アゴラ 言論プラットフォーム https://agora-web.jp 経済、ビジネス、情報通信、メディアなどをテーマに、専門家が実名で発言することで政策担当者、ジャーナリスト、一般市民との交流をはかる言論プラットフォーム ja Thu, 13 Feb 2025 09:29:01 +0000 https://agora-web.jp/img/logo-for-smartnews.png アゴラ 言論プラットフォーム https://agora-web.jp/img/logo-for-smartnews.png メキシコ湾が「アメリカ湾」になった? column 1月20日、ドナルド・トランプ大統領は就任初日にメキシコ湾を「アメリカ湾」と改称する大統領令に署名しました。 この措置は、米国の偉大さを称えることを目的としています。 メキシコ湾を「アメリカ湾」に、トランプ氏は改称できる

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1月20日、ドナルド・トランプ大統領は就任初日にメキシコ湾を「アメリカ湾」と改称する大統領令に署名しました。 この措置は、米国の偉大さを称えることを目的としています。

この大統領令を受け、米国内のいくつかの機関や企業が対応を開始しました。米海洋大気局(NOAA)や国立気象局(NWS)は、公式文書やウェブサイト上での名称変更を進めており、NWSの報道官は「できるだけ迅速に更新する」と述べています。

また、グーグルは米国内のユーザーに対してグーグルマップ上で「アメリカ湾」と表示する対応を行い、メキシコのユーザーには「メキシコ湾」と表示する措置を取りました。

しかし、この改称は国内外で議論を呼び起こしています。AP通信は引き続き「メキシコ湾」の名称を使用する方針を示し、その結果、ホワイトハウスから取材制限を受ける事態となりました。

メキシコ政府もこの動きに反発しており、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は、1607年の地図を示しながら「なぜアメリカ合衆国を『メキシカン・アメリカ』と呼ばないのか?それも良い響きだ」と皮肉を述べています。

専門家の間では、国際的な地名の変更には各国の合意が必要であり、今回の改称が国際的に受け入れられるかは不透明だとの指摘があります。また、国内でも世論調査によれば、71%のアメリカ人がこの改称に反対しており、賛成は29%にとどまっています。

このように、トランプ大統領の「メキシコ湾」を「アメリカ湾」と改称する動きは、国内外で賛否両論を巻き起こしており、その行方は注視されています。

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https://agora-web.jp/archives/250213061048.html https://agora-web.jp/archives/250213061048.html Thu, 13 Feb 2025 06:34:42 +0000 Thu, 13 Feb 2025 06:34:42 +0000
現実解となるのか、ウクライナ問題 column トランプ氏とプーチン氏が1時間半にわたる電話会談を行い、ウクライナ問題を中心に議論したと報じられています。双方が戦争終結に向けた打開策を協議、ウクライナのNATO加盟は現実的ではないこと、ウクライナの領土を2014年前の

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トランプ氏とプーチン氏が1時間半にわたる電話会談を行い、ウクライナ問題を中心に議論したと報じられています。双方が戦争終結に向けた打開策を協議、ウクライナのNATO加盟は現実的ではないこと、ウクライナの領土を2014年前の国境、つまりロシアが初めにクリミアを略奪したところに戻すのもどうか、という線で議論が進んでいるようです。

トランプ大統領とプーチン大統領 2018年 クレムリンHPより

またプーチン氏はトランプ氏をモスクワに招聘し、トランプ氏は国務長官を中心とする停戦交渉の主要メンバーを決めました。

この現実解の可能性はこの戦争が始まって1年ぐらいたった頃にはささやかれていたものであり、私もそうなるのではないか、という趣旨のことをこのブログに以前、書き込んでおりました。

公平な目で見て、一方が力による侵略を行い、それを大国であるアメリカが後押しすることが世の中の常識に当てはまるのか、という議論は慎重に行わねばならないでしょう。例えば過去の戦争ではどちらか一方が明白に敗戦になった場合の講和条約では敗戦国が不利な条件下で締結というのはありますが、今回はウクライナがまだそのような宣言をしていない中でボクシングでいうTKOに近い終戦を前提にしており、当事国ではなく第三国により判定が下されようとする点はゼレンスキー大統領にとって忸怩たる思いでありましょう。

またアメリカの政権交代によりここまで戦局が変わってしまうのも恐ろしいのですが、個人的な意見としてはゼレンスキー氏の指導力にも限界があったような気がしてなりません。ましてや戦争を理由に同氏が大統領選を延期し続けたのは国民への信認確認を怠ったという点で外交上も不利に働いたと考えています。もしもゼレンスキー氏に絶対的自信と指導力が伴うと考えているなら大統領選はしかるべきに行うべきだったし、そこで再選されれば国際社会からの評価はまた別のものになっていたかもしれません。

ではお前は今回のトランプ/プーチン会談の講和に向けた方向性が正しいかと言われると非常に苦しいのです。つまり現実解ではありますが、ウクライナにとってほぼ得るものが何もない状態で終わるのです。言ってみれば完敗。私はこれが自国で起きたらどうなのだろうと想像するだけで胸が痛くなるのです。勝手に侵入してきて領土をごっそり取られ、残った国土を将来的に守る算段である安全保障が確保されていないのです。これを「当然の結果」とは誰も言えないと思います。

一方で膠着状態が続く戦争をいつまでも続けるわけにもいかない、これはトランプ氏の考え方に賛同をします。どういう形にせよ、止めさせる、これが必要でした。ただトランプ氏は同国の資源を手玉に将来ロシアの一部になるか、アメリカとディールをするかと迫るその姿はかつてイラク戦争で同国の石油資源を求めたブッシュ政権と重なるものを感じるのです。

プーチン氏から見れば「この戦争の引き際」のタイミングを計っていたことはあると思います。兵士や武器の損失は膨大なものであり、意地の張り合いのような状態においてトランプ氏が大統領になれば戦局は変わると分析していたと思われます。つまりずっと待っていた、これが正直なところでしょう。そしてディール好きのトランプ氏と何らかの発表していない取引材料があったと思われます。これは全く発表されていないので想像の域を出ませんが、この両名が純粋なディールをするとは思えないのです。

さて、仮に何らかの形で終戦し、講和が結ばれたとします。その時の世界地図を私は想像してみました。何が起きるでしょうか?いわゆる大国主義の復活ではないかと思うのです。つまりアメリカ、中国、ロシアであります。アメリカは中国と争っているのではないか、という意見もあると思うのですが、トランプ2.0になってそれは明白に変わっているとみています。一定の譲歩を感じるのです。トランプ1.0の時は中国がその敵対相手でした。今回はカナダ、メキシコ、パナマ、グリーンランドをめぐるデンマークが今のところ対象であり、今後、欧州各国もその相手になるのではないかとみています。その背景にトランプ氏はもしかすると中国とロシアの現状のポリシーと主権や姿勢を認める代わりに残りの国々についてアメリカ服従体制を取らせるのではないかという気がするのです。

トランプ氏が石破氏と会談した際、ほぼ外交問題にしては無風の状態で終わりました。さまざまな見方があると思いますが、一つには日米関係は確立されており、手がかからないと判断していたとしたらどうでしょうか?

異論はあると思いますが、絶対に違うということにもならないでしょう。

2025年は世界勢力地図が大きく塗り替わる第一歩になるのでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月13日の記事より転載させていただきました。

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https://agora-web.jp/archives/250212205558.html https://agora-web.jp/archives/250212205558.html Thu, 13 Feb 2025 03:00:54 +0000 Thu, 13 Feb 2025 01:08:38 +0000
「ザイム真理教本」と、「ノストラダムスの大予言」の多すぎる共通点 economy トンデモの駄法螺にはまる情弱な人たち みなさんはノストラダムスの大予言を覚えていますか? ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7の月人類滅亡の日 (ノン・ブック) Kindle版 五島勉 (著) 今読むとめっちゃお

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みなさんはノストラダムスの大予言を覚えていますか?

ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7の月人類滅亡の日 (ノン・ブック) Kindle版 五島勉 (著)

今読むとめっちゃおもろいです。ww

出版されたのは1973ですからもう50年も前です。子供の頃にテレビでもやっていて、学校でみんなが読んで「怖い怖い」と言っておりました。www

著者の五島 勉氏はノストラダムスの大予言で1999年の7月に人類は滅びるはずが翌年の6月に亡くなっています。

wikipediaによりますと、東北大学法学部卒業。大学在学中、小遣い稼ぎにポルノ小説を書いて雑誌に投稿し文筆家の道に入る。大学卒業後は『微笑』『女性自身』など女性週刊誌でアンカーマンとして活動。とあります。で、小説を書いたがなかずとばず。そこで

五島が祥伝社の伊賀弘三良に「10人の預言者を扱った企画」を持ち込んだところ、伊賀がノストラダムス1本に決定。これを受け、五島は1973年(昭和48年)に『ノストラダムスの大予言』(祥伝社)を執筆。この本は、オイルショックや公害問題の顕在化による社会不安を背景に250万部の大ベストセラーとなり、映画化もされた。

五島はこの本の印税により、石神井に土地を購入し、自宅を建てている[4]。五島はこれに先立つ1970年(昭和45年)から1971年(昭和46年)、創価学会の提灯本と評される[4]『池田大作という人 その素顔と愛と生き方』などを刊行していたため、『ノストラダムスの大予言』については、信者拡大のために終末論を必要としていた創価学会の思惑の反映と見なす向きがある一方[4]、創価学会が信者獲得に利用したことはなかったという宮崎哲弥の指摘もある。

オカルトと創価学会の提灯本を書いていた人ですが、ノストラダムスの大予言が大ヒットし大金持ちに。

しかし内容を精査するとまさしく駄法螺のトンデモ本でして・・・

架空の研究家の名前や創作と思われる詩や史料が登場していたり、いたずらに「1999年7の月」の詩を誇張したり、ノストラダムスの生涯に関する記述などにもかなりフィクションが含まれているなど、実際にはノストラダムスの予言解釈本というよりも、五島勉の小説という色合いが強いと指摘されている。

だが、と学会関係者が本格的に俎上に乗せるまでの長い間、そうした問題点はほとんど指摘されることがなく、ノストラダムスの予言を扱ったテレビ番組などでも五島の著書に沿う形で紹介されることがあったため、この著書による誤ったノストラダムス像が多くの人々に影響を与える結果となった。

いわゆる世紀末本で、その後のオウム真理教事件の遠因といわれているわけだが、1999年7月でなんだからわからないが怖いものが空から下りてきて地球は滅亡する。だってノストラダムスは大予言者で、こんな予言もあんな予言も当たったんだから・・・みたいに子供や情弱は恐れおののいたわけです。

vicnt/iStock

しかもテレビもオカルト番組でコレばかりを取り上げる。はっきりいうと小学生の半分以上は信じてました。私は「信じる?」と聞かれて「訳ないだろ」といってたのでハブかれがちでした。ww

このノストラダムスの大予言にはまった人たちの中には

どうせ1999年で死ぬから勉強なんて無駄 努力しても無意味 資産全部使って遊ぼう

みたいな人たちも多く出て、

デイリーポータルZより引用

ノストラダムスの大予言を振り返る

まさにこういう感じでしたね・・・・

高校の倫理の先生が、ノストラダムスの予言で来月、恐ろしいことが起きる予定だから、休職しますと宣言。三カ月後、何も起きなかったので、と復職していた。

ちびまる子ちゃんで読んでノストラダムスの大予言を知って、自分だけ生き残ってしまったらどうしようと怯えていました。

生き残った人に文明を伝えなくてはと謎の使命感に駆られ、タイムカプセルを作って庭に埋めたような気がします、中身はたぶん便箋やりぼんの付録です。(小学生だったので)1999年の時点では高校生になっていたので、まあ隕石でも落ちてくるのかな?程度にうっすら信じていました。

まあ、作家があたかも真実のように書いた駄法螺本が、社会に大きな影響を与えたのは確かです。しかしそれが言い影響なのかどうかは微妙。

いや、これ可視感あるわ

で、これです。先日亡くなられた森永さんの本。

ザイム真理教 Kindle版森永 卓郎 (著)

財務省=恐怖の大魔王

なわけです。すべての悪は財務省にあり、日本は財務省によってに日経平均3000円になって滅びると。ww

森永卓郎氏の略歴を見ますと

1980年3月、東京大学経済学部卒業後の同年4月 日本専売公社(現在の日本たばこ産業株式会社(JT))に入社。へゴースモーカーで知られ、タバコは体にいいくらいまでいっていましたよね。がんで亡くなられましたけどね。

