現在、大きな争点になっている軽減税率。これといったメリットが感じられず、デメリットの方が圧倒的に大きいと言えます。
私は、今の経済状態では消費税の再増税はすべきではないと考えています。仮に10%に引き上げる場合でも、逆進性(所得の低い人の負担割合が高くなること)の対策としては、給付付き税額控除を行うべきです。
なぜ、軽減税率ではだめなのか。その理由は、そもそも制度自体の政策効果が低い(実効性のある低所得者対策にならない)、税収が減るため十分な社会保障財源の確保ができない、導入コストが高い、事業者(特に中小企業)の事務負担が大きいと、枚挙にいとまがありません。
そして特に問題なのは、対象品目の線引きが難しく利権の温床となってしまうこと。
昨年末、自民・公明の税調で話合いが行われていたときは、生鮮食品に加えて、加工食品も8%の低い税率にするかどうか、酒類や外食はどうかなどの議論しか行われませんでした。
(外食についてのブログは、こちら 。)
しかし、12月24日、急に新聞への適用が閣議決定されました。私はプロセスも非常におかしいと考えています。
政府は、知る権利の保障のためだと言っていますが、それでは公共放送であるNHKについてはどうなるのか。現在は、受信料に消費税8%が含まれていますが、10%への引上げ時にはまた料金が上がるのか?(受信料には、全額・半額の免除がありますが、もちろん単に低所得者というだけではその対象となりません。)
また、知る権利といえば、今やパソコンやスマートフォンの普及率が7~8割で、多くの人がニュースをネットで見ています。そして、ネットは、単に多種多様なコンテンツを受信できるようにしてくれただけでなく、情報の送り手と受け手が固定されていた状況を打破し、国民全員に発信者になれる可能性も与えてくれました。今や、表現の自由、政治活動の自由を保障する上で不可欠なものになっているのです。そのようなことを考えると、ネットの接続料にこそ、軽減税率が適用されるべきです。
先週の代表質問で聞いたところ、総理の答弁は、NHK及びネットの双方とも、軽減税率の適用対象とするつもりはないというものでした。
新聞や一部の図書は「知る権利」を理由に8%に据え置くとしつつ、国民の人権を保障するうえでそれよりも重要なものは10%にする。
この線引きは決して納得できるものではありません。ある程度官邸のコントロールがしやすいメディアには、言うことをきかせるために軽減税率の恩恵を与えるのか?・・・と疑われても仕方がないでしょう。
ジャーナリズムの担い手が利権にまみれてはおしまいです。心ある記者の皆さんには、政府の政策が本当に国民のためになるのか、徹底的に追及していって欲しいと願っています。
私も引き続き問題提起していきます。
編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年1月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。