1年間で最も過ごしやすいはずだった5月は観測史上、雨の最も多い月となった。5月を取り戻す意味でも6月が爽やかな初夏の訪れとなることを期待したい。
音楽の都ウィーンではいよいよ本格的な観光シーズンを迎える。学校が夏季休暇に入る6月末から、世界各地から旅行者が殺到する。福島第1原発事故の直後、日本からの旅行者は減っていたが、昨年ごろから日本人旅行者が戻ってきた。
日本人旅行者が増えると、日本人をターゲットとする犯罪グループがまた増える。そこで邦人旅行者が犠牲となりやすい3つの犯罪を紹介し、海外に住む日本人の一人として注意を喚起したい。
邦人旅行者が狙わる犯罪では、1. スリ、2. 置き引き、3. 詐欺が3大犯罪だろう。安全な国・日本からきた旅行者は犯罪者にとって最も狙いやすいターゲットという。
地下鉄やバスは混んでいたら乗らないで次を待つべきだ。ウィーンの地下鉄は数分のインターバルでくるから、ロスタイムは多くない。犯罪グループは単独ではなく、2、3人で巧妙に行う。話しかけられて振り向くと、もう一人の人間が横からバックに手を入れる、といった具合だ。
次は、置き引きだ。空港、列車を待つとき、レストランやホテル内が最も置き引きに合いやすい場所だ。注意を怠っていたらやられてしまう。朝食時に友人と話に没頭している時、金品の入ったバックは身から離さないことだ。
ここにきて増えてきたというべきか、カムバックしてきたのが偽警察官の詐欺犯罪だ。
「ウィーン市庁舎裏の路上において邦人旅行者が外国人旅行者に道を尋ねられた直後、偽警察官が現れ麻薬捜査と称して所持品の検査を求めてきた。道を尋ねてきた外国人旅行者が最初に偽警察官の要求に応じて身分証明書を提示したことから、邦人旅行者も旅券を提示した。次に財布の提示を求められ、外国人旅行者、邦人旅行者の順に財布を開けて見せた。偽警察官は更にクレジットカードの提示と暗証番号を教えるよう要求し、外国人旅行者はクレジットカードを提示すると同時に暗証番号も答えた。邦人旅行者は途中から怪しいと思ったので、財布の提示にあたっては現金のみを入れた財布を提示していたことから、偽警察官に対して「カードは所持していない」と答えカードを提示せずまた暗証番号も教えなかった。偽警察官はこれ以上の要求をすることはなく邦人旅行者から離れたため、結果として被害は発生しなかった」(外国人旅行者は偽警察官の共犯者)。
以上、駐オーストリア日本大使館領事部が注意を喚起している偽警察官の手口だ。ハンガリーなど東欧諸国で邦人旅行者が偽警察官にやられるケースが増えているから、注意が必要だ。
犯罪防止のためには、外出時には大金を持ち歩かないこと、旅券や貴重品はホテルに保管、目立つ華やかな服装は避けることなどは基本だ。犯罪に遭遇した時、抵抗はしないこと。銃や刃物を持っている場合があるからだ。
以上、邦人旅行者に自重をお願いする次第だ。楽しい旅行も犯罪の被害者となってしまったら、台無しだ。
日本から一歩、外に踏み出したなら、そこはもはや日本ではない。言葉、風習、政情は異なっていることをくれぐれも忘れないでほしい。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年6月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。