1984年、経済企画庁に出向し、労働力及び人的能力担当計画官付委嘱調査員[7]。森永はバブル時代の収入が少なかったと自身で回顧しており、この頃から雑誌への寄稿を開始。1986年、JTに帰任し、製造本部製造企画課に配属。同年に三井情報開発総合研究所へ出向。1988年1月末付でJTを退職。

このあと三和総合研究所に移籍。三和総合研究所がUFJ総合研究所になりこのあたりからテレビに出始めてタレントになります。つまり経済学者でもなんでもなくタレントです。

2005年に三菱UFJリサーチ&コンサルティングとなってから、同社からメディア取材時の稟議書提出を求められ、取材が1日10本ペースだったため、稟議をあげる手間に嫌気が差し、2004年から、父の京一が毎日新聞社退職後にかつて教鞭を取っていた[注 4][10]獨協大学の特任教授に就任し[4]、その後、特任で契約していた同大学との教員契約を優先し、2006年4月に経済学部教授に就任[8]。

ただし、この時期も並行して2005年4月から同社客員研究員を2007年3月まで担当した。以後、大学教授の肩書きでタレント活動を行う。

お金に対しての執着で知られており、「ケチダヌキ」と有吉にあだ名を付けられたことでも知られてますが、特に晩年はYouTubeで集金するためかめちゃくちゃ言うようになりました。

日航機墜落は自衛隊の仕業で証拠隠滅のために火炎放射器で遺体を焼き払った 日本株は3000円まで下がるから投資などするなとずっと前から言っておきながら死ぬ間際に「株を全部売った」(やってるじゃん!!!) タバコは健康に良いまで言っていた。

さらにはテレビで

「外国が侵略してきたらあっさり降伏してその国になればいい」 「侵略されたら今の兵器なんて体力いらないから私でもミサイルくらい打てる」

と、でまかせを言いまくる。

本人が情弱だったのは全くエビデンスのないインチキ治療に大金を使ったことでもわかる。

エンターテイメントと考えればいい人です!!

エンターテイメントをマジで信じるからバカなんですよ。

駄法螺を信じて不安と不満を撒き散らす人たち

問題は、こんな駄法螺のデマ教祖の言うことを信じて財務省解体とかいうバカの存在です。森永さんはエンターテイメントで言ってるんですよ。財務省がなにをしているかも知らない連中が解体を叫んで、解体した後にどうするかもわかってない。ww

日本の財政をなんとかしようとか日本を立てなおそうと物凄く勉強して官僚になった人たちはバンバン病んで辞めている。東大卒は官僚になっても国民からまったくれ理解されないと意欲を無くしてどんどんレベルが下がっています。

止まらない官僚離れ打開のカギは“中途”の獲得?

天下りで税金がめちゃくちゃ使われていてこれを無くしたら社会保障なんて削らなくていいという数字の桁が分からない皆さん。国会ごと無くしたって医療関係者総数で割ったら1人1万円ですよ。

天下りはすべてここで公開されているんですが、どこに税金が湯水みたいに使われていますか? 指摘してください。もちろん中にはいるでしょうが桁が違うんですよ。桁が。

国家公務員法第106条の25第2項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の公表について

まあそんなわけで、いまさらノストラダムスでも読んで、あって似ている!!と少しでも思ったらカルト信仰から抜け出ることができるかもしれません。ザイム真理教じゃなくてMMT真理教(エンタメ枠)なのです。

編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2025年2月12日の記事より転載させていただきました。

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https://agora-web.jp/archives/250212210824.html https://agora-web.jp/archives/250212210824.html Thu, 13 Feb 2025 02:55:17 +0000 Wed, 12 Feb 2025 21:17:04 +0000
独週刊誌の日本発「衝撃的なルポ記事」:刑務所で高齢女性の受刑者が増加 society 独週刊誌シュピーゲル(2025年2月1日号)には日本から衝撃的なルポ記事が掲載されていた。日本の刑務所で高齢者の女性囚人が増えているというのだ。それも麺やコーラなど食料品やクロスワードパズルの本などをスーパーや店舗から万

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独週刊誌シュピーゲル(2025年2月1日号)には日本から衝撃的なルポ記事が掲載されていた。日本の刑務所で高齢者の女性囚人が増えているというのだ。それも麺やコーラなど食料品やクロスワードパズルの本などをスーパーや店舗から万引きした窃盗犯罪が理由だ。日本の読者ならば既にご存じの事かもしれないが、海外に住んでいる当方にとってその話は初耳であり、内容は衝撃的だったので驚くというより、ショックを受けた。

高齢者の女性囚人ルポを掲載したシュピーゲル誌

シュピーゲル誌記者は栃木と岩国の女性刑務所をルポしている。刑務所にいる女性囚人は70歳、80歳代の高齢者が多い。記者は「なぜ高齢の女性がそれも貧困から止むを得ずといった理由でもなく、万引きなどの犯罪をするのだろうか」というテーマで女性刑務所を訪問して3ページ余りのルポ記事をまとめた。

会見した女性囚人は記者の訪問を喜び、自身の犯罪を喜々として話す。まるで冒険談だ。曰く「最初の万引きの時は緊張した。警備担当の人に捕まって警察署に行き、その後刑務所に留置された。刑務所では3食付きでフロも定期的に入れる。話し相手には事欠かない」という。

女性囚人をケアする刑務所の係員は「ここは高齢者ホームのようだ」という、そして「自分は囚人を監視する警備員というより、高齢者の女性を世話する看護人のようだ」と説明していた。多くの女性囚人は万引きで捕まってきた。そして刑務所では他の囚人との出会いを楽しむ。シュピーゲル誌記者と話した女性囚人は85歳で、刑務所暮らしは今回で3回目だという。

多くの高齢の女性囚人は以前は自宅で一人住まいだった人が多い。誰とも話さない日々が続いた。その意味で孤独が彼女たちを万引きに追い込み、刑務所では「生き生きとした日々」を送ることができるようになったというのだ。女性囚人の3人に一人は年金受給年齢者だ。20年前はその割合は10%に過ぎなかったという。岩国刑務所では最年長者の女性囚人は95歳だ。

独誌のルポから、少子高齢化、家庭の崩壊、高齢者の孤独といった日本社会の現実が浮かび上がる。もちろん、日本だけではない。少子化では隣国の韓国はもっと深刻だ。家庭の崩壊と言えば、欧米社会では至る所で見られる現象だ。ただ、高齢の女性囚人の増加現象では先進諸国の中でも日本はパイオニア的な立場かもしれない。

シュピーゲル誌は数年前、日本の若者にみられる「引きこもり」についても特集ルポを掲載していた。東京発のシュピーゲル誌は病む日本の社会的現象を鋭く掘り下げた記事が多い。今回の高齢者女性囚人ルポもその一つだろう。

少子化で、子供の数は年々少なくなってきている一方、医療技術が進んで高齢者は長生きできるようになった。その結果、高齢となって一人で住む人が多くなった。話す相手がいない生活が続く。そのような中で、高齢の女性が万引きなどの犯罪を犯すことで刑務所生活が始まる。そこでこれまで忘れていた生き生きした会話や人との交流が始まる、といったことだろうか。一人の女性囚人が「自分は今、家にいる」と語った。その女性囚人の言葉、「Ichbinzu Hause」がルポのタイトルとなっている。

ちなみに、孤独は人の魂を蝕むという。英国では2018年、メイ政権(当時)が孤独問題を扱う「孤独問題担当相」を任命し、欧州で先駆けて孤独に悩む国民のケアに取り組んでいる。当方が住むオーストリアでは老人と学生が共同生活する実験プロジェクトが実施中だ。老人たちは学生たちからその活力、エネルギーを受け、学生は老人たちから人生の経験を学ぶといった試みだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年2月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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https://agora-web.jp/archives/250212205513.html https://agora-web.jp/archives/250212205513.html Thu, 13 Feb 2025 02:50:08 +0000 Thu, 13 Feb 2025 02:11:20 +0000
公益通報者保護法指針検討会座長の髙巖『通報者探索は絶対許されない』等と虚偽回答、消費者庁とズレ:不毛な喧騒の『犯人』が見つかる column 不毛な喧騒の『犯人』が見つかる 兵庫県百条委員会で指針検討会座長の髙巖特任教授への質問 兵庫県議会/審議事項 1月27日付の兵庫県議会文書問題調査特別委員会(百条委員会)の資料がUPされ、その中に【公益通報者保護法に基づ

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不毛な喧騒の『犯人』が見つかる

兵庫県百条委員会で指針検討会座長の髙巖特任教授への質問

1月27日付の兵庫県議会文書問題調査特別委員会(百条委員会)の資料がUPされ、その中に【公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会 | 消費者庁】の座長だった髙巖(現:明治大学経営学部特任教授)への個別の質問とその回答があります。

指針検討会の当初の議論では、「指針の対象となる通報は「事業者内部」への公益通報に限られており、その他の通報は本指針の対象とならない」と書いていたにもかかわらず、法及び指針において限定している範囲をその「指針の解説」において拡大解釈した経緯・理由を問うものです。

第3回までの資料には、この※欄にあるような記述がありました。

この事は私が昨年9月に指摘しています。

髙巖『説明が冗長になるから』⇒拡大解釈した理由になっていない

髙巖氏の回答は上掲画像の通りですが、要約すれば『1号通報に関していたことが2号・3号通報についても参照できる。説明が冗長になるから省いた』というものです。

この回答は、法及び指針において限定している範囲をその「指針の解説」において拡大解釈した経緯・理由について、まったく答えていません。

それに、この回答は消費者庁の回答とズレています。

消費者庁の見解は、公益通報者保護法11条2項(指針について書いている条文)の対象は、内部通報に限らない、というものだからです。

「指針の解説」のレベルで拡大解釈をしたのではなく、最初から法令上の文言の記述により、義務の内容には外部通報が行われた例における事業者側の義務も含まれている、という見解でした。しかも、「体制整備義務」とは別の「その他の措置」として外部通報時の探索禁止義務等について整理しています。

他方で、髙巖氏は、「体制整備義務」としか書いてません。

この消費者庁の見解には重大な陥穽があるということは以下で詳細に書いています。

髙巖『2号3号通報経由で事業者に入って来た場合』⇒元県民局長事案は非該当

そのほか、髙巖氏は『2号3号通報経由で事業者に入って来た場合』には、体制整備義務があると回答文で主張しています。

が、兵庫県の事案は、そんなものではありません。

上掲図のように、3月12日付文書が知事側に文書が「もたらされた」のは、民間人を通じてでした。(4月に内部公益通報されたものとは異なる

そのため、少なくとも「2号3号通報経由」ではないということになりますから、髙巖氏の主張は本事案においては的外れです。

次に、兵庫県警によると、当該文書は郵送で文書が届いた(匿名)ということですが、県警はこれを公益通報としては扱わず、単なる情報提供として扱ったにすぎません。つまりは「文書の内容」が「通報」要件を充たさないということです。

もっと言えば、「県民局長から郵送されて県警に届いたのか?」という、「物理的な通報行為」の存在も、今となっては証明することができません。公用PC内の元県民局長作成と思われるデータに郵送先一覧があったという情報もありますが、実際に郵送をした人物が同一と言える保証はありません。

そして、髙巖氏の回答には、彼の立場や態度についての致命的なものがありました。

髙巖『通報者探索は絶対に許されない』⇒指針に探索が必要な場合の例外が記述

髙巖氏は『通報者探索は絶対に許されない』と回答しました。

しかし、指針には探索が必要な例外が記述されています。

公益通報者保護法と制度の概要 | 消費者庁

事業者の労働者及び役員等が、公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合を除いて、通報者の探索を行うことを防ぐための措置をとる

髙巖氏の回答は、これに明確に反しています。

他にも、髙巖氏の回答は3月12日付文書について「内容がここまで具体的であれば」などと評価しています。日付や行為主体が書かれていないあの内容で「具体的」などと評することはできません。法的な文書を見たことがないのでしょうか?

