厚生労働省は省庁の8割にあたる27機関で3460人の水増しを発表。その後も都道府県、今月に入っては各市町村にも広がっています。
必要な確認をせず勝手に算入、「プライバシーへの配慮」を理由に障害者手帳の有無を確認しない、医師の診断書を確認しないなどが理由と言われています。
ルールを企業に強いる側がルールを守れていないというこの「大問題」。「責任をとれ!」「各省庁内に障害者雇用部門を新設しろ!」との批判も根強くあります。
しかし、民間企業の雇用状況において、
・雇用者数 45.3万人 (身体障害者32.1万人、知的障害者9.8万人、精神障害者3.5万人)
・実雇用率 1.88% 法定雇用率達成企業割合 47.2%
・雇用者数は12年連続で過去最高を更新。障害者雇用は着実に進展
と厚生労働省が着実に進めてきたことも事実。納付金を支払ったことのある企業経営者や政府に勤務したかったであろう、しょうがい者の方々には大変申し訳ないですが、正直のところ、そんなにバッシングすることなのか、と思うのです。
公表された再点検の結果
厚生労働省の再点検の結果、
障害者数:6867.5人→3460人減少して3407.5人
実雇用率:2.49%→1.19%
不足数: 2.0人→3396人
という実態が明らかになりました(厚労省HP)。
行政機関全体で2.49%から1.19%と-1.30%の減少。筆者が省庁別に独自にデータ分析してみました。点検後から点検前の数字をひいて「(点検結果による)低下率」と定義。すると、以下のようになります。
これでみると、消費者庁、防衛装備庁、外務省がワースト3。逆に、内閣法制局、警察庁、金融庁、厚生労働省などは再点検による変化はありませんでした。特に厚労省は、責任を問われるのはかわいそうな面もあるかなと思います。
問題がなぜ起きたのか?
色々な要因が複雑に重なっていたのだろうと思われます。
第一に、罰則を国につけなかったこと。
第二に、そもそも数値が現実的に達成が難しいものを「目標」としてしまっていたこと。これは私の仮説です。
なぜか。以下の図を見てみてください。
17年前の2001年、民間企業の実雇用率は1.49%。40年前以上ですともっと低かったはずです。そう考えると、目標自体が現実離れしていた可能性があります。
第三に、担当職員の運用。行政の仕事は、いったん前例踏襲のやり方・手順が固まると、マニュアルが作られ、その通り円滑に進められていきます。いったん固まった業務手順に対して、「そもそもこれでいいのか?」という疑問も持ちにくく、持っていても改善は面倒なので改善のインセンティブが働きません。
第四に、マネジメント面。厚生労働省の政策評価シートにおいても中央省庁の目標数値は見当たりません、管理監督という面で、マネジメントができていなかったことを示しています。
ちなみに、法定雇用率の積算根拠や実現可能性の議論については現在調査中です。
疑問と改善点・検証
私が疑問に思うのは、
□現場から「数字は守れない」「現実的ではない」という声がでなかったのでしょうか?
□実態と建前の差を「おかしい」という声・議論が出てこなかったのでしょうか?
□これまでの各種審議会で議論されたことはなかったのでしょうか?
□監査部門・管理部門が抜き打ちチェックしたりすることはできなかったのでしょうか?
政治の側も本来なら、数字が本当かをチェックすべきでした。責任を問うのも大事ですが、長年ゆえにわたっていることなので、なぜ発生したのか、過去の歴代の担当者はどういった認識だったのか、なぜ上記の行為をとれなかったのかを深く考察・検証する必要があると思います。丁寧なヒアリングが期待されます。
今後に向けた「業務分析」の必要性
障害者の方が成果を出せる業務はたくさんあります。ちょっと前になるが某省庁に伺い、働き方改革・残業時間の削減について話した時にも言いましたが、そもそも中央省庁は「業務分析」ができていません。障害者ができる業務は増えたかどうかすらわかっていないと厳しい言い方ですが断言できます。業務分析をすれば、障害者雇用の可能性は必ず見出せます。もちろん、障害者雇用枠の採用も検討が必要なのは当然ですが。
あと、今後の国家公務員(幹部)の人事評価において、法令順守度の項目・要素に加えることも検討すべきだと思っています。