「持続可能」が、日々の生活の中にすっかり定着したフランス。フランスが誇る文化である食業界でも、レストランのオーナーやシェフたちは、この理念にしっかりコミットし、地産地消や廃棄ゼロ目標などを掲げるのが当然、いや、しなければもはやゲストの支持を得られなくなる時代になっている。国や市の行政もしかりだ。
11月18、19、20日に、パリ&パリ近郊の市で開催された「パリローカル(ParisLocal)」。”持続可能なツーリズム”をコンセプトに掲げて昨年11月に誕生したイベントで、今年が2回目。今までの定番観光とは一線を画した、持続可能・エコロジーに意識を向けたパリ&パリ近郊の街歩きを提案する取り組みで、パリ観光局が中心となりパリ市の各区区長と近隣の市長たちが協力して立ち上げたものだ。
パリとパリ近郊の都市を総称して”グラン・パリ(Grand Paris)”と呼ぶが、このイベントは、”グラン・パリで活躍するアーティストと職人の手仕事の魅力にスポットを当て、その素晴らしさを幅広く知り・楽しんでもらう”ことが目的。パリ観光局の参加呼びかけに、家具職人、吹きガラス職人、料理人、菓子職人、チーズ熟成士、ワインショップ経営者、ビール醸造者、アクセサリー職人など約500人が手を上げた。
アトリエを構える吹きガラス職人や陶器作家や家具職人は、一般市民をアトリエに招き、製造工程を語ったり実演を披露。菓子職人は、自身の店や工房で菓子作りのデモンストレーションや試食を。料理人は、日頃から懇意にしているパリ近郊の生産者たちを店に招き、彼らの食材を主役にしたコース料理を提案。ゲストのテーブルを生産者がまわり、食材の説明や食材を育てる環境などについて語るなどした。
”クリニャンクールの蚤の市”という愛称で呼ばれる世界最大のアンティークショップが集合する観光名所“サン・トゥアンの蚤の市”でも、蚤の市内に店を構える人々が、蚤の市の歴史や、アンティークショップという持続可能に深く関わる職業の説明を。また、バスティーユ広場では、巨大マルシェが設置され、フードトラックやコンサート、パフォーマンスなども行われ、多くの人々が集った。
そろそろクリスