ラマダン明けの食事には注意を --- 長谷川 良

2014年07月03日 07:48

世界のイスラム教国で今年もラマダン(断食の月)が始まった。国によっては6月29日からラマダンがスタートしたところと、1日前の28日から始まったところがある。一応、月の動きを観測してラマダンの日程が決定されることになっている。期間は30日間だ。例えば、ラマダンが始まると当方が日ごろお世話になっている国連の職員レストランでは昼食を取る職員が減る。イスラム教徒の職員が昼食しないからだ。「ああ、ラマダンが始まったのだな」といった感慨が湧いてくる。


ラマダンはイスラム教徒が死守しなけならない5つの義務の一つだが、断食しなくてもいい信者もいる。妊婦や子供はしなくていい。定期的に薬を摂取しているイスラム教徒、海外に旅行中の信徒も断食しなくてもいい、といった具合だ。何らかの理由で断食ができない人はその代わりに貧しい人に献金する。

ラマダンはちょうど、キリスト信者のクリスマスと似ている。キリスト信者がクリスマス・シーズになると日頃疎遠となっていた教会に足をのばし、ミサに参加する。同じように、ラマダンが到来すると「イスラム教徒は信仰的になる」という。友人を断食明けの食事に招待して交流するイスラム教徒の家庭が多い。独身のイスラム教徒の場合、ラマダンが到来すると、多くの家庭から招待状が届く。だから、自宅でわびしく食事をする必要はない。友人から招きがない場合、夜9時、最寄りのイスラム寺院に行けば、断食明けの食事(イフタール)が待っている。会員証や信者証明書など見せる必要はない。誰でも食事できる。キリスト信者でも無神論者でもいい。「全てウエルカムだ」という。この点、イスラム教はキリスト教より懐が深い。

イスラム教徒の友人は「ラマダンで注意しなければならない点は食べ過ぎで太らないことだ」という。ラマダン明けの食事のためにイスラム教徒の女性たちは買物に汗を流し、さまざまな料理を準備する。豪華な夕食をラマダン期間の30日間、満喫すれば、「多くの信者たちは太る」というのだ。ラマダン後、5キロ太ったという男性はざらにいる。断食しながら、体重が増えるといった奇妙な現象がみられるわけだ。

当方も過去、何度かラマダン明けの食事に招かれたことがある。イスラム教徒たちは夜遅くまで談笑しながら食べる。朝食と昼食を食べていないので、食欲は当然ある。どうしても食べ過ぎてしまうわけだ。

ところで、ラマダン期間に入ると、紛争勢力間で“ラマダン停戦”“ラマダン休戦”を叫ぶ指導者が出てくるが、守られたことが少ない。中東問題専門家のアミール・ベアティ氏は「ラマダン期間、敬虔なイスラム教徒は寺院に集まり、太陽が沈むとラマダン明けの食事を一緒にとる。すなわち、ラマダン期間はいつもより頻繁に寺院に集まり、指導者から話を聞く機会が多い。そこでイスラム指導者が憎悪発言や政治発言を繰り返せば、信者たちへの影響は普段より大きい。イスラム教徒はキリスト信者のように個人意識が成長していない。彼らは集団で行動をする。ラマダン期間はその機会が普段より多いから、断食明け後、デモや政治活動に走るケースが出てくるのだ」という。

イスラム教スンニ派の過激組織「イスラム国」の指導者アブバクル・バグダディ容疑者は7月1日、世界のイスラム教徒にラマダン中のジハード(聖戦)を呼び掛けた、というニュースが流れてきたばかりだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年7月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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