まとめ:百条委員会の質問により『通報者探索の喧騒』の犯人が見つかった

兵庫県議会の百条委員会はよくやったと思います。「通報者探索」に関する不毛な喧噪の『犯人』が一人、見つかったということになります。

もっとも、この通報者探索の禁止原則は、あくまでも「公益通報」が存在した場合の話です。3月12日付文書では問題になりません。本件の巷の言論空間は『斎藤元彦知事が探索禁止に反する違法な行為をした』という偽の論点にミスディレクションされていますが、それは本件の重要論点ではありません。

消費者庁所管の法律ということは、一般国民の多くが参照するということ。

ですから、逐条解説などがHP上で詳細に公開されています。

そのような法令の規定について、一部の者たちによる法解釈・複雑な解釈をしないと理解できないものであるというのは、甚だ不適切でしょう。単に省庁の見解を引っ張って終わるのは意味が無い。

仮に消費者庁の法解釈が正しいということでも、このような問題提起が可能。

この法11条2項とその法定指針に関する議論は、その方向ですることに意義がある。

編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2025年2月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。

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https://agora-web.jp/archives/250212213209.html https://agora-web.jp/archives/250212213209.html Thu, 13 Feb 2025 02:45:56 +0000 Wed, 12 Feb 2025 21:38:06 +0000
現役世代の医療費負担削減に向けて「市販風邪薬の保険除外」は実現可能か? column 日本維新の会の青柳仁士政調会長は7日、自民党の小野寺五典政調会長、公明党の岡本三成政調会長と国会内で会談しました。青柳氏は、医療費総額を削減するための改革案として、市販で購入できる風邪薬の保険適用を除外することなどを提案

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日本維新の会の青柳仁士政調会長は7日、自民党の小野寺五典政調会長、公明党の岡本三成政調会長と国会内で会談しました。青柳氏は、医療費総額を削減するための改革案として、市販で購入できる風邪薬の保険適用を除外することなどを提案し、話題となりました。

診察を受けた後に市販薬と同様の成分を含む薬を処方され、それによって保険適用により安く購入できる仕組みが現役世代への社会保険料の負担を増大させています。

これに対し、小野寺氏は記者団に「重く受け止める」と述べ、両者は来週にも再び会談する予定です。

takasuu/iStock

湿布などのOTC類似薬の保険適用除外に対し、日本医師会は強く反対の姿勢を示しています。同会は、高コストであっても医師の診察を経るべきだと主張しており、その負担は現役世代に広く及ぶ可能性があります。

しかし、OTC薬と湿布の保険適用を除外するだけでは、年間4兆円の削減には届かず、削減額は約4000億円程度にとどまるとされています。

※OTCとは、英語の”Over The Counter”(カウンター越しの)の略であり、薬局などのカウンター越しに販売されることに由来しています。OTC薬は、医師の処方箋がなくても購入できる医薬品のことを指します。

それでも、これによって薬事行政の障壁を取り除くことができれば、さらに大規模な無駄の削減につながる可能性があります。

医療改革の大きな障害となっているのは、日本医師会とそれに同調する厚生労働省・高齢者・国会議員であるという指摘もあります。

日本医師会がOTC薬の保険適用除外に強く反対する際の主張は、「命を守る」というスローガンに基づいています。

しかし、OTC薬を医師の診察を通じて処方し、それをOTC薬よりも安く提供する仕組みは、持続不可能との見方も広がっています。

一方で、保険適用除外に賛成する意見の中には、市販の風邪薬には不要な成分が多く含まれているため、薬剤師の判断によって医療用医薬品を販売できるようにすべきとの声もあります。なお、零売(れいばい)とは、病院を受診せずに一部の医療用医薬品を購入できる制度を指します。

風邪は安静にして市販薬を服用すれば回復するケースが多いため、保険制度のもとで社会全体の負担とすることは適切ではないという意見もあります。

また、日本医師会は、国債発行によって財源を確保すれば医療費の赤字は問題にならないとの立場をとっているようです。

しかし、こうした問題の詳細について十分に理解していない人も依然として多いようです。

他人のお金で賄われる制度であるため、必要以上に薬を求めたり、不要な薬を受け取ってしまうケースも多く、結果として非効率な医療費の増加につながっています。

そもそも「風邪に効く薬」が本当に存在するのかについてわれわれは改めて考える必要があります。

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https://agora-web.jp/archives/250213014845.html https://agora-web.jp/archives/250213014845.html Thu, 13 Feb 2025 02:40:11 +0000 Thu, 13 Feb 2025 03:17:30 +0000
教育無償化は「嘘」だ! column 国際政治・国内政治・政治思想等々について、政治学者の立場から分析します。情報過多の中で、いかに本質を見抜き情報の価値を高められるか。 今回は「教育無償化は「嘘」だ!」をお送りいたします。 ■ 政治学者・岩田温氏のYouT

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国際政治・国内政治・政治思想等々について、政治学者の立場から分析します。情報過多の中で、いかに本質を見抜き情報の価値を高められるか。

今回は「教育無償化は「嘘」だ!」をお送りいたします。

政治学者・岩田温氏のYouTubeチャンネル「岩田温チャンネル」。チャンネル登録をお願いします。

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https://agora-web.jp/archives/250213020731.html https://agora-web.jp/archives/250213020731.html Thu, 13 Feb 2025 02:35:08 +0000 Thu, 13 Feb 2025 02:07:59 +0000
与野党の「減税ポピュリズム」に警告するIMF対日審査勧告 column IMF(国際通貨基金)の対日勧告は毎年甘く、あまり意外性がない。これは日本が第2位の出資国で、財務省から出向者がいるので、日本政府の意向に逆らえないからだ。アベノミクスには一貫して好意的だったが、今年はややトーンが変わっ

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IMF(国際通貨基金)の対日勧告は毎年甘く、あまり意外性がない。これは日本が第2位の出資国で、財務省から出向者がいるので、日本政府の意向に逆らえないからだ。アベノミクスには一貫して好意的だったが、今年はややトーンが変わった。

特に石破政権が少数与党に転落し、与野党の減税ポピュリズムに弱腰になっていることを警告している。他方で長期金利が上昇し、外資系ファンドが日本国債市場に参加してきたため、国債市場や外為市場は不安定化している。

IMF(国際通貨基金)が日本経済に関する2025年の「第4条協議」の結果を発表し、日本の経済状況、成長見通し、リスク要因、および政策の優先事項について評価している。

日本経済の現状と見通し インフレと賃金の動向: 30年間ほぼゼロだったインフレ率が上昇し、日銀の目標2%を超える状態が続いている。賃金上昇立は高いが、実質賃金は下がっている。 経済成長の見通し: 2024年前半は供給の混乱で成長が縮小したが、後半に回復。2025年には実質賃金の伸びによる個人消費増加で成長が加速すると予測。 リスク要因: 世界経済の減速、地政学的な緊張、食料・エネルギー価格の変動。国内では、実質賃金の伸び悩み、公的債務の増加がリスク要因。 財政政策 2030年までに高齢化による医療・介護費の増加で公的債務が再び増加。 対策としてエネルギー補助金の廃止、資産課税の見直し、消費税率の引き上げを提案。 与野党協議で野党側から大型の所得減税など歳出増をともなう要求が多く、少数与党になった石破政権が抵抗できない。 金融政策と為替政策 日銀の金融緩和は適切だが、慎重な政策金利の引き上げが必要。 市場の安定を考慮しながら国債の保有残高を減らすべき。 労働市場と構造改革 高齢者の労働参加を促す年金制度の見直し。 AI時代に適応するための職業訓練プログラムの強化。 外国人労働者の受け入れ拡大による労働力不足対策。 産業政策と環境政策 半導体・AI産業への支援やグリーントランスフォーメーション推進。 産業支援は最小限に抑え、ターゲットを絞るべき。 カーボンプライシングの導入で環境対策の実効性を高める。

金利上昇が続くと何が起こるか?

以下はチャットGPTの意見。

国債の利払い負担が増大 日本はGDPの約240%の公的債務を抱え、その多くは国債として発行されている。 IMFの試算では、2030年までに国債の利払い負担が倍増する可能性がある。 金利が上昇すると国債価格は下落し、金融機関に損失が発生。 市場の信頼が低下すると、日本国債の売りが加速し、金利がさらに上昇するリスクがある。 円高圧力の強まり 金利上昇で海外投資家が日本円資産を買いやすくなり、円高が進む可能性がある。 円高になると輸出企業の利益が減少し、経済成長が鈍化する。

政府や日銀はどう対応すべきか?

財政健全化と経済成長の促進 ✅ 不要な補助金の削減(特にエネルギー補助金)。 ✅ 社会保障支出の見直し(高齢者向け給付の削減)。 ✅ 資産課税の見直し、消費税率の引き上げなどの税制改革。 ✅ 解雇の金銭解決の解禁などの規制改革。 金融政策の慎重な調整 ✅ 政策金利のゆるやかな引き上げ。 ✅ 指標を物価目標から中立金利(自然利子率+予想インフレ率)に移行。 ✅ イールドカーブ・コントロール(YCC)の見直し。 金融市場の安定維持 ✅ 銀行の健全性を監視し、地方銀行の統合・再編を促進。 ✅ 金利急騰時には短期資金供給を行い、市場の混乱を防ぐ。 ✅ 外国人投資家の国債保有動向を注視し、円債市場の安定化を図る。 為替市場への対応 ✅ 円高リスクに備え、輸出産業の競争力を維持。 ✅ 海外投資家との対話を強化し、日本市場の魅力を高める。

全体としては、依然として日銀には甘いが、石破政権にはきびしい。特に与野党の政策協議で野党のバラマキ要求に政権が弱腰になっていることを警告し、このままでは2030年までに利払いが倍増すると警告している。それは結局、国民の負担増になる。

日銀の植田総裁には好意的だが、黒田総裁の膨張させたバランスシートを正常化するには時間がかかる。今まで日本の国債市場は日銀の買い支えによって国内でほぼ完結していたが、金利上昇で外資が参入してきた。

金融村の空気を読まない海外ファンドが日本国債を空売りすると暴落し、金融システムが不安定化するなど不測の事態も考えられる。日銀の出口戦略は、むずかしい舵取りを迫られよう。

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https://agora-web.jp/archives/250213005311.html https://agora-web.jp/archives/250213005311.html Thu, 13 Feb 2025 02:24:00 +0000 Thu, 13 Feb 2025 03:08:44 +0000
「現状維持」は想像ほど簡単ではない economy 黒坂岳央です。 「現状維持は後退だ」という意見をよく見る。自分自身も強くこれを認識しており、日々仕事をする中で挑戦して失敗を繰り返しながらブレイクスルーの降臨を待つスタイルでいる。 先日、人と話をする中で「自分なんて挑戦

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黒坂岳央です。

「現状維持は後退だ」という意見をよく見る。自分自身も強くこれを認識しており、日々仕事をする中で挑戦して失敗を繰り返しながらブレイクスルーの降臨を待つスタイルでいる。

先日、人と話をする中で「自分なんて挑戦どころか、せいぜい現状維持が御の字ですよ」と冷笑気味に返されたことがあった。この人は「現状維持の難しさを過小評価している」と感じた。そしておそらくそれはこの人物だけではない。

実は「現状維持」は思っているより簡単ではないのだ。

metamorworks/iStock

収入や資産の現状維持

まずは収入や資産の現状維持を考察したい。

直近、我が国はインフレ経済下にあり年間約3%の物価高となっている。もちろん、物価によって値上がり幅が全く異なるが、個別事象を取り上げると収集がつかなくなるので、一旦3%という数字を使いたい。

つまり、このような状況下においての現状維持とは「昨年より収入、及び資産が3%以上増えていること」を意味する。だが、これを実現できている人はかなり少数派ではないだろうか。

年収500万円の人がインフレに負けないためには、最低3%、つまり1年後に515万円になっておく必要がある。また、資産が1000万円ある人は1030万円に増えていなければ、「現状維持」にならない。

過去30年間はデフレ経済だったので、年収が変わらなければ「現状維持に成功」であった。しかし、これからは真逆の経済構造となるので年収や資産が1年後も同じなら「後退」を意味する。

もちろん、毎年3%ずつ昇給するのは現実的ではない。3年間かけて難関資格を取得、その結果3年後に年収が一気に100万円アップしたものの、学習期間中は年収増はなかった。このような場合なら、3年後の成長率を投資期間で割り算して考えるのだ。

いずれにせよ、「現状維持ですら」いかに難しいかがわかるはずだ。

健康の現状維持

人間は大人になると、何もしなければ毎年1%ずつ筋肉が減少していく。可動域も狭まり、肩が上げられなくなったり、体力が落ちて遠出が億劫になっていくのが自然である。

もちろん、自然老化には決して勝つことはできないが、筋肉量や体力など健康はある程度努力でカバーすることは十分可能である。筆者は去年から一年間、パーソナルトレーニングジムに通って飛躍的に体力と筋力が増加した実感があるので、40代前半からでも十分効果は期待できる。

健康における現状維持となると、毎日8000歩程度歩く、筋トレをするという努力の継続が必須となる。スポーツジムの継続率に関する統計は地域や調査機関によって異なるが、ジム通いを1年間継続できる人は約4%程度と言われている。

