新・上州戦争!中曽根孫決起で群馬1区が全国最注目区に

2017年09月22日 06:00

群馬1区から出馬を目指す佐田氏、中曽根氏、尾見氏(公式サイト、SNSより引用

解散に向けて政界が風雲急を告げる中、今回の総選挙で私が最も注目している選挙区で節目となる動きがあった。衆院選への出馬を目指してきた中曽根康弘元首相の孫、康隆氏が21日、群馬県庁で記者会見し、正式に出馬表明した。

中曽根元首相の孫、立候補を表明 35歳、群馬1区から:朝日新聞デジタル

中曽根ファミリーの参戦という話題性だけでなく、往年の「上州戦争」を思わせる自民党内の抗争がドラマ性を高めようとしている。記事にもあるように、自民群馬県連は比例現職の尾見朝子氏をすでに公認予定。ところが現職の佐田玄一郎元規制改革担当相が、度重なる女性スキャンダルにもめげず、出馬への構えを崩しておらず、自民系だけで3分裂の可能性も現実味を帯びている。

以前もアゴラで何度か書いたが、康隆さんと、現県連会長の山本一太参議院議員は、ネット上で激しく火花を繰り広げてきた遺恨がある。

(参照)「中曽根君を泣かそーね」を実践中の山本一太ブログ

ただ、さしもの保守王国群馬といえども、3分裂にまでなると、1区には前回比例復活の民進党・宮崎岳志氏、元維新の元職・上野宏史氏もいるだけに野党側に漁夫の利を与える恐れもある。地元だけで事態の収拾がつかないと、党本部の仲裁が入りそうだが、そもそもの選挙区事情を解説しつつ、“平成版上州戦争”を超ざっくりと展望してみよう。

もう一つの上州戦争:旧1区から続く尾見VS佐田

東京の人間からみると、中曽根ブランドの存在が際立ってみえるが、歴史的には、前橋市を中心とする1区は、選挙区外の高崎市を拠点としてきた中曽根家にとって本来は“アウエー”であることは抑えておきたい。もともと1区は、中選挙区(定数3)の時代から、尾見氏の父、幸次元財務相と若き日の佐田氏、そして社会党の田辺誠元委員長の3者で激しい議席・順位争いを繰り広げてきた。本家の「上州戦争」といえば、中選挙区時代、近隣の群馬3区での福田赳夫、中曽根康弘、小渕恵三歴代元総理のバトルをさしたが、尾見パパと佐田氏の抗争もまた熾烈なものだった。

小選挙区制に移行した1996年以降は、尾見パパと佐田氏が選挙ごとに選挙区と比例単独で交互に出馬する「コスタリカ」方式を採用してすみわけてきたが、尾見パパが2009年の政権交代選挙で敗れて引退。自民党が政権に復帰した12年、そして前回14年の選挙では、佐田氏がそのまま居座る形で連勝。康隆氏にとっては、ほかの群馬県内の選挙区が空いてなかった中で悲願の出馬ではあるが、佐田氏のスキャンダルによる評判失墜は、尾見朝子氏にとっても父の“旧領”を回復する一大チャンスだった。

仮に自民系の3人がこのまま出馬となれば、票はどのように分散するか。選挙区制度も、時代も四半世紀も違うので、ネット上のオープンデータだけで占うのは正直難しい(おそらく党本部や県連では水面下で情勢調査をかけていて概要は把握しているだろうが…)。ただ、中選挙区時代の尾見パパ票と佐田票のデータはある。小選挙区制導入後、1区から人口約20万の伊勢崎市が2区に割り振られたことで、旧1区の有権者数の7割程度と概算。さらに投票率が50%程度と想定し、旧1区の数字も同じ投票率に補正するなどして推計すると、基礎票は尾見家が約4万5千、佐田氏は約4万程度と見積もってみる。

しかし、中選挙区時代と決定的に違うのは、自民党が公明党と連立政権を組み、オフィシャル候補には頼もしい創価学会票が付いてくるようになった。尾見氏が公認となれば公明党の推薦がつく可能性が高い。

尾身幸次氏、歴代ノーベル賞受賞者らと面会する山口代表(16年4月、公明党ニュースより引用)

公明党ニュースによると、すでに引退した尾見パパが昨年4月、科学予算拡充のロビイングで山口代表と面会したそうで、学会・公明の尾見支援への支障はなさそうに見える。1区内の自治体の公明票は2万数千程度あるようなので、単純計算だと尾見氏は基礎票+学会票で6万5千票〜7万程度は確保することになる。この時点で佐田氏、そして民進・宮崎氏(前回4万9千票)、上野氏(同5万4千票)は上回る計算だ。

康隆氏の活路は“小池流”ゲリラ戦⁈

中曽根康隆氏Facebookより引用

こういう状況で康隆氏がどう割って入るのか。数字だけをみると、もちろん簡単ではないし、理想的には学会票には中立になってもらうことだろう。ただし、まず佐田氏の基礎票については、スキャンダルを嫌気した女性を中心に切り崩しやすいはずだ。過去の後援会名簿入手は難しいかもしれないが、佐田支持者の多い地域・団体などへアプローチしたい。若くて将来性があり、清廉なイケメンの康隆氏なら中高年女性のハートを鷲掴みできる可能性は高い。地縁の強い地域であろうから、女性たちのネットワークによる横展開で支持を広げていく。

もう一つ、絶対に切り崩さないといけないのは、選挙によって自民や旧民主、維新、旧みんな、現在なら小池新党と投票先を変えるような「保守系無党派」や若者層だ。この点、かつて維新にいた上野氏は、投票率が6%下がった前回選挙で無所属出馬ながら得票を伸ばす健闘を見せた。万が一、上野氏が小池新党の公認を得るとなると、また全く違う展開になるだろうが、22日現在は無所属で活動しているようなので康隆氏としては、上野氏から保守系改革志向の層を強奪できる余地はある。

空中戦は、尾見氏や佐田氏が使いこなせていないネットも駆使しながらデジタル世代に訴求する。地上戦のほうは、外から見ていると、1区内の地方議員がどれだけ助勢してくれているのかわからないが、しかし、群馬県内全域にいる中曽根派の地方議員たちが実戦部隊として集中的に1区に入り、フル回転すれば、それなりに戦う体制は整えられるのではないか。東京都民が小池氏に期待したような「古い政治を新しく」的な文脈で若者らしく健気に戦う姿勢を打ち出すと、前述の女性票の獲得と合わせて存外面白い展開になるかもしれない。

もちろん、康隆氏にとって決して楽観できる状況ではない。水面下の情勢調査の数字は知らないが、まさに「崖から飛び降りる」覚悟が試される局面だ。しかし、年齢的にも何十年後かに宰相を狙える可能性は大きな差別化要因だ。中曽根ブランドと高いポテンシャルを武器に、地元群馬の発展をリードできる人材として説得力のあるストーリー、ビジョン、個性的な政策を語ることができるか。35歳の「未来への挑戦」が始まろうとしている。

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P.S  アゴラでは引き続き「著者セミナー」を開催しております(次回は10月11日)。11~12月には第3期の出版道場も開催予定です。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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