アルゼンチンが誇る世界2位の産油地に、カタール石油公社が初進出

2018年06月30日 06:00

世界でNo.2の石油と天然ガスの埋蔵量を持つアルゼンチンのバカ・ムエルタ(ENERGETICOより引用)

GDPは世界26位にありながら、輸出量では世界45位にある国、アルゼンチン。国の産業規模に比べ輸出量が少ない、よって外貨が十分に備蓄されない。また、この100年近く歳出が歳入を常に上回り高いインフレ、また国家資金は常に不足してデフォルトは8回繰り返した。少ない輸出量に高いインフレとデフォルトの常習国。これらの要因がこの1世紀余りのアルゼンチンの発展を妨げて来た。

この慣習を刷新したいと2015年12月に大統領に就任したマウリシオ・マクリであったが、歳出と歳入の厳格な管理が不十分で、結局デフォルトに陥るのを懸念して先にIMFに融資を要請。6月に500億ドル(5兆4000億円)の融資枠の譲渡を受けた。

その様な中で明るいニュースが一つ舞い込んで来た。世界で天然ガス産出量ではトップのカタールがアルゼンチンのバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)に埋蔵されているシェールガスと石油の採掘に本格的に取り組むことが決定したのである。

バカ・ムエルタはスイスとオランダを幾分小さくした36,000㎞2の広大な地域に160億バレルに相当する石油と308兆立方フィートに匹敵する天然ガスが埋蔵されているというのである。それはアルゼンチン国内だけの消費だと、石油は150年分、天然ガスは85年分の供給が保障されるというのだ。南半球では最大の埋蔵量、世界でNo.2とされている。

バカ・ムエルタの開発には国営企業YPF(Yacimientos Petroliferos Fiscales)が従事していたが、1989-1992の間に民営化させた。1992年にはスペインの石油・ガス企業レプソル(Repsol)が参加し、最終的にYPFの過半数の株を取得するまでになって経営権を掌握。ところが、当時のクリスチーナ・フェルナンデス大統領はレプソルの投資が十分ではないので石油とガスの採掘に成長が見られないとして、2012年に突如国営化したのである。当時の南米で社会主義目指す政権の国では政府が民間企業を突如国営化させるのは良くあったことである。

レプソルはアルゼンチン政府の国営化を不服として、国際投資紛争解決センター(ICSID)に調停を要請した。その結果、アルゼンチン政府はレプソルに50億ドル(5400億円)の損害賠償金を支払わねばならないことになった。

ところが、YPFを国営化したは良いが、アルゼンチン政府に投資の為の資金がないという事態が生じていた。結局、YPFの51%の株は政府が所有しながらも、2年後には米国Chevronに採掘権を100億ドル(1兆800億円)で譲渡。この条件が如何に政府にとって不利なものであったのかということらしく、批判を恐れて今もその詳細は明らかにされていない。

現在までバカ・ムエルタのシェール開発の採掘権を手に入れた複数の企業が進出。そのプロジェクトの数は26、今後30-35年間に1530億ドル(16兆5200億円)の投資が見込まれているという。進出している主要企業を以下に列記する。

YPF :42%の鉱床地域を所有している。その鉱区に上述Chevron、マレーシアPetronas、米国Dow、ノルウェーStatoilなどが参加している。

Gas y Petróleo del Neuquén:ネウケン州立企業、鉱床地域12.3%、Exxson、Shell、Statoilが連携している。

Pluspetrol:7.6%の鉱床地域を所有したアルゼンチンのレイ家とポリ家の経営によるもの。

Wintershall:ドイツBASFグループ企業。7.5%の鉱床地域を所有。

Total:フランスを代表するエネルギー分野の企業。6.2%の鉱床地域を所有。

Exxon Mobil:3.3%の鉱床地域を持ち,Qatar Petroleumが同社の30%の株を6月に買収。本格的に石油と天然ガスの採掘に乗り出す。

Pan American Energy:現在、天然ガスの採掘に力を入れている。アルゼンチンのブルゲロニ家、中国Cnooc、英国British Petroleumが資本参加している。2.2%の開発地域を所有。

Shell:1.3%の鉱床地域を持った、オランダと英国の企業。

Tecpetrol:イタリアとアルゼンチン系パオロ・ロッカが経営するTechintグループの企業で、1%の鉱床地域を所有。

以上がバカ・ムエルタで採掘に従事している主要企業の詳細である。

アルゼンチン政府が期待しているQatar Petroleumはアルゼンチンにおいて初めての進出である。同社の社長兼最高経営責任者Saad Sherida Al-Kaabiは記者会見の席で「長年のパートナーであるExxonMobilとの今回の合意と、シェール開発によるバカ・ムエルタでの将来の発展への参加は喜びである。これは我々にとって重要な画期的な出来事だ。と言うのは、アルゼンチンにおいてQatar Petroleumの最初の投資を意味するもので、シェール石油とガスの開発に意味ある国際的な投資となるからである」と述べた。

Qatar Petroleumは早速7億ドルを投資(760億円)。更に近く同規模の追加投資を予定しているという。

現在バカ・ムエルタで採掘シェールガスについては国内消費の10%を賄う量にまでなっているという。しかし、アルゼンチン政府が望んでいるのは早く輸出国に転じて慢性的な外貨の不足を補填することである。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