コロナ禍以降、街中でジムを見かけるようになって繁盛しているように見えるが、1年後も頑張っているのはたったの4%。宅トレなどのスイッチした可能性は否定できないものの、残りの大部分の人は筋肉量を維持する現状維持に敗北したということになる。

これだけ街中にジムがあり、健康診断でNOを突きつけられ、運動の重要性が説かれていても、筋肉や体力の現状維持をほとんどの人はできないのだ。

人間関係の現状維持

最後は人間関係の現状維持、これも簡単なことではない。

自分が髪を切りに行っている美容院の店長さんから聞かされた話で印象に残ったのが「やっぱりオッサン同士、古い友人で酒のんでバカ話するのが一番楽しいですね」というものだった。彼が言う古い友人とは、幼稚園、小学生から高校までの本当に幅広い友人である。

この話を聞いて「自分はまったく現状維持ができなかったのだな」と少し落ち込んでしまった。

自分の希望としては他愛もない昔話で1-2時間盛り上がれば最高だと考えるが、久しぶりに会ってもお互いに話が噛み合わなくなってしまうことが多い。当然なのだが、お互いをつなぐ共通点が年を取るごとにドンドン減っていく。

子持ちは育児の話題で、経営者は経営者同士、サラリーマンはサラリーマン同士で盛り上がる。

だが、年齢を重ねるとお互いの立場も変わってしまうのでかつて仲が良かった相手とも合わなくなるということは普通に起きる。

そうすることで友達や何でも話せる相手はいなくなってしまう。実際、自分も今、本音で何でも話し合えるような相手が家族以外にはいないので、現状維持に失敗したということになる。

「現状維持はよくないこと」というイメージを持つ人は多いが、実際のところ様々な面で見ても現状維持そのものも簡単ではない。人間は年を取るし、時代は進んでいるので現状維持となる前進ハードルを超えたいものである。

 

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https://agora-web.jp/archives/250212001657.html https://agora-web.jp/archives/250212001657.html Wed, 12 Feb 2025 22:00:49 +0000 Wed, 12 Feb 2025 09:49:28 +0000
日本の主要メディアがトランプ大統領の虚像を広める(古森 義久) column 顧問・麗澤大学特別教授 古森 義久 アメリカのドナルド・トランプ大統領について日本の主要メディアや識者はどこまで間違った情報を垂れ流し続けるのか。トランプ・石破両氏の初の日米首脳会談では朝日新聞などが甲高い叫び声ふうに喧

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The White Houseより

顧問・麗澤大学特別教授 古森 義久

アメリカのドナルド・トランプ大統領について日本の主要メディアや識者はどこまで間違った情報を垂れ流し続けるのか。トランプ・石破両氏の初の日米首脳会談では朝日新聞などが甲高い叫び声ふうに喧伝してきた「トランプからの圧力、要求、非難」はツユほども出なかった。代わりにトランプ大統領が強調したのは日米同盟の堅持の重要性、日本への信頼と友好だった。

そもそもトランプ氏の選挙での圧勝さえも錯誤した日本側の主要メディアと識者たち、重要な同盟国の政治情勢の誤認をどこまで続けるのか。

石破茂首相とドナルド・トランプ大統領の2月7日のワシントンでの首脳会談は日米同盟の堅持や日米友好を合意し合う形で、きわめて円満に終始した。とくに顕著だったのはトランプ大統領の日本への友好、理解、賛辞と中国などの現状変更勢力に対抗する日米の強固な連帯だった。この日米連帯はトランプ大統領側から提示され、石破首相も同意した「日米関係の黄金時代」という標語に象徴された。

ところがこの会談の事前には日本側ではトランプ大統領が日本に対して防衛費のさらなる増額の要求、日米貿易不均衡の日本側の是正としての市場開放、日本を標的とする新たな関税措置など、要求や圧力をぶつけてくる、という予測が多かった。その姿勢を不当だとか、横暴だとかする批判が絶えなかった。

そうしたトランプ批判の先頭に立ったのは朝日新聞だといえる。そもそも朝日新聞はアメリカの大統領選挙戦中からトランプ非難、民主党のカマラ・ハリス賞賛の論調が顕著だった。だからトランプ氏の圧勝という現実の選挙結果も予測を大きく外す結果となり、その結果には慌てたように、新たな批判を込めてトランプ叩き報道を続けてきた。

朝日新聞の今回の日米首脳会談に関する予測の錯誤はその会談の直前の記事でも明白だった。朝日新聞2月8日付朝刊の大きな記事は「トランプ氏 2期目の要求は」という見出しで、ワシントン発、清宮涼、榊原謙という両記者によって書かれていた。前文には以下の記述があった。

「トランプ大統領は1期目で、安全保障と通商問題をリンクさせ、日本に圧力をかけた。再び様々な要求をすることが懸念される」

そして記事の末尾には以下の記述があった。

「トランプ大統領は相手の足元を見ながらの交渉スタイルに今後4年間、日本は再び悩まされることになりそうだ」

だが実際の日米首脳会談ではトランプ大統領は石破首相に対し、なんの要求もせず、圧力もかけなかった。その逆に日本との連帯、日本の重視、共同防衛の増強、尖閣諸島の防衛など、協力、友好、団結のみを強調した。そして日本への礼賛を惜しまなかった。

日米安保条約に関しては「日米同盟はインド太平洋の安全保障の礎である」とも宣言した。礎(いしずえ)とは英語ではCornerstoneという言葉である。日米同盟こそがアメリカのアジア全体での礎石、土台なのだという意味だった。そして繰り返すが、トランプ大統領は日本に防衛費の増額を求めるというような言葉は一切、口にしなかった。つまり朝日新聞の予測とはまったく異なる対応だったのだ。

朝日新聞はこの記事でも、また他の最近の記事でもトランプ大統領が1期目に日本に対して多数、多様な要求をぶつけてきたと書き続ける。

しかし実際にはトランプ氏は2016年の選挙キャンペーン中にこそ、日本について日米同盟の片務性への批判などを述べたが、実際に大統領に就任してからの4年間は防衛でも貿易でも公式の場で日本に要求や圧力、抗議、批判と呼べる言辞を発したことはないのである。全面的な信頼を寄せた安倍晋三氏が日本の首相だったことも大きかったが、トランプ大統領はそもそも1期目から日本との絆を最重視していたのだ。その姿勢は2期目も変わらないといえる。

朝日新聞はその1期目のトランプ大統領の対日姿勢に関しても大きな誤報をしていた。2017年2月10日のトランプ・安倍首脳会談ではトランプ大統領が自動車や為替の問題を持ち出して、日本を批判し、譲歩を迫ってくるという報道をさんざんにしていたのだ。だがそんな批判や提起はなかった。まさに歴史は繰り返す、の誤報だった。

朝日新聞の同年2月11日の朝刊第1面には「車貿易や為替 焦点」という大きな見出しの記事が載った。本文の冒頭は以下のようだった。

「(日米首脳会談で)トランプ氏は自動車貿易を重要課題とする構えで、二国間の貿易協定や為替政策に言及する可能性もある。通商・金融分野をめぐり、どのようなやりとりが交わされるかが焦点となりそうだ」

その前日の2月10日夕刊は、もっと明確だった。間違った予測を見出しにした記事だった。

「自動車、重要議題に」

こんな見出しの記事の本文は冒頭で以下のように述べていた。

「トランプ米大統領が10日の安倍晋三首相との日米首脳会談で、自動車貿易をめぐる協議を重要議題に位置づけていることがわかった」

しかし現実の日米首脳会談では自動車問題も為替問題も出なかったのだ。この事実は朝日新聞も首脳会談直後の2月12日付朝刊の記事ではっきりと認めていた。

「トランプ氏が問題視していた日本の自動車貿易や為替政策も取り上げられなかった」

朝日新聞のトランプ報道にはこんな前歴もあるのだ。これはやはり誤報と呼ぶしかないだろう。その同じ誤りを8年後にまた繰り返しているのだ。誤りというよりも意図的なゆがめと見た方が妥当かもしれない。

アメリカのトランプ支持層はトランプ氏に対してとにかく憎しみや嫌悪の感情に流され、客観的な政治判断のできない人たちの風潮を「反トランプ錯乱症」(TDS)と呼んでいる。トランプ氏の言動や政策はとにかく悪いのだと決めつけるような朝日新聞の論調もそんな錯乱症といえるのかもしれない。

古森 義久(Komori  Yoshihisa) 1963年、慶應義塾大学卒業後、毎日新聞入社。1972年から南ベトナムのサイゴン特派員。1975年、サイゴン支局長。1976年、ワシントン特派員。1987年、毎日新聞を退社し、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員などを歴任。現在、JFSS顧問。産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。著書に『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす』『米中激突と日本の針路』ほか多数。

編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2025年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。

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https://agora-web.jp/archives/250212071231.html https://agora-web.jp/archives/250212071231.html Wed, 12 Feb 2025 21:50:59 +0000 Wed, 12 Feb 2025 10:25:53 +0000
国家主導の詐欺商品 「厚生年金改革入門」 column 厚生年金は、私たちの老後を支える重要な公的年金制度の一つです。 しかし、少子高齢化や経済状況の変化に伴い、その仕組みにはさまざまな問題が浮き彫りになっています。 この記事では、厚生年金の基本的な仕組みをおさらいしながら、

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厚生年金は、私たちの老後を支える重要な公的年金制度の一つです。

しかし、少子高齢化や経済状況の変化に伴い、その仕組みにはさまざまな問題が浮き彫りになっています。

この記事では、厚生年金の基本的な仕組みをおさらいしながら、現在抱える問題点について分かりやすく解説していきます。これを機に、私たち一人ひとりが年金制度について考えるきっかけになれば幸いです。

Murasaki
Murasaki

はじめまして。 解説人のMurasakiだ。

クソニートくん
クソニートくん

どうも〜!万年ニートのクソ野郎です! 「働いたら負け!!!!」

当ブログでは、(普段は)論文を使った解説で少しでも人生を幸せにするお手伝いをしています。

ダイエット、自己実現、資産形成、恋愛、健康、美容等 さまざまなジャンルを扱っています。

他にも、どう見ても維持できない社会保障に関して問題意識を持っているので、今回の記事のように論文とか関係なしに本気の解説をすることもあります。

今回の記事は厚生年金に焦点を当てていますが、その大元である「社会保障」に関する記事は以下。

なぜあなたの手取りは増えないか? 社会保障改革入門
「給料が上がっているのに、なぜか手取りが増えない」「働いて昇給しても、実際に自由に使えるお金が増えた気がしない」 この疑問は、多くの働く世代に限らず アルバイトの学生もパート主婦も多くの人が抱えている…

今のままだと、老人の年金とか社会保障で日本は沈没すると思っているので、問題意識のある方に実際の問題点を列挙しながら 目線を揃えることができればと思っています。

また、この記事は前提知識が一切なくても読めるように配慮しました。もし、質問等あればコメント欄を用意しているので、気軽にお声がけ下さい!

厚生年金とは?簡単におさらい

まず、厚生年金の概要を簡単に説明します。

厚生年金は、会社員や公務員などが加入する公的年金制度で、基礎年金(国民年金)に上乗せして給付が受けられる仕組みです。

給与に応じた保険料を労使で折半して納めることで、老後の生活を支える年金が給付されます。

厚生年金の基本的なポイント:

給与や賞与に応じた保険料を納める仕組み(所得比例)。 国民年金の上乗せ部分として、老後の収入の柱となる。 会社員や公務員などが対象(自営業者などは国民年金のみ)。
クソニートくん
クソニートくん

これの何が問題なの? 年取って餓4はしたくないよ。

Murasaki
Murasaki

よし、ここからは厚生年金の問題点に絞って解説をしていこう。

一見すると安定した仕組みに思えますが、社会の変化に伴い、いくつかの大きな課題が浮き彫りになっています。

厚生年金の主な問題点

これまで厚生年金とは何か、基本的なポイントを紹介してきました。

ですが、この制度の背景には極めて大きな問題点がいくつも転がっています。

お金が関わる内容ですので、極めてシビアな内容になることは間違い無いでしょう。特に、ここから先は読んだら不快になる方も多いのではないでしょうか。

クソニートくん
クソニートくん

そんなシビアなの???

