友人が「ガソリンの税負担と国庫へのインパクト」についてツッコミ不足では、とFBでコメントしていた掲題記事を読んで、筆者は、思い込みが先にあると、こういう書き方になるのでは、という感想を持った。
「燃費効率の高い車種の普及でガソリン需要が減っている。それが給油所経営を圧迫し、閉鎖が止まらない」
それだけではない。
エピソードを一つ紹介しよう。
1980年代半ば、ロンドンに勤務していた頃に某元売の特約店ミッションご一行のお伴でデンマークに出張したことがある。当時、ダウンストリームへの事業展開を積極的に行っていた国営クウェート石油が経営する、首都コペンハーゲンのガソリン・スタンド(以下、サービス・スタンドの略「SS」)を視察したのだ。彼らは覚えやすい「Q8」というブランドでガソリンを売っていた。
Q8販売会社の会議室で、会社側から説明を聞いていた某特約店のオヤジさんが「月間平均200klも売っているのですか!」と驚いていた。当時の日本では、SS1軒あたりの平均ガソリン販売量は50kl程度だったからだ。
当時から、日本のSSの零細企業ぶりは経済合理性に反するものだった。
この記事を読んで、念の為に調べてみたら、経産省の助成研究で「SSの経営力強化に係る実態調査報告書」(2016年3月、野村総合研究所)という資料の中に、次のようなデータがあった。ガソリンの販売数量、SSの数、そしてSS1軒あたりの月間平均ガソリン販売量の数値だ。
1990 | 2000 | 2010 | 2014 | |
全国ガソリン販売量(千kl) | 44,783 | 58,372 | 58,192 | 52,975 |
全国SS数(軒) | 58,614 | 53,704 | 38,777 | 33,510 |
SS1軒月間販売量(kl) | 64 | 91 | 125 | 132 |
これから読み取れることは、全国のガソリンの販売数量が減少していく問題もさることながら、2014年段階でも1980年代半ばのデンマークよりも、1軒あたりではまだまだ少ないガソリンしか売れていない(132kl vs 200kl)、という事実だ。
EVの普及とは別に、日本のSS数はまだまだ減少していくのだろうな。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年9月18日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。