吉村大阪市長バッシング報道:SNSと維新が嫌いなだけでは?

2018年06月22日 06:00

吉村洋文大阪市長(大阪市サイトより引用)

大阪北部地震発生直後、吉村洋文大阪市長がツイッターで迅速な情報発信をしてネット上では「神対応」と評されたと思ったら、小学校の「全校休校」措置をめぐって、毎日新聞共同通信などが「市長の発信が混乱を招いた」などと批判のボルテージを上げている。

「賞賛」のネット VS 「批判」の新聞

吉村市長のツイッター発信を巡っては、震災直後からいち早くその動向や反響をキャッチしたキャリコネニュースロケットニュースなどのウェブメディアでは好意的に記事が出ていた。ところが日が経つにつれ、既存メディアから「カウンター情報」が繰り出された形だ。毎日の記事によれば、市長が「全校休止」を決めたにも関わらず、一部の学校では授業を継続したところもあったという。

市長の指示が現場に行き届かなかった実態を伝えることは、「南海トラフ大地震の発生に備えた検証」(毎日新聞)をする上でも重要なのは確かだ。ネット上の動きをまとめただけのウェブメディアを尻目に、リアルの現場取材を泥臭く駆けずり回る老舗メディアの記者たちの“意地”のようなものも感じる。

ただ、毎日や共同の記事の伝え方をみていると、何か釈然としないこともある。震度6弱と数字だけは阪神大震災を彷彿とさせる一報が伝えられた中で、ただでさえ現場は混乱している。そうした中で100点満点の結果(今回でいえば文字通り市内全校が休止になること)を要求しすぎるには、いささか現実味に欠けるのではないか。大事なことは初期対応によって、100点満点ではなく合格点、つまり一人でも多くの子供たちの安全を確保できたかどうかを検証することではないのか。

この毎日や共同の記事に対しては、吉村市長だけでなく、この話題をツイートした私へのフォロワーの皆さんの反応のほうが合理的にもみえる。まずご本人の反論。

「拙速は巧遅に勝る」ネット上は毎日に批判的?

このコメントを見る限りは、贔屓目を抜きに(私は市長と面識はない)、当時取りうる判断でベストに近かったのではないか。一刻一秒を争う中でいかに早く決断し、発信できるツールを使って発信できるかどうかがまず重要なのではないか。政令市の大地震では、熊本市の大西一史市長の迅速なツイッター発信が賞賛されたのをみても明らかだ。

さらに私のフォロワーの皆さんの意見。それなりに反響があったのが印象的だったが、いくつか紹介させてもらうと、

緊急の災害対応なのに現場に丸投げ、なの?
後から考えれば大げさだった言われようが一日くらい休校にして何が悪いのだろう?
ってか教育委員会が災害対応まで負うべきではないでしょうに。
有事には総司令官の指示が優先。

反省すべき点は災害時の情報伝達の円滑化、ですが、もしこれが震度7クラスだったらと思うと、市長の早い決断は正しい。
情報を積極的にとろうとしない学校側の問題は言わない不思議。

迅速な対応を優先させて何が悪いのか分かりませんね。
東日本大震災のとき対応の遅さで犠牲になった子どもたちがいたことを、みなさんお忘れなんでしょうか。

いずれも一読して腑に落ちるご意見ばかりだった。結局、危機管理の初動は「拙速は巧遅に勝る」という格言がコトの本質を物語っているのではないか。

しかし、取材に関しては「拙速」だと困る。毎日の記事は、現場に市長判断が行き届かなかった原因として、市の防災計画では、休校するかどうかは学校長の判断に任されているかのような書き方をしていたが、吉村市長はきのう夕方に更新したツイッターでこれを否定した。

橋下市政時代の遺恨が今でも影響してないか?

この市長の「反論」について毎日はどのように対処するのだろうか。もともと橋下前市長時代、毎日新聞との「対立」がたびたび表面化した。記者から暴言を受けたかどうかといったことでトラブルになったこともあったし、大阪本社の編集局長の批判コラムに対しても、橋下氏が徹底反論するなど、激しくぶつかってきた経緯は周知の事実だ。

もちろん、吉村市長を叩くことありきで、「拙速」な批判記事を書いたのだとは短絡的には言うまい。代替わりして2年以上経つ。しかし少なくとも、毎日新聞が維新による大阪府政・市政を本音では好意的にみているようには思えない。好きか嫌いか二者択一でいえば、嫌いなのではないか。

もう一つ筆者は毎日新聞記者の「本音」で疑っている点がある。政治的な考えからの相違から来る対立だけでなく、ツイッターなど政治家がネットを駆使して直接有権者とつながること自体が本能的に「不快」なのではないか。ネットがない時代、記者クラブは行政と有権者をつなぐ、希少な情報プラットフォームだったが、いまの時代、行政の発表文を市民は直接確認して報道記事との比較も可能になった。

東日本大震災以後、年々高まるSNSの社会的プレゼンスを既存メディアも認めざるを得なくなり、近年はNHKのように事件発生の端緒をつかむように「取り込む」動きもでている。毎日新聞社会部もツイッターで震災の写真提供依頼をかけるなど一応駆使はしているようだが、


ときおり、ネットを敵視・蔑視していた時代のアナログ体質をつい覗かせてしまうのだろうか。

なお、今回の件で思い出したが、大阪府政・市政の担当記者に要求される適性は、維新登場のビフォーアフターで変化しており、しかし、ここまで記者クラブ各社が十分に適応できていないと思うことが少々ある。それについてはまた機会を改めて書いてみたい。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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