は変わるのかもしれません。もしかすると生まれてから無意識のうちにそれを前提に行動をしているのかもしれません。そのあたりを少し考えてみたいと思います。

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もしも自分の死期が近いと感じるようになった時、近親者に「葬儀はこうしてくれ」と囁く方もいらっしゃるでしょう。大概がどういう葬式にするかというフォーマリティ(形式)の話で「俺、葬式やらなくていいから」という人は聞いたことがありません。変な解釈ですが、何らかの形で葬式をしないことには天国行の切符がゲットできないのではないか、と思うのかもしれません。

宗教とは何か、これだけでこのブログが10本書けると思いますが、私の端的な理解は人は生まれながらにして様々な不安や問題、行き詰まりを抱えるが、その時に頼るのが宗教である、というのが一面。もう1つは死んだときにあの世に連れて行ってくれるという安心感ではないかと思うのです。

前段のことについては日本人の46%が無信教とされる中で受験の時は神社に行き、亡くなった祖先の法事に出席し、友達の結婚式がキリスト教式ならば教会のミサで幸せになってねとアーメンと一緒に言ってしまうなど、何でもよいので、すがるものがあればよろしいという感じでしょうか?

後段のあの世への切符の場合、死を意識すると突然、「俺のうち、仏教の何宗だったっけ?」になり、ちょっとかじってみたりして天国行きの切符の買い方を習得するのでしょう。幸いにして売り切れはないようですから安心です。

AIに聞いてみたところ、自分に圧倒的自信があり、自分自身を理解し、制御できる人は宗教はいらないかもしれないと出ます。逆に言えば一定の不安を抱える人は宗教に心の拠り所を求めるのかもしれません。しかし、どんなに強気の人でも交通事故でばったり死ぬケースはともかく、徐々に衰弱し、病気をして亡くなるケースが多いわけですから死ぬ前日までずっと強気というわけにはいかないのでしょう。

では死後の世界とは何でしょうか?私の考えは「無」なのだと思っています。何もないのです。ではなぜこれだけ様々な宗教が生まれ、信者が多いのか、といえば教義や教えにストーリー性があるからだろうと考えています。何教にしろ、死後の世界を経験した上で宗教を作った人はいないのです。つまり宗教の教えが人間の道徳心を主体とするものであり、良いことをすれば死後の世界は安楽です、と言っているわけです。神との契約とされるのも「お前が生きている間、教義にある悪いことをしないと約束するのだな」という誓いであり、それを破り神に許しを得るという対話こそが宗教をより身近にするのだと思います。

オカルト映画というのはよくできていて、不幸な霊が漂い、時としてその霊が人々に悪さをすることを題材にしています。これも一種の宗教のようなもので浮かばれない霊を弔うという生きている人への教訓ではないでしょうか?

ところで日本ではドラマなどでも「仏さんに線香を」というシーンがあり、仏壇に手を合わせるのは当たり前の光景ですが、墓参となると年に一度行くかな、という感じではないかと思います。どちらが良いのか、といえばどちらでもよく優先順位もありません。違いは仏壇は仏さん、つまりお亡くなりになった当人の死後のカタチである一方、墓は本人のままという勝手解釈をしています。まぁ端的に言えば仏壇は自分の家の居間に寺を作ったようなものであります。故に田舎に行けば巨大で金ぴかな一基うん百万円の仏壇にご満悦の方も多いわけです。そして私も死んだらこの仏壇の中の仏さんの一団に加えてね、だからさ、特別立派なのをこさえておいたからね、という感じでしょうか?

例えばガンになって余命宣告を受けたとします。その時、家族や身内に引継ぎやお別れをするわけですが、心の中では神様仏様大仏様、死後の世界では苦しみませんように、と祈るのが普通だろうと察します。その時、どの神様にしようかな、と選ぶ人はいないはずですが普段無宗教のだった人は特定宗教の教義や仏教の教えが分かる訳でもない、となれば実質無宗教状態でただただ心の中で拝むということではないでしょうか?私はそれでよいのだと思います。自分の人生を振り返り、反省し、お世話になった人を思い出し、みんなにありがとう、と言えればそれがその人の宗教になりえると思います。けっしてお布施で幸せを買うのではないと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年12月7日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。