同一労働同一賃金論者の矛盾 --- 古舘 真

2013年02月17日 15:31


「正規労働者と非正規労働者などの格差解消のため」と称して同一労働同一賃金を唱える意見に対して私は違和感を持っていたが、先日興味深い2つのブログを見つけた。

Chikirinの日記「2008-12-13 同一労働 同一賃金」

民主党が同一労働同一賃金を絶対に実現できないわけ

なぜ違和感を持つのか自分でもよく分からなかったが、上記ブログを読んで目から鱗が落ちる様な気がした。

両サイトとも実によく纏まっているので、これを参考にして話を進める。


まず、「Chikirinの日記」はリポーターが国籍や労働形態などが違う4人にインタビューする形をとっているが、主なポイントは3つだ。

(1)弱者と言っても立場も利害も様々であり意見が正反対の人もいる。

(2)日本国内だけの同一労働・同一賃金に賛成だが、世界レベルでの同一労働・同一賃金には反対でもよいのか。

(3)年功序列組織には同一労働同一賃金はなじまない。

さて、私はタイトルに「矛盾」という言葉を入れたが、「同一労働同一賃金論者に一体どんな矛盾があるのか」と思う人がいるだろうから説明する。

私は同一労働同一賃金論自体は必ずしも間違いとは思わないし、それ自体が矛盾している訳ではない。

同一労働同一賃金を唱える人の中には正規労働と非正規労働の格差をなくすためと称して非正規労働に否定的な人が多いが、そもそも「Chikirinの日記」でも指摘されているように年功序列を基本とする日本式の正規労働は同一労働同一賃金になじまない。

「日本式の正規労働を廃止して全ての労働者を非正規労働者にしろ」と言うなら同一労働同一賃金論に矛盾はないのだが、私の知っている限りではそういう人は一人もいない。

ここでは特に上記の「(3)年功序列組織には同一労働同一賃金はなじまない」に重点を置いて話を進めるが、更に踏み込んだのが2つ目のブログ民主党が同一労働同一賃金を絶対に実現できないわけだ。

非正規雇用労働者と正社員が並存している企業は、大きく分けると2種類ある。

(1)大手製造業のように、業務を明確に切り分けているタイプ

最初から切り捨て可能な単純作業に特化させているので、そもそも同一労働となる余地がない。「同一価値じゃないんです」と労組と会社に主張されれば、 何も変わらない。

(2)正規、非正規が混在する事務系の職場

実際に仕事内容が非正規≧正規となっているケースも少なくない。

ここではとりあえず、同一労働同一賃金の成立余地のある(2)について述べたい。

成立余地があるといっても、一つ大きな問題がある。

正社員のいったい誰に合わせるのかという基準がないのだ。

ここで指摘されているように、そもそも日本式の正規労働は同一労働同一賃金ではない。

しつこいようだが、「正規労働を廃止して全ての労働者を非正規労働者にしろ」と言われれば納得するが、同一労働同一賃金論者の多くが正反対の主張をしている。

もともと同一労働同一賃金論というのはかつては性差別や人種差別などを意識した意見が多かったのだが、差別と言われても性差別と正規・非正規間格差は同列に語れない。

経営者を庇う気はないが、正社員の給料が非正規社員を凌駕してしまったのは経営者の意図ではなく結果的にそうなってしまったというのが実情だろう。

私もバブルの頃に大企業で9年間正社員勤務していたが、新入社員の時は下請け作業員よりも低収入で「時給換算するとファストフード店のアルバイトより給料が安い」と嘆いていた。

日本式の正規労働は元々人件費を安く抑えるための制度だったが、低成長期に入り社員のピラミッド構造が崩れてくると逆に高コストな制度になってしまったのだ。

今でも新人に限定するとむしろ正社員の方が時給換算で非正規社員より低賃金である場合は少なくない。

経営者としては同じ仕事をする人なら高コストの正社員より低コストの非正規社員を優先した方が得なのであり、正社員を守っているのは労働組合の反発や今までの約束、世間体などを気にしているからだろう。

Chikirinの日記「2008-12-13 同一労働 同一賃金」でも指摘されている通り、同一労働同一賃金が達成されたところで非正規社員の収入は上がらず正社員の給料が今の非正規雇用の人の給与になり喜ぶのは株主や経営者だけだ。

制限字数に近づいてきたので纏めるが、何度もしつこいようだが、同一労働同一賃金論は差別に対抗するという意識はあったものの性差別や人種差別を意識したものであり格差をなくす事に主眼は置いていなかった(それどころか過去においては弱肉強食的な観点から経営側の観点で述べられる事が少なくなかった)。

左翼的な人たちの振り回す同一労働同一賃金論は本人の意図とは正反対の方向に向かう可能性が高い。

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