フードデリバリーは飲食業界を変えるか?

先日、バンクーバーのあるラーメン居酒屋(こちらはこういう組み合わせの業態が結構あります)に入ったところ、フードデリバリーの人が次々と来店します。誰にも声をかけることなく店の入り口の椅子に数分座っていると店の人がプラスティックの容器に入れたラーメンを手渡し、デリバリーの人はあの大きな四角いリュックの中の保温用シートにくるみながらまた無言で出ていきます。

日本でも10以上の都市で利用可能なフードデリバリーサービス「ウーバーイーツ」(Uber公式サイトより:編集部)

このようなシーンは今や、チェーンのハンバーガー店から寿司屋までごく当たり前にみられる光景であります。日本でもその姿を見かけることが増えてきたのではないでしょうか?

レストランクオリティを家で楽しむ、というコンセプトは成長確実な分野と考えています。理由はレストランに行く弊害であります。混んでいる、料理が出るまで待たされる、ついつい余計なものをとってしまう、飲み物の代金が高い、タバコが吸えない、行くのが億劫、2時間交代制だったりするなど理由はいくらでも挙げられます。ましてや高齢化が進み、今からバスや電車に乗ってレストランのある所まで行く、というのはもう勘弁、と思っている方も多いでしょう。

私は好きなワインが飲めないのが苦痛です。酒屋で買えば1本2000円程度のお気に入りのボルドーのワインを傾けるにも店のドリンクメニューにはないし、家で作るには…となります。

人々の食べ物に関するこだわりは二極化してきていると思います。本当にうまい店を探し当てること、もう一つはいかに安く外食で済ませるか、であります。ただし、価格勝負の安いチェーン店の味はそれなりです。スーパーの総菜と大差ないかもしれません。

以前、このブログでグローサラントをご紹介しました。スーパーが自店で売っている商材を使って調理したものをテイクアウト、ないし、イートインでサービスするもので海外ではごく普通になっています。理由はレストランが高く、サラリーマンがランチとしてはもう使えない金額になっているからでしょう。日本では店舗スペースの問題でまだわずかしかこの形態で出店していません。

多くの家庭は小家族化が進み、2-3人の家が主流ではないでしょうか?それなのにキャベツ1個、大根1本買っても食べきれないのは目に見えています。(そればかり食べるわけではないからです。)そこで流行ったのがスーパーの総菜コーナーでこれさえあれば普段の食生活にはどうにか対応できます。

では子供や孫が遊びに来たらどうするか、であります。かつて出前といえば中華ラーメン、寿司、丼ものでした。しかし、それではあまり格好いいものではありません。その後、ピザの宅配が出来ましたがあれは価格が高すぎて戦略ミスだったと思います。そういう意味ではフードデリバリー事業はまさに始まったばかりで今後大変面白くなる事業になるとみています。

私が飲食業界にいるならばこういう展開をします。セントラルキッチンはチェーンレストランの当たり前の仕組みで店では半調理品を仕上げるという仕組みになっています。ならば以前ご紹介した商店街の中のレンタルキッチンスペースがヒントになります。レストランがないような住宅街やシャッター街になった商店街、大マンション群、団地近辺にサテライトキッチンを設置し、そこで注文を受け、宅配の拠点とするものです。カバーエリアは半径1キロ程度。まさに宅配業者と同じ感覚です。半製品を最終加工し、デリバリーないし、ピックアップのみのサービスにする、そして店の看板はあの誰でも知っているチェーンの名前だったらどうでしょうか?

飲食業界は誰でも参入できるという意味でハードルが低い業種でしたが乱立しすぎました。ところが最近の人は知らない店にはいかない、風評は事前にチェックというスタイルになっているため、この業界にも資本の力はじわっと押し寄せてきていると思います。

個人的には日本の飲食店は今後、かなり淘汰されるとみています。(飲まない時代になったし、大手食品業界が生み出す商品が家庭でかなりのクオリティのおかずを作ることを可能にしました。)ただし、人は食べることは続けるわけでその食べ方が変わったことに業界のスタイルが変われるかどうか、それだけのことだと思います。

レストラン側も人材不足の中、売り上げを伸ばすにはこのやり方はある程度、的を得ていると私は思います。

そういう時代になると家のダイニングを少し豪華なインテリアにしてみようかと思う方もいるでしょう。これぞ新たな消費を生み出す仕組みです。笑

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年3月21日の記事より転載させていただきました。