首都圏のテレビ電波は32チャンネルあけられる

池田 信夫

規制改革推進会議と民放連が、電波オークションをめぐって闘っている。民放連の井上会長(TBS名誉会長)は定例会見で「われわれは多かれ少なかれ公共性を担っており、金額の多寡で決まる制度には反対する」と述べたが、これは意味不明だ。オークションは新たにあく周波数を競売にかける制度であり、既存の放送局には関係ない。

ただ「もう使いやすい帯域はあいていないのでオークションしても意味がない」という意見には一理あるので、私の提案しているのがUHF帯の区画整理である。これは上の図のようにテレビ局が虫食い状に使っているUHF帯の「空き地」を整理し、あいたチャンネルを通信に使おうというものだ(GはNHK総合、Eは教育、Nは日本テレビ、TはTBS、Fはフジ、Aはテレ朝、Vはテレ東)。

これに対して、規制改革推進会議で民放連は、次のような資料を出してきた。これは茨城県の日本テレビの中継局の配置だが、彼ら自身が書いているように、今でも東京スカイツリーの25chで茨城県全域に放送されている。日立北でも25chで見られるので、それ以外の局も(38km以内だから)SFNでスカイツリーの電波を中継すればいい。

こうして日本テレビの中継局は、すべて25chに置き換えられる(放送波中継の局は光ファイバーに変えればいい)。これは茨城県以外の5県でも同じだから、東京以外の首都圏には別のチャンネルは必要ない。他の民放局も同じだ。

茨城県だけはNHK総合が独自放送しているので、スカイツリーの27chではなく(たとえば)28chを割り当て、キー局以外の県域ローカル局をXとすると、首都圏の電波は次の図のようにスカイツリーと同じ8chに再編して32ch(192MHz)あけることができる。近畿圏も同様だが、それ以外の県域放送では局の数によって違う。

テレビ局の放送は再編の影響を受けないので、今まで通りできる。区画整理であいた電波は何に使ってもいいが、今どき地上波テレビの免許を新たに取る業者はいない。5Gの通信は、4GHz以上の高い周波数よりUHF帯を使えば、コストははるかに安上がりですむ。

32chをすべてオークションで通信キャリアに割り当てるより、一部はWi-Fiなどの免許不要帯に割り当てたほうがいいかもしれない。すべて比較審査で割り当てることも可能だが、それがオークションよりいい結果をもたらすかどうかはNOTTVの失敗をみれば明らかだろう。