レオパレス施工不良問題「なぜ発覚まで20年以上?」

2019年02月12日 06:00

東京・中野にあるレオパレス21本社(Wikipedia:編集部)

たしかに怒りが伝わってくる見出しだ。

(時時刻刻)レオパレス怒りの渦 建築不備、1.4万人転居:朝日新聞デジタル 

記事によると、レオパレス(株式会社レオパレス21 東京都中野区)が施工した建物に施工不良が見つかった問題で、同建物の入居者7782人に3月末までの退去が求められているという。これ以外にも改修に伴う引越を求められる入居者は最大で1万4000人を超える見通しとのことだ。

退去に伴う費用はレオパレス側が負担するにしても、年度替わりであり引越シーズンでもあるこの時期に、自らに何の落ち度もないのに退去を迫られている入居者はもちろん、高額な建築代金を支払った建物オーナーたちの怒りも文字どおり「渦」となっているだろう。

レオパレスの施工不良については以前からそれを指摘する声があったが、昨年の3月と4月に同建物のオーナーからの指摘により同社でも調査を開始し、当初は1996年~2009年に建てられた一部建物の天井裏の界壁施工不良があったと発表されていた。

しかし、同社の最新のプレスリリース(2月7日付)によると、外壁や断熱材、天井部分の施工でも不備が見つかり、現在その施工不備棟数は1324棟にも上るという。調査の結果、この棟数はさらに増える可能性もある。

レオパレスが公表しているとおりだとして、建物の施工不良が1996年から始まったとするとその建物は建築され貸し出されてから既に20年以上経過していることになる。

一般的に建築の施工不良はなかなか発見できない。建物が完成してしまえば、構造内部は内装や外装で覆われてしまうため、その建物を利用する人間に「実害」が及ばなければ施工不良が発見されることは困難なのである。

しかし、日常生活の暑さ・寒さに関わる「断熱性能」や上下左右の部屋から聞こえる音に関わる「遮音性能」についての施工不良は住人にとっての「実害」と言えるだろう。この実害が公になるまで、なぜ「20年以上」も時間がかかったのだろうか?

レオパレス側は施工不備の発生原因として「図面と施工マニュアルの整合性の不備」と「社内検査体制の不備」があったと主張しているが、施工不良の部位が特定の箇所(界壁、外壁等)に多いことやその施工不良内容が多くの建物で類似していることから、一連の施工は組織的に行われたと疑わざるを得ない。

ただ、「現段階」で今回の問題の直接的な発生原因を特定することは推測の域を出ないので、それについては論じないが、問題の発覚が遅れた「温床」となった点についてはいくつか指摘したい。

まずは、レオパレスの賃貸アパートの入居形態(契約形態)についてだ。同社のホームページによると契約の種類によっては「定期借家契約」を用いることで最短30日からでも部屋が借りられる仕組みになっている。さらに同アパートには家具家電付の物件も多い。つまり、レオパレスの賃貸アパートには短期の入居者が集まる理由があるのだ。

筆者は短期居住の賛否を問うつもりはない。以前、短期居住を前提としたウィークリーマンションやマンスリーマンションが実質的な旅館業にあたり問題があるのではと指摘する声が各方面から上がったのは事実だが、短・中期の出張や、期間が明らかな就学など短期居住者向けの賃貸物件に対する社会的なニーズがあることは明らかであり、そのサービスを事業者が提供することを否定できるはずもない。

ただし、同アパートに短期居住者が多いことが今回の施工不備の温床になった可能性は拭えない。入居者が断熱や遮音などの建物性能に疑問を抱いたとしても入居者自身に「一時的な短期居住だから」という「事なかれ」的な心理が働いたとすれば、結果的に入居者の声がオーナー側に届きづらかったことは否めない。

さらに、今回の問題を語るうえでは「サブリース」についても触れなければならない。

以前、アゴラに寄稿させていただいたなかにもいくつかサブリースについて触れた稿があるが、サブリースを利用するにはその性質を十二分に理解することが必要とされる。

※参考:「不動産投資ブームの終焉」がもたらすもの

レオパレスも土地オーナーから建設施工の受注を募るために長期のサブリース契約を謳っていた。
同社HP「レオパレス21の30年一括借上げシステムによる賃貸住宅経営」

レオパレスが行ってきたサブリースの実態がどうであったかは分からない。しかしこれまでいくつかの事業者が行ってきたサブリース契約をめぐっては、高額な建設代金、サブリース契約打ち切りや半ば強制的な賃料減額などの行為に批判が集まってきた。

一見、サブリースと建物の施工不良とは何の関係もないように思うかもしれない。

だが、例えばオーナー側の意識も「サブリースによる高利回りだけが賃貸事業が成り立つ根拠」になってしまっていたとすれば、実際の建物の基本性能に対する検証意識が希薄になってしまっていた可能性も否定できない。

なぜなら実際の建物パフォーマンスがどうであっても、サブリース契約が存続する限りオーナー側の収入は約束(実際は違うが)されているのだ。

この様な構図が事業者側(レオパレス)の施工に対する「安易な不正」を生んだ温床となった可能性もある。

この構図はシェアハウス不正融資で問題となったスマートデイズ社にも見られたものだ。

「定期借家契約で短期居住の入居者を募ること」

「高い家賃設定でサブリース契約を結ぶことでオーナーに高利回りを約束すること」

「オーナー側は賃貸運営を事業者に任せているため賃貸実態が見えにくいこと」

このように類似点が多いのである。

もちろん定期借家契約やサブリース契約そのものが「諸悪の根源」ではないし、今回のレオパレスによる施工不良はそれが作為的であれ不作為であれ、善意であれ悪意(ここでは知っていたか知らなかったかの意)であれ、一方的にレオパレス側に非があり、建物オーナー側に非はない。さらに建築工事に関する行政のチェック機能に対する批判も少なくない。

だが同時に、レオパレスが施工不良の建物を長期間造りつづけ、そしてそれが長期にわたり公にならなかったその背景には、短期居住(定期借家契約)とサブリース契約が影響を与えた可能性も否定できない。

今回の件を受け、同社の収益悪化が避けられない状況の中、同社が建物オーナーと入居者に対してその責任を誠実に果たしていくかどうかが注目されるが、同様にこれまで同社に関わってきた銀行の姿勢にも注目していかなければならない。

何の落ち度もない入居者や建物オーナーのために、結末だけはスマートデイズ社に類似させてはならないのだ。

高幡 和也
宅地建物取引士 プロフィール
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