Murasaki
Murasaki

あぁ。ただ、知らずに大損する(あるいは損していることに気づかない)か、知った上で対策を考えるなら、僕は後者を選びたい。

ここから先は、厚生年金という制度に隠された 大きな問題点を列挙して紹介していこうと思います。

1. 少子高齢化による財源不足

少子高齢化は、年金制度に限らず 日本全体にとって最大の課題です。

現在の年金制度は、現役世代が保険料を納め、それを基に高齢者に年金を給付する「世代間扶養」方式を採用しています。

しかし、出生率の低下により現役世代の人口が減少し、高齢者の割合が増えると、保険料を納める人よりも年金を受け取る人の方が多くなる「逆ピラミッド型」の構造になります。

データで見る少子高齢化の影響:

現在の高齢者1人を支える現役世代の数は、1970年では約9人でしたが、2023年時点では約2人程度に減少。 これがさらに減少すると、年金財源の維持が難しくなります。

結果として、現役世代に対する負担が増え続ける一方、将来の年金給付額が減るリスクも高まっています。

クソニートくん
クソニートくん

まぁ、そりゃあそうだよな。

Murasaki
Murasaki

問題なのは、この少子高齢化によって制度が危ういことを「巧みなトリックで隠している」ことだ。

少子高齢化で年金の仕組み自体が危ういことなど、誰でも理解できるでしょう。

しかし、その危うさを隠すためのトリックが随所に仕込まれていることを知っていますか?

なんとしても老人を守り抜くために汗をかく厚生労働省には心の底から軽蔑しますが、では一体どのようなトリックが隠されているのでしょうか。

2. ねんきん定期便のトリック

毎年送られてくる「ねんきん定期便」は、自分がこれまで納めた年金保険料の記録や、将来受け取る見込みの年金額を確認できる重要な書類です。

国から送られてくる重要な書類なのですが、なんと このねんきん定期便に、労働者を騙す特大のトリックが仕掛けられてあります。

それは、記載されているのが労働者が負担した保険料だけであり、実際にはその倍の額が会社からも負担されていることが明記されていない点です。

労働者負担分だけの記載

ねんきん定期便に記載されている保険料は、「あなたがこれまでに負担した額」です。

例えば、毎月の給与から差し引かれる厚生年金保険料が1万円だった場合、定期便にはその金額が累積されて記載されます。

クソニートくん
クソニートくん

ん?

なんか当たり前のことを言っている気が…

Murasaki
Murasaki

ポイントは、労働者が支払った厚生年金保険料と同じ金額を、実は企業も負担しているという点だ。

社会保険料(医療保険料、厚生年金保険料、介護保険料)は、老子折半と言って 労働者が支払った額と同じ金額を会社も支払うような仕組みが採用されています。

よって、あなたが厚生年金保険料を1万円支払ったら、実は会社も同額(1万円)を負担していることになります。

言い換えれば、労働者が1万円厚生年金保険料を納めたら、実際は毎月2万円が厚生年金として納められていることになります。

ねんきん定期便のトリック:

記載金額:労働者負担分のみ 実際の納付金額:労働者負担分+会社負担分 お得に見えるが実際は損

ねんきん定期便に記載されている金額を見た多くの人は、「これだけ納めて、これだけもらえるなら悪くない」と感じるかもしれません。

実はそこに大きなトリックが仕掛けられています。

実際には会社負担分も含めて2倍の金額が納められているのですから、この視点で考えると「払い込んだ総額」に対する将来の受け取り額は決してお得とは言えません。というか、損です。

例:総額で見た場合の損失

労働者負担分:500万円(記載金額) 会社負担分:500万円 実際の納付総額:1,000万円 将来受け取れる年金:800万円(仮定) 結果:総額で見れば200万円の損失

このように、ねんきん定期便の記載方法は、実際よりも「お得感」を演出している側面があると言えます。

「厚生年金を半分は会社も払っているんだから、実際はお得じゃね?」と思う人へ

厚生年金は、労働者だけの負担ではなく 同額を会社も負担していると述べました。

確かに労働者の視点から見たら、本来払わなければならない厚生年金保険料の半分で済んでいるので、確かに得したように見えます。

クソニートくん
クソニートくん

えぇっ 違うの???

Murasaki
Murasaki

当たり前だ。

国なんて信用するな。若者の命より、老人の命を守り抜く方が大事なんだよ。

確かに労働者視点で見れば、会社も社会保険料を同額負担してくれているのでお得な気がします。

しかし、会社から見ると会社が支払った社会保険料も込みであなたの人件費です。

言い換えれば、会社は「会社負担分の社会保険料も込み」であなたに支払う金額を事前に決めており、本来は会社負担分の社会保険料はあなたがもらえたはずの金額です。

これまで、社会保険料の「会社負担分の金額」を表面上見えないようにすることで、労働者の視線を逸らすトリックが仕掛けられていると述べました。

では、なぜこのようなことをしているのでしょうか?

3. 老人による搾取スキーム

私たちが「年金」という言葉を聞いたとき、イメージするのは「若い頃に自分が積み立てたお金を、老後に受け取る」仕組みではないでしょうか。

このような積立方式であれば、納めた保険料は自分の将来のために積み立てられ、その資金を元手に老後の生活を支えることになります。

しかし、日本の年金制度、とりわけ厚生年金は積立方式ではなく、賦課方式で運用されています。

クソニートくん
クソニートくん

まーーた訳のわからない用語が出てきたぞ。

Murasaki
Murasaki

全部解説するから、安心してくれ。

3.1 積立方式とは?(理想の年金制度)

積立方式とは、現役時代に納めた保険料を個人の年金財源として積み立てていき、将来的に自分がそのお金を受け取る仕組みです。この方式には以下のような利点があります:

自分が納めた分だけが戻ってくるため、透明性が高い。 他人の世代に依存しないため、人口構造の影響を受けにくい。 長期的に運用することで、積立金が増える可能性がある。

積立方式は、少子高齢化が進む現代の日本のような状況下では、安定的で公平な年金制度と考えられます。

しかし、日本の年金制度はこの積立方式ではありません。

3.2 実は「賦課方式」

日本の厚生年金は「賦課方式」を採用しています。

賦課方式とは、現役世代が納めた保険料をそのまま現在の高齢者の年金給付に充てる仕組みです。これは、以下のような特徴を持つ制度です:

現役世代→高齢者世代への「世代間扶養」 自分が納めたお金は、自分の老後に使われるわけではなく、現在の高齢者のために使われます。 人口構造に依存 若い世代の人口が多く、高齢者が少ない「人口ピラミッド型」社会であれば機能するが、少子高齢化が進むと制度が破綻しやすい。 透明性の欠如 自分が納めたお金がどのように使われているか見えづらいため、不信感が生まれる。 3.3 「搾取スキーム」と化した現実

現代日本では少子高齢化が進み、賦課方式が「老人による搾取スキーム」と化しています。

かつての人口ピラミッド型社会では、1人の高齢者を9人の現役世代が支えていました。

しかし現在では、1人の高齢者を2人程度の現役世代が支える形となり、負担の重さが急激に増しています。

現役世代の苦境 高額な保険料を納めているにもかかわらず、少子高齢化の進展で将来的な年金給付額が減少するリスクが高まっています。 高齢者の恩恵 高齢者世代は、現役時代に少ない保険料を納めていただけで、現役世代から多額の年金を受け取る状況にあります。

「ねんきん定期便」や「給与明細」に会社負担分の社会保険料が記載されていないのは、シンプルに賦課方式で会社負担分の厚生年金を高齢者に横流ししているので、労働者にバレたら一気に不満が加速するからです。

クソニートくん
クソニートくん

ちょっと待って。

今の高齢者だって若い頃厚生年金保険料を納めたんだから、賦課方式で取り上げなくてもなんとかなるんじゃないの?

Murasaki
Murasaki

いい質問だ。

これは世代間の圧倒的な格差が関係している。

これまで、賦課方式を採用して 現役世代が納めた厚生年金保険料を高齢者に横流ししている実態を説明しました。

ですが、高齢者だって若い頃厚生年金保険料を納めているはず… なのに、なぜ賦課方式で現役世代から搾取しなければならないのでしょうか。

4. 高齢者は「厚生年金保険料」をほとんど払っていない

現在の高齢者が受け取っている厚生年金は、現役世代が支払った保険料を財源とする「賦課方式」に基づいています。

しかし、高齢者世代が現役だった頃の厚生年金保険料の負担割合は、現在よりもはるかに低いものでした。

その結果、高齢者世代は自分が負担した金額よりもはるかに多い年金を受け取っているという実態があります。

4.1 高齢者の負担割合は低かった

現役世代が納めている現在の厚生年金保険料率は、2023年時点で18.3%(労使折半でそれぞれ9.15%ずつ)です。しかし、過去の保険料率は以下の通り、非常に低いものでした。

1970年代:保険料率 約6% 1980年代:保険料率 約10% 1990年代:保険料率 約13%

つまり、現役世代が支払っている保険料率(18.3%)と比べると、当時の高齢者はわずかな負担しかしていなかったのです。

4.2 「もらい得」の構造

高齢者が現役時代に納めていた保険料は非常に少ないのに対し、現在受け取っている年金額はそれを大幅に上回る水準となっています。

この「もらい得」の構造は、次のような要因によって生まれました:

保険料率の低さ 高齢者世代は現役時代、低い保険料率で済んでいました。 年金給付額の優遇 年金制度が整備された初期の世代は、制度の恩恵を最大限に受ける立場にありました。納めた保険料に比べて非常に高い給付を受け取ることが可能でした。 人口ピラミッドの恩恵 高齢者1人を支える現役世代が多かったため、負担が薄く広がり、「低い負担でも十分な給付を受け取れる」仕組みが成立していました。 4.3 現役世代との負担格差

現在の現役世代は、高齢者と比べてはるかに高い保険料率を負担しています。それにもかかわらず、将来的には「納めた保険料に対する給付額の比率が低い」見通しが示されています。

世代間格差の例:

現在の高齢者世代 保険料負担:低い 給付額:高い(負担額を大幅に上回る) 現役世代 保険料負担:高い 給付額:低い(負担額を下回る可能性が高い)

この格差が、現役世代の間に「自分たちが負担するお金は本当に戻ってくるのか?」という不信感を広げています。

クソニートくん
クソニートくん

グロいな…

Murasaki
Murasaki

仕組み上仕方ない部分もあるが、この世代間格差を理解していない人間の反論が多いこと多いこと。

この手の世代間格差に対しての反論で「世代間の対立や分裂を生まないで🥺」と被害者仕草全開で反論してくる老人がいますが、一切耳を貸してはなりません。

すでに老人は圧倒的お得、現役世代は損 というのが確定しているので、分断はすでに生まれています。

分断を解消したいなら、高齢者は今の現役世代と同等の金額を遡って収めるか 年金をそもそも受け取るべきではありません。

4.4 不満を生む「不公平感」

現在の高齢者は「払った以上にもらっている世代」であり、現役世代は「払った分が戻ってくるか不安な世代」となっています。この世代間の不公平感は、次のような社会的問題を引き起こしています:

年金制度への不信感 若い世代は「年金は破綻する」という不安を抱え、保険料の支払いに不満を持っています。 世代間の対立 高齢者優遇の年金制度に対し、現役世代が「搾取されている」と感じることで、世代間の不和が深まるリスクがあります。

高齢者が「我々も(社会保険料を)払ってきた」と言って反論してくるのですが、一切耳をかしてはいけません。

彼らは圧倒的に少ない負担で済んだのに「私たちは弱者🥺もっと負担して🥺助けて🥺」という態度を取ってきますが、一切信用してはいけません。

【論文】将来世代・現役世代を喰らう高齢者は敬老に値する人間か?
少子高齢化が止まらない日本。 今後ますますその速度は加速していき、結果として想像通りの恐ろしい未来が待ち受けていることは想像に難くないでしょう。 クソニートくん マジで日本、どうなっちまうんだ… …
Murasaki
Murasaki

老人は日がな一日口空けてぼーっとテレビを見て、ほとんど前頭葉が動いていない。

彼らに世代間格差を理解するのは困難かもしれないが、一切耳を貸すな。

そして、厚生年金の仕組みは 老人が一方的に搾取する構造になっていることも述べましたが、他にも搾取してくる人が存在することを知っておくべきです。

クソニートくん
クソニートくん

まだ取られるのかよ….

