財務省の財政制度分科会(平成30年10月24日開催)において防衛予算に関しても討議されまた。その資料を財務省がHPで公開しています。
引き続きこれについて重要な指摘とその解説を行います。
防衛装備庁設置後の取組状況(①ライフサイクルコスト、②コストデータベース) (P16 )
① ライフサイクルを通じたプロジェクトの一元的な管理
○ ライフサイクルコスト(以下「LCC」)が当初計画以下となるようプロジェクト管理を行うことが基本であると考えられるが、LCCによるコスト管理を行っている装備品15品目のうち、半数以上がコスト増となっている。プロジェクト管理を適切に行うよう、管理の在り方について不断に見直しを行うべきではないか。
○ 中期防衛力整備計画に盛り込むような主要装備品について、適切にプロジェクト管理をするために、管理対象装備品の拡大を図っていくべきではないか。
② コスト情報のデータベース化及び統計的な分析によるコスト評価手法の確立平成26年度からシステム整備(合計3億円)を進めてきているにも関わらず、未だにコストの算定や評価に活用できる状態になっていない。データに基づくコスト管理の取組は、掛け声倒れとなっているのではないか。
特にデータベースの不備が問題です。
コストデータベースに関する予算執行調査結果の概要(平成30年7月)
調査結果
平成28年度の契約件数は約6,800件、契約金額は約1.8兆円であるが、データベースへの登録対象は約2,200件、約1.1兆円 (計算価格が1千万円未満は対象外)となっており、登録が完了したデータはそれぞれ約1,000件、6,500億円であった。
また、登録されたデータは、航空機や艦船など装備品の種類毎で区分しているが、直接材料費や加工費等の金額を入力しているだけであった。
(注)装備品ごとに「直接材料費」等の総額を入力するのみであり、個別の資材価格などは入力されていない。今後の改善点・検討の方向性
コストデータベースには金額基準を設けるものではないことから、登録対象を見直すとともに、データ入力についても早急に実施すべき。また、直接材料費や加工費等の金額だ
けでなく、部品費や材料費の項目を細分化し、市場価格や企業が調達している資材価格もデータベース化することにより、LCCや計算価格算定の精度向上を図るべき。会計検査院の意見(平成30年10月)
ア 製造原価の取得方法やコストデータの分析手法について、組織として問題を共有して対応を検討できる体制を整備した上で、コストデータの分析に適した製造原価を取得するための方策について民間企業等と調整して、コストデータの具体的な分析手法を十分に検討すること
イ アを踏まえて、入力したコストデータの比較や分析を行って見積資料等の妥当性の検証等を行うことによりCDBシステムの有用性の検証等が可能となるシステムの在り方について検討し、CDBシステムの仕様の見直しについても検討すること、また、製造原価の取得の機会を十分に確保するために、原価調査を積極的に行う体制を整備すること
などとなっています。データベースの不備と活用の不十分が問題であると思います。付け加えるならば諸外国の動向をチェックする組織が装備庁にも各幕僚監部にも内局にもありません。データベースの構築にも外部から人材の登用が不可欠でしょう。
■本日の市ヶ谷の噂■
陸自のUH-Xは民間型の412EPIをベースにし、契約社のスバルが開発を殆どベル社に丸投げ、なおかつ試作機をケチって一機しかつくらなかったために、試験でドライランや燃料タンクのセルフシールなどの不具合が起こると飛行停止し、北米のベル社に改善を依頼するために時間と予算を浪費しているとの噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年10月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。