Murasaki
Murasaki

お前はニートなんだから関係ないだろw

ここにも実は「搾取のトリック」が仕掛けられています。

サラリーマンは、厚生年金の仕組み上 永遠に搾取される捕食対象なのです。

5. 自営業者・専業主婦のために搾取される労働者

年金制度の大きな柱である「国民年金」と「厚生年金」。

この2つは基本的に別の制度として運用されていますが、実際には「基礎年金勘定」という仕組みでつながっています。

この仕組みにより、厚生年金の加入者である労働者たちが、自営業者や専業主婦の年金財源を補填しているという現実が隠されています。

クソニートくん
クソニートくん

ど… どうゆうことだってばよ

Murasaki
Murasaki

こちらは図解した方がわかりやすいな。

5.1 「基礎年金勘定」とは?

「基礎年金勘定」とは、国民年金の財源を補填するために設けられた仕組みです。

国民年金は、主に自営業者や専業主婦が加入する年金制度で、保険料は一律(2023年度は月額16,520円)です。

しかし、少子高齢化の影響で加入者が減少し、その上未納・免除が半分を超えているため、国民年金単体では赤字が生じています。

クソニートくん
クソニートくん

未納・免除が半分超える国民年金って、一体…

Murasaki
Murasaki

厚生年金に限らず、年金自体が仕組みとしてもう崩壊してるんだよ。

この赤字を補填するために、基礎年金勘定という仕組みを通じて、厚生年金や公務員の共済年金などの財源を合算して運用し、国民年金の給付に充てています。

結果として、厚生年金加入者(会社員など)が支払う保険料の一部が、自営業者や専業主婦のために使われているのです。

5.2 専業主婦への優遇問題

さらに、専業主婦が「第3号被保険者」として国民年金に加入している場合、保険料を自分で支払わずに年金を受け取れるという仕組みがあります。

この分も基礎年金勘定で補填されており、その財源は主に厚生年金保険料から来ています。

専業主婦優遇の仕組み:

夫が厚生年金に加入していれば、その妻(専業主婦)は自分で保険料を支払わなくても国民年金に加入できる。 その結果、働く女性や労働者からの保険料が専業主婦の年金財源を支える形になる。 5.3 結果として生じる不公平

「基礎年金勘定」という仕組みがあるため、厚生年金加入者(主にサラリーマン)は、自分の老後のために支払うはずの保険料が、別の制度(国民年金)の補填に使われているという不満を抱くことになります。

この制度は、以下のような不公平を生じさせています:

労働者の負担は増えるが、自営業者や専業主婦の負担は相対的に軽い。 厚生年金加入者の将来受け取る年金額が減少する可能性が高まる。
Murasaki
Murasaki

サラリーマンが支払った厚生年金保険料が、老人・専業主婦・自営業者に流れているのは、どう見ても憲法29条の「財産権」を侵害しているように見えるんだが。

まとめ:厚生年金改革の必要性

厚生年金は、日本の老後を支える重要な柱ですが、少子高齢化や制度設計の問題により、多くの課題を抱えています。これらを解決するためには、次のような改革が必要です:

給付と負担のバランス見直し 高齢者の年金給付額や受給開始年齢を見直し、現役世代の負担を軽減する。 基礎年金の独立採算化 国民年金の財源を厚生年金に依存せず、独立して運用できる仕組みに見直す。 制度の透明性向上 年金財源の流れを国民にわかりやすく説明し、制度への信頼を回復する。

世代間の不公平を解消し、すべての世代が安心できる年金制度を目指すためには、私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、議論を深めることが大切です。

編集部より:この記事はMurasaki@論文解説お兄さん氏のブログ「Quantum Gun」2025年1月26日のエントリーより転載させていただきました。

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https://agora-web.jp/archives/250212083443.html https://agora-web.jp/archives/250212083443.html Wed, 12 Feb 2025 21:40:11 +0000 Wed, 12 Feb 2025 11:33:57 +0000
オランダ政府「女子枠は違法な性差別」、大学が導入撤回へ society 近年、日本の大学では、女性の入学者を増やす目的で「女子枠」を導入しようとする動きが目立つようになっている。 理工系学部などで女子学生の比率が著しく低い現状を改善するための取り組みとして導入される一方、先行研究では、こうし

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https://agora-web.jp/feed-for-gunosy https://agora-web.jp/feed-for-gunosy Sun, 15 May 2016 09:09:45 +0000 Sun, 15 May 2016 09:09:45 +0000
中国経済は2024年を底割れせずに通過 economy 財政ヘッドラインの続き 久々に中国経済の定点観測。前回の記事で取り上げた財政拡張期待はどう着地したか。10/12に財政部が記者会見で「中国にはまだ債務を発行する余地が十分ある」と述べたが具体的な数字には触れなかった。具体

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財政ヘッドラインの続き

久々に中国経済の定点観測。前回の記事で取り上げた財政拡張期待はどう着地したか。10/12に財政部が記者会見で「中国にはまだ債務を発行する余地が十分ある」と述べたが具体的な数字には触れなかった。具体的に数字を提示できるのは早くて全人代(3月開催)の簡易版であり、政府予算と公債発行枠の承認権限を有する全人代常務委員会である。

全人代常務委員会は11/4~8に開かれ、11/8に地方政府の「隠れ債務」について10兆元規模の対策を決定した。内訳は「地方政府の債務上限を今後3年間で6兆元引き上げる。さらに承認済みの4兆元の発行を5年間で債務交換に充てることを認める」とのことである。

10兆元という数字だけは事前予想の上限に達したが、これは地方政府の「資金調達を認める」だけであり、中央政府が真水を投入するわけではない。地方政府はLGFV調達から地方債調達に切り替えると金利を節約できるが、この利息は基本的に中国の金融システムに落ちるものなので、節約したところで経済全体には中立である。

またこれが地方政府の債務圧縮の一環である以上、「LGFVから地方債調達にスワップできため地方政府が再び財政拡張に踏み切る」こともない。もっとも地方政府の財政悪化にはある程度の歯止めがかかるし、資金が尽きた地方政府の民間企業に対する代金支払いが滞ることで民間企業が連鎖的に倒産する動きにもある程度の歯止めがかかりやすくなる。

我々のようにエクストリームシナリオを考えていた市場参加者にとっては海溝の中で少し浮いたと歓迎すべき動きではあるものの、いわゆる財政拡張による消費やインフラ整備のブーストを期待していた市場参加者に対してはゼロ回答だったということになる。

12/11~12に開かれた中央経済工作会議では「中央・地方の財政出動の拡大、公債増発のほか、銀行準備預金比率の引き下げと”適切な時期”の利下げの方針」を決定した

財政政策は前年の「積極的な」から「より積極的な」へ、前年の「穏健な(中立的な)」から「適度に緩和的な」へと転換した。更なる金融緩和を期待する形で中国株は一時跳ねたがすぐにフェードし、一方で長期金利は2%を一気に割り込んでから急落が止まらず、一気に1.5%に近付いた。

この組合せは財政政策への期待というか信用がない一方、金融緩和は景気が改善するまでなし崩しに追加投入されるが、金融緩和単体では景気は改善しないため更なる金融緩和に追い込まれると投資家が確信していたことを示唆する。

とはいえ、これだけの金融緩和と長期金利低下は株式市場のバリュエーションのサポートにならないはずはなく、トランプ政権が爆誕してバッドニュースが続いた後も中国株の下値は堅かった。

株式と人民元

Deepseekが登場した当初、愚かしい人々がDeepseekに天安門事件を入力してキャッキャしている間にナスダックのDeepseekショックに備えなければならなかったのだが、最新鋭チップの需要自体は減衰しなさそうなのでショックは収まった。

裏演目として、ハイエンドチップを買えない中国企業がAI革命による生産性向上の恩恵を受けられないというテーマがこれで否定されることになり、中国・香港株が急騰することになる

ファーウェイの時がそうだったように、中国企業がショーマッスルするたびに米国からの制裁が厳しくなったため本ブログも碌でもない展開しか想像できなかったのだが、とにかく愚かしい人々がDeepseekに天安門事件を入力してキャッキャしている間に中国株も買わなければならなかったようである。

もっとも今回のラリーは根本的にはずっと安く放置されてきたからきっかけを得て吹き上がったのであり、下値がどうやら堅そうなのは分かったとしても、関税のヘッドラインがいつ降ってくるか分からない中で、腰を据えて資金を入れられるほどの安心感はない。

一方、中国の金利急低下が招く米中金利差の拡大は確実に人民元の上値を圧迫した人民元の下落を懸念する人民銀行は国債買入れを中止するなど金利低下への愚かしい抵抗を示していたが、国債金利低下はすっかり定着してしまっている。米ドル側に大きな変動がない限り、人民元からの資金流出と輸出代金の打ち返しは続くだろう。

2024年の中国経済の点検

1月に2024年第4四半期のGDPまで出揃ったことから、中国の2024年実質GDP成長は目標の5%をちょうど達成したことが分かった。本ブログなどは2023年対比で悪化要因しかないため4%成長すら不可能だと断言していたが的外れだったことになるが、その背景も分かっている。

7月の記事で「GDPやCPIのボラティリティと比べてGDPデフレーターのボラティリティがあまりにも大きいし、我々がイメージする過去の中国景気の推移と合わせるとデフレーターの方がGDP本体ではないかという気もしてくる」と気付いたように、名目GDPのボラティリティをデフレーターの方に付けることができるからである。

実際WTO加入前のアジア金融危機、2008年のグローバル金融危機、その後の4兆元の財政出動による回復、2015年のチャイナショック、2017年の棚改バブルと全てのイベントを図の黒いチャートの起伏として確認できるように、我々が「中国経済」と呼んできたものはあくまでも名目GDPである。日経新聞は「生活実感に近い名目GDP」と表現するが、実感に近いどころか名目GDPが全てなのである。

その肝心なデフレーターは1990年代のアジア金融危機以来となる6四半期連続マイナスである。今のデフレ不況が2008年のグローバル金融危機と2015年のチャイナショックより遥かに深刻であることが分かる。

インフレ格差は通貨間の為替レート変動によって解消されることがないので、国家間で通貨さえ揃えれば名目GDP同士で比較して差し支えない。2021年をピークに米国に占める中国のGDP比率は10%ドローダウンした。これに伴い「中国のGDPが米国を追い越すタイミング」が年々チンアナゴのようなチャートで後ろ倒しにされてきたが、ついに「予想できる未来の範囲で追い付くことはない」と言えるようになる。

実質GDPが底割れせずに済んだのは、2024年のメインテーマである「不動産市場を放置したまま製造業支援と、その結果である過剰生産とダンピング輸出」のパッケージのおかげである。

輸出とデフレ輸出

輸入は2021年以来横ばいなので、輸出が増えるにつれ貿易黒字は空前の規模になっている。一部は将来の関税に備えた米国からの駆け込み輸入とも言われているが、国別で見ると対米国の増分は限定的である。中国の対米輸出は既にGDP対比で大きくなくなっている。代わりにASEAN諸国と「その他」にデフレを輸出しまくったわけである。

GSによると2021年の「サプライチェーンが動いている唯一の国」としての輸出ブームと違って、2023年と2024年は米ドル建て単価は輸出総量に対してマイナスの寄与となっている。まさにデフレ輸出である。

先進国はこれを関税等で阻止することになるが、第二次トランプ政権からの関税のヘッドラインへの反応が何となく鈍いのは対米貿易の依存度が下がったためでもある。

さほど問題にならない消費

習近平政権が「支援策」の大半を次ぎ込んだハイテク産業は雇用にとって大してプラスにならなかった。補助金を受け取ったはずの「新産業」企業の新卒月収(黄色。青は前年比)は2024年になって大幅に下落した。

WSJによると不動産市場の時価総額下落の規模は18兆ドルに達している。2008年のグローバル金融危機における米国不動産市場の下落幅でも6.5兆ドル、株式等を足した米国家計の負の資産効果は11兆ドルなので中国の負の資産効果はその1.6倍に達している。中国株式市場の時価総額が12兆ドル、2024年GDPがちょうど18兆ドルと比較してもその規模は極めて大きい。

負の資産効果は理論的には消費に悪影響を与えるが、不動産価格がピークだった頃も資産効果で消費が盛り上がったわけではないので、わずか2、3年しかなかったどピークで不動産を買った層が詰んでいる以外、そこまで極端な影響があったわけではない。

そもそも、これは本ブログの仮説であるが、ある水準以上の富裕層の消費は海外旅行に漏れ出るのだから、中国の消費の律速は消費者の消費能力ではなく消費先の供給能力である。

2024年末にかけて当局がなんだ家電購入の支援金を1兆元配ったため、消費は素直に少し持ち直した。個人消費も雇用悪化の影響を淡々と受けるが、それよりも地方政府の強制財政引締めで公費支出が減ったインパクトの方が遥かに大きかっただろう。

中国の製造業PMIは秋から冬にかけて一度大きく反発した。これも関税前の駆け込み輸出の影響と思われ、恐らくそれが一巡したことで直近は再び大きく低下している。一方、CPIのデフレ傾向はサービス業主導である程度の自律反発を見せている。これは消費が少し戻しているのとシンクロしている。

注目は再び財政に

本ブログが一貫して問題視してきたのはランドセールの破綻による強制財政緊縮である。

中国語チャートも英語チャートもMSであり、左図のブルーの線が一般会計歳入にランドセール収入を合わせたもののGDP比で、黄色い線が一般会計歳出である。歳出は概ねフラットであるが、収入が急速に縮小する中でフラットを維持するだけでも財政が悪化する。

先進国の感覚では国債増発で埋めれば済む問題であるが、それは頑なにしないことが分かっているため、世のエコノミストが期待してきたように経済対策で黄色い線が上に跳ねるのは極めてハードルが高い。

不動産市場は回復の兆しが見えないが、たとえ回復するとしても、引き渡しリスクのない中古住宅が回復→新築住宅が回復→不動産企業の新築在庫が掃ける→不動産企業の土地在庫復元意欲が回復→ランドセール復活と、地方政府の収入源としてのランドセール復活までの道のりは長い。

次の財政拡張期待イベントは財政赤字GDP比の目標を決定する3/5に開幕する全人代である。さすがにこれまでの議論から財政赤字目標は2024年の3%というふざけた数字にはならないと思われるが、それがコンセンサスでもある。

一方、近年は一般会計の赤字とは別に特別債発行の規模が拡大しており、それらを合わせて広義財政赤字と見なす場合、広義財政赤字は徐々に拡大している

もっとも特別債が財政赤字から除かれているのはプロジェクトの採算から返済するという建前からであり、現実には回収できるわけがないのだが、その上で習近平政権は後から人を建前で吊るし上げる習性があることが分かっているので、回収を考えずに燃やせる中央政府の財政赤字ほどの刺激効果はない。

実際、DBが発見したように2023年、2024年の広義財政赤字拡大はほとんど乗数効果を持たなかった。乗数効果が2025年には急回復するとDBは言っているが根拠は疑わしい。

全人代が素直に昨年の予告通りに財政赤字目標を上方修正すれば合格となるが、再びGDP比3%に据え置いて特別債やら何やらで誤魔化すなら再び経済運営の誠意を疑われるだろう。

【関連記事】

 

中国株は財政期待で国慶節に滑稽な乱高下 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍 みずほリサーチ&テクノロジーズ : 中国は「バズーカ」を放ったのか ─ 習近平政権による直近の経済対策を評価する ─ みずほリサーチ&テクノロジーズ : Mizuho RT EXPRESS 中国は景気下支えを一段と強化へ

 

編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年2月11日の記事を転載させていただきました。

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https://agora-web.jp/archives/250211205824.html https://agora-web.jp/archives/250211205824.html Wed, 12 Feb 2025 21:30:16 +0000 Wed, 12 Feb 2025 11:27:08 +0000
医師への不信感と苦悩の末の選択 society 母が亡くなった。まだ心の整理がつかない。人生において、これほど悲しい出来事は初めてで、後悔の念にさいなまれている。ぜひ、前の記事もお読みいただきたい。 医師の言葉が奪った希望:医師の倫理とは何か?がん告知の在り方を問う

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https://agora-web.jp/feed-for-gunosy https://agora-web.jp/feed-for-gunosy Sun, 15 May 2016 09:09:45 +0000 Sun, 15 May 2016 09:09:45 +0000
昨日の専門家は、明日の専門家ではない! technology NHKで「坂の上の雲」の再放送をしている。 前回、前々回は日露戦争の分岐点となった「203高地」を放送していた。死屍累々の惨敗を繰り返していた日本陸軍の最前線に、高橋英樹さん演ずる児玉源太郎が乗り込んで、参謀たちに作戦変

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NHKで「坂の上の雲」の再放送をしている。

前回、前々回は日露戦争の分岐点となった「203高地」を放送していた。死屍累々の惨敗を繰り返していた日本陸軍の最前線に、高橋英樹さん演ずる児玉源太郎が乗り込んで、参謀たちに作戦変更を命じる場面があった。最も印象的だったのは、クダクダと反論する参謀たちに、「諸君は昨日の専門家であるかもしれん。しかし、明日の専門家ではない。」と一喝した場面だった。

この一言は、まさに、今の日本の抱えている問題だ。コロナ対策の時は、昨日の専門家どころが、一昨日、あるいは、1か月前の専門家が、明日の日本、将来の日本を議論していた。

ひとたび203高地を奪ったにもかかわらず、援軍も補給もなく、頂上にいた40人の兵士は命を奪われた。日本の継続性のない科学政策などは、この悲劇のくり返しだ。

cyano66/iStock

太平洋戦争時、南太平洋でも、東南アジアでも、そして、硫黄島でも長期的な作戦もなく、後方支援もなく、多くの兵士が命を落としてしまった。参謀という名の現場を知らない人たち、古びた専門家が政策を決めているのは、203高地の再現だった。国の将来に対するビジョンもなく、危機的な状況でその場しのぎの愚策を続ければ、国が衰退するのは当然の帰結だ。

203高地を奪い、上から旅順港に引き籠っているロシア艦隊を叩き、遥々とやって来るバルチック艦隊を迎え撃つ。さらに諜報活動でロシア内部の崩壊を誘導する。こんなことをやり遂げた日本人がいたのだ。永田町や霞が関にここまで腹の据わった作戦を立てることのできる人材がいるのかどうか?悲しいことに、軽い言葉を操り、責任を取らない人たちが、203高地の悲劇を繰り返す。

今の日本には後がない。「皇国の興廃この一戦にあり」と真剣に考え、そして責任を取る覚悟のある「明日の専門家」が必要だ。

編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2025年2月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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https://agora-web.jp/archives/250211210856.html https://agora-web.jp/archives/250211210856.html Wed, 12 Feb 2025 21:20:44 +0000 Wed, 12 Feb 2025 11:38:01 +0000
令和は「お客様は神様」から「働く人に配慮する」時代 society 各種団体の新年会ラッシュが始まりました。今日は富士商工会議所の賀詞交歓会があり、建設業界、製紙業界、ホテル業界などの声を現状を聞くことができました。政治家と団体とのつながりを利害の問題と捉えて悪く言う人がいますが、我々に

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各種団体の新年会ラッシュが始まりました。今日は富士商工会議所の賀詞交歓会があり、建設業界、製紙業界、ホテル業界などの声を現状を聞くことができました。政治家と団体とのつながりを利害の問題と捉えて悪く言う人がいますが、我々にとっては現場の課題を知る実に貴重な機会となっています。各団体、課題は様々ですが、共通しているのは深刻な人手不足です。

そこで思い出したのが、この正月に感じた時代の変化でした。

mapo/iStock

令和の時代に昭和の正月を思い出す

両親が高齢になってきましたので、ここ数年は年末年始は滋賀県の実家に帰省するようになりました。両親と久々にゆっくり話す時間が持てて、とても良いひとときを過ごすことができました。

私の実家は近江八幡という田舎にあるのですが、今年は近くのスーパーが三が日、全て休業していました。私が滋賀で育った昭和の時代は、正月にスーパーが閉まっているのは当たり前でした。平成に入って、ダイエーなどの大型スーパーが三が日も営業を始めるようになり、正月の風景は大きく変わりました。

私は、正月にスーパーが休んでも全く問題ないと思います。あらかじめ分かっていれば必要な物を買いそろえておくこともできますし、生活に大きな支障は出ません。このように、消費者の都合よりも働く人々に配慮する時代に、日本社会のあり方が変化していると感じました。

正月にお店が休んでいる光景を目の当たりにして感じたのは、「お客様は神様」という考え方が終わりを迎えたということです。平成の時代は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアが消費者本位の営業を追求し、年中無休が当たり前のようになりました。しかし今では、働く人手が不足し、人件費の高騰や社員の負担増加が問題となり、特に地方では従業員に配慮する経営が必要な時代に突入しています。

歯ブラシを買うのに苦労したドイツでの記憶

思い出したのは、仕事でドイツを訪れた際の出来事です。日本のホテルには歯ブラシが置いてあるのが当たり前ですが、ドイツのホテルには歯ブラシが設置されていませんでした。現地で購入しようとしたのですが、これがなかなか難航しました。

昼間は仕事の予定が詰まっており、ドラッグストアに駆け込めたのは午後5時の閉店寸前の午後4時45分ごろでした。店は開いていましたが、商品を売ってもらえませんでした。

「もう帰る準備をしているから」

店員のこの一言に私は衝撃を受けました。営業時間内であっても、閉店準備のために販売を早めに終了するルールが徹底されていたのです。この経験を通じて「働く人の都合を優先する文化」に触れた気がしました。

労働省の官僚に聞いたところ、ドイツでは消費者が働く側に配慮することで、自らの働くものとしての権利が守られるという意識が定着していると話してくれました。

たしかに、ドイツでは日曜日や祝日にお店が閉まっているのが普通で、消費者はそれを当然のこととして受け入れています。それに比べると、日本は「消費者本位」の文化が非常に強く、24時間営業や年中無休のサービスが当たり前になっています。その背景には働く人々の負担があることを忘れてはなりません。

従業員の身だしなみの多様化に理解を求める張り紙を見て

あるスーパーでこんな張り紙を見かけたことがあります。

「従業員の身だしなみについて、当店では髪色、ピアス、ネイルの自由を認めています。ご理解いただけますようお願い申し上げます」

以前はお店のルールで髪色などの自由を認めていなかったのか、もしくはお客さんからのクレームに対応が必要だったのかもしれません。客が従業員のプライバシーに介入するとなると、もはやカスハラだと私は思います。

流通、飲食、医療現場、トラック輸送など、働き方改革が問題になっている業界が変わるかどうかは、消費者が働く側にどこまで配慮できるかによって決まってきます。

何でもドイツを見習えば良いと言っているわけではありません。日本のホスピタリティの高さは世界に誇れるものだと思います。コンビニで買い物をする時も、タクシーに乗る時も、親切丁寧に対応してくれる従業員の方々に心を打たれることが多々あります。彼らに感謝の気持ちを言葉にして伝えることで、サービスを提供する側もさらにやりがいを感じられるはずです。

社会を変えるのは法律や制度だけではありません。消費者の意識が変わってこそ、令和の働き方改革が成功するのだと思います。

編集部より:この記事は、衆議院議員の細野豪志氏(自民党・静岡5区)のブログ 2025年1月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は細野豪志オフィシャルブログをご覧ください。

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https://agora-web.jp/archives/250211211222.html https://agora-web.jp/archives/250211211222.html Wed, 12 Feb 2025 21:15:07 +0000 Wed, 12 Feb 2025 11:36:34 +0000
【確定申告】紙でやる人 もうヤバい! economy 令和6年分の確定申告をスマホで行う方法について、実状を踏まえて解説しました。 【目次】 0:00 現在の確定申告作成、提出方法 」 3:27 ややこしい用語をまとめてみた&所得税の公式 6:18 スマホでe-Taxを始め

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令和6年分の確定申告をスマホで行う方法について、実状を踏まえて解説しました。

【目次】

0:00 現在の確定申告作成、提出方法 」 3:27 ややこしい用語をまとめてみた&所得税の公式 6:18 スマホでe-Taxを始めよう 8:31 初めてe-Taxをする場合 10:20 xmlデータ読込と所得・控除の入力 11:27 医療費控除の入力方法 13:44 送信前の確認と送信 14:35 申告後の注意点

公認会計士・山田真哉氏が、税金・ビジネス・投資・経済の得する情報や、国のややこしい制度などを解説する「オタク会計士ch【山田真哉】少しだけお金で得する」。チャンネル登録をお願いします。

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https://agora-web.jp/archives/250211205601.html https://agora-web.jp/archives/250211205601.html Wed, 12 Feb 2025 21:10:48 +0000 Wed, 12 Feb 2025 11:43:09 +0000
誰もが無意識に陥る「目的と手段の入替わり」 economy セミナーや講演で「お金は目的ではなく人生の夢や目標をかなえるための手段」と、個人投資家の皆さんに何度も繰り返し説明しています。 だから資産運用を始める前に、人生の夢や目標を考える必要があるのです。人生の夢や目標が明確にな

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Sorapop/iStock

セミナーや講演で「お金は目的ではなく人生の夢や目標をかなえるための手段」と、個人投資家の皆さんに何度も繰り返し説明しています。

だから資産運用を始める前に、人生の夢や目標を考える必要があるのです。人生の夢や目標が明確になれば、次にそれを達成するために必要なお金を考えるというステップです。

お金とは、あくまで自分の人生でやりたいことを実現するための手段なのです。

ところが、ほとんどの投資家は資産運用を始めるとお金自体が目的になってしまいます。自分の人生の夢や目標とは関係なく、とにかくお金を増やすことに夢中になるのです。

個人投資家にお金の正しい知識を啓蒙すべきマネー誌の人気の定番特集さえ「投資で1億円作る」といった最初に金額ありきになっているのは、何とも皮肉なものです。

しかし、このような目的と手段の入替わりは、お金に限らず多くの人が無意識にやっていることでもあります。

私はパーソナルトレーニングでベンチプレスを毎回やっています。目標回数が設定されていますが、それ達成するためになるべく筋肉に負荷のかからない楽な方法でやろうと考えてしまいます。

しかし、私がベンチプレスをやる目的は、目標回数を達成することではなく筋力をアップさせることです。

であれば、楽をして回数を稼ぐのではなく、むしろ回数にはこだわらず敢えて負荷をかけることで筋力をアップさせるべきなのです。

何かを実現するために努力しているのに、いつしか努力すること自体が目的になってしまう。

そんな罠に陥らないためには、自分がやっていることの意味を自分自身に常に問い直してみることです。

もしかすると、毎日の生活でやっていることのかなりの部分は手段が目的化している。そんなことに気がつくかもしれません。

編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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https://agora-web.jp/archives/250211205217.html https://agora-web.jp/archives/250211205217.html Wed, 12 Feb 2025 21:00:13 +0000 Wed, 12 Feb 2025 11:48:16 +0000
年収の壁と学生バイトの関係 economy 元厚労省の官僚だった村木厚子氏が日経ビジネスの寄稿に「バイト年収の壁見直し、学生の可能性を潰してほしくない」と投稿しています。生活の苦しい学生のための103万円の壁の引き上げ賛成という趣旨です。たしか、同様の意見は左派を

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元厚労省の官僚だった村木厚子氏が日経ビジネスの寄稿に「バイト年収の壁見直し、学生の可能性を潰してほしくない」と投稿しています。生活の苦しい学生のための103万円の壁の引き上げ賛成という趣旨です。たしか、同様の意見は左派を中心に広くあると認識しています。

村木厚子氏 日本記者クラブ講演動画より

年収の壁は実態としては学生に限らず、誰にでも等しく引き上げになるわけですのでその点については全く問題ありません。ずいぶん前に書いたように基本的に90年代からこの金額が見直されなかったのは財務省の怠慢というか、税収減になることを恐れ、知らんぷりしてきただけの話です。今回、最終的に何処まで引き上げられるかわかりませんが、最低賃金の上昇率から計算した178万円は一定の妥当性があり、そこにすり寄らせ、かつ、法律上、最低賃金の上昇率に沿う形で毎年、この控除額を見直す、と法律に明記すべきでしょう。

一方、村木氏の主張する学生のバイトを促進するための引上げという声には私は一定の抵抗があります。ご本人も寄稿の中で「子供の本業は勉強」という意見があると述べています。この本業である勉強という部分が昔から大学生の意識から抜け落ちている、これが日本の大学生の実態だと思います。

かつては終身雇用が主流だった時代はon the job trainingと称し、入社してから会社によってはひと月近くオリエンテーションをしてようやく配属先に赴任していました。もちろん今でも長期間にわたる新入社員研修はあり、1年もやるところすらあります。かつては長期雇用関係がある程度見込める雇用関係でしたので企業は社員を企業色に染めるための投資欲が当たり前でした。今でもそれを強く続けているところは「社員の退職率が減っている」といった声もありますが、技術系に限定されるなど必ずしも汎用的ではない気がします。

ちなみに私が入社したゼネコンは3か月の英語クラスと概ね2週間程度のオリエンテーションで、配属先に行くのは夏前でした。今でも覚えていますが、6月のボーナスをもらったのは英語クラスで塩漬けになっていた時。ボーナスではなく「寸志」だったと記憶していますが、5万円頂きました。170名強の新入社員全員が給与もらって3か月英語学校に行かせる懐の大きさに「すげぇー会社だよな」と皆で言い合ったものです。しかし、数年もすれば3割近くが退職したのも事実で会社による新入社員教育とは何ぞや、というのは当然議論されたわけです。ちなみに私がトップの秘書になった時はその制度は大きくカタチを変え、短い期間で終わるようになっていました。

終身雇用という発想がなくなってきた現在、企業は従業員により実務的なハイレベルの教育にシフトしていき、中途採用が増える中で入社〇年目の研修という形に変わっていっていると認識しています。とすれば、大学生が企業に入社する時にはある程度基礎力と社会人としての常識をもった人材に仕上がっている必要があるはずです。

ところが学生によってはバイトに明け暮れる人もいます。私もバイトは良くした方です。私は海外に行くための渡航費用稼ぎという明白な目的がありましたが、生活費と共に遊び代稼ぎやショッピング代稼ぎというのが学生バイトのほぼ主流だったと思います。

その後、何の疑いもないままカナダに来た時に「あれー?」というギャップを感じたのです。学生バイトをする人は極めて少ないのであります。理由はそんな時間はない、勉学が大変で図書館に籠るという訳です。こちらに留学している日本人学生さんともよく話をしますが、「ついていくのが大変」という話はごく当たり前でそれが言語的なギャップというより濃密な授業内容と予習復習、頻繁にあるテストに追われているという感じです。

カナダでは外国人学生が学校に行きながらアルバイトをする際、査証により一定の労働が許されます。生活費の一部という発想だと思います。その枠組みは週に20時間までです。それ以上働くのは学生が学生の本分である勉強とはかけ離れると解釈されています。

ではこの20時間を日本に当てはめたらどうなるか試算をすると時給1,100円で月80時間働くと年間で1,056,000円です。つまり103万円の壁にほぼドンピシャで合致するのです。ちなみに日本に来る学生は原則就労できません。ただし、「資格外活動の許可」をもらっている場合に限り週28時間まで可能になっています。これだと年間150万円です。

たしかこの話題が出た時、一部から「学生は学ぶことだろう。本末転倒ではないか」という意見が出たのを記憶しています。本質的にはその方の主張は正しいと私は思います。

ところで、何かを読んでいた時、ある学生が「大学に将来の実業に役立つ授業がなく失望した」という意見があったのを見て私は驚きました。この方は大いなる勘違いをされているのです。実業の学校なら職業訓練学校的な専門学校や高専に行くべきであって大学はアカデミアの世界だという意識を十分理解していないのです。

学生バイトの話もそう。もしも稼ぎたいのなら4年生の大学に行かず、高専や専門学校に行き、早く就職するべきです。経済的ゆとりがない人が大学に行く場合でも、今は星の数ほどの奨学金制度があり、その利用者は相当数に上ります。また社会人になった後の返済も無利子で収入見合いという返済プランならそれこそ月々数千円の返済というレベルなのです。

学生とはやはりしっかり勉学する、それが基本であり、103万円の壁が大きく上振れすることでバイトに執着する学生が増え、大学時代はバイト三昧だったという方が増えるのが教育の一面からは懸念されると思います。

教育の話は十人十色の価値観がありますので正解はないと思っています。ですが、議論をして様々な意見を交わすことは重要なプロセスであると考えています。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月12日の記事より転載させていただきました。

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https://agora-web.jp/archives/250211205321.html https://agora-web.jp/archives/250211205321.html Wed, 12 Feb 2025 03:00:09 +0000 Wed, 12 Feb 2025 01:12:43 +0000
シリア新政権の報復に怯えるアラウィ派 column 半世紀を超える長い期間シリアを支配してきたアサド政権が昨年12月8日、崩壊すると、モハメド・アル・ジャウラニの名で知られるシャラア氏が率いるスンニ派イスラム主義組織「ハイアト・タハリール・アル・シャーム」(HTS)が同月

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半世紀を超える長い期間シリアを支配してきたアサド政権が昨年12月8日、崩壊すると、モハメド・アル・ジャウラニの名で知られるシャラア氏が率いるスンニ派イスラム主義組織「ハイアト・タハリール・アル・シャーム」(HTS)が同月10日、旧反体制派勢力から成るバシル暫定政権を発足させ、シャラア氏自身は1月29日に暫定大統領に就任するなど、着々と新体制を構築した。

シリアを訪問したイエズス会使節団と会見するシリアの新指導者シャラア氏、2024年12月31日、ダマスカスのシリア大統領宮殿で、アルアラビ―ヤ通信社

その一方、シャラア氏は今月2日、スンニ派の盟主サウジアラビアを訪問するなど積極的な外交攻勢を展開。それだけではない。アサド政権下で製造され、シャラア保管されていた化学兵器の管理・処理問題でハーグに本部を置く化学兵器禁止機関(OPCW)のチームが今月8日にシリアを訪問している。国営通信社SANAによると、フェルナンド・アリアス事務局が率いるOPCWチームはダマスカスでシャラア暫定大統領とシャイバーニ外相に歓迎された。シリア新政権は国際機関と連携することで国際社会への統合を目指す姿勢を見せている。

シャラア氏は暫定大統領に就任した直後の国民向けテレビ演説で、「シリアの統一と再生のために全力で取り組む」と決意を改めて述べている。40代前半の元軍司令官は政権交代以来、外的には穏健派を強調してきた。国営通信社SANAによると、シャラア首相の次のステップは、新憲法が制定されるまでの暫定立法評議会を設置することだという。

新政権が取り組まなければならない課題は、13年余りの内戦で荒廃した国の復興と国民経済の立て直しだ。その前提として、シリア国民の再統合だ。シリア国民の大多数はイスラム教スンニ派だが、それ以外にもイスラム教少数派やキリスト教など多数の宗教が存在する。シャラア大統領自身はイスラム教スンニ派に属する。新政権としては如何に少数派を国家再生に動員するかが重要な課題となる。

アサド父子による独裁政権ではイスラム教の中でも少数宗派のアラウィ派が国内を統治してきた。シャラア氏はアサド失脚後、分裂した国の再統合を呼び掛け、「全ての民族、宗派は等しく公平に扱われるべきだ」と表明したが、ダマスコスからの情報では、同国の多くの少数派は新政権の報復を恐れているという。ドイツ民間ニュース専門局NTVは11日、少数派のアラウィ派の信者たちが大きな懸念を有しているという。一人のアラウィ派は「新政権は『アラウィ派は独裁者アサドを支援してきた』と考えているが、実際はそうではない。われわれも他の宗派と同様、様々な迫害を受けてきた」と述べている。

バチカンニュースは先月4日、「シリアの新しい指導者、フランシスコ教皇に深い敬意を表明」という見出しで、シリアの新政権が同国の少数宗派のキリスト教に理解を有していると報道したが、現地からの情報によると、キリスト信者たちはイスラム教徒から改宗を強いられ、女性のキリスト者は衣服問題でイスラム過激派からさまざまな嫌がらせや批判を受けたりしているという。

ちなみに、アサド政権の軍隊とその治安部隊は解散し、旧与党バース党は解散させられた。全ての武装集団、政治機関、民間機関は解散し、武装解除が実施されている。

13年に及ぶ内戦の後、多くの大都市で多数の家屋、時には町、村全体が破壊された。人口の大多数は貧困の中で暮らしている。シリアがどのような方向に発展していくのかはまだ分からない。アルカイダテロネットワークの分派であるアルヌスラ戦線から発生したHTSは米国や欧州連合(EU)などにテロ組織としてリストされている。

EUはアサド政権下で実施してきた対シリア制裁の一部解除する一方、ダマスカスの新統治者に対して依然、完全な信頼を寄せず、静観している状況が続いている。EU外交政策責任者のカジャ・カラス氏は「シリア情勢が悪化すれば制裁解除が覆される可能性もある」と付け加えている。アサド独裁政権の崩壊を受け、欧州ではシリア難民の国外追放と帰還に関する議論が始まっている。オーストリアを含む多くの国がシリア国民の亡命手続きを一時停止している。

なお、アサド政権の崩壊した「12月8日」は新しい国民の祝日と宣言された。多くのシリア人はこれから新しい国造りが始まるという希望を感じている。その希望が失望とならないためにも、国際社会は可能な限りシリアの再生に支援の手を差し伸ばすべきだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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https://agora-web.jp/archives/250211205344.html https://agora-web.jp/archives/250211205344.html Wed, 12 Feb 2025 02:55:41 +0000 Tue, 11 Feb 2025 21:18:46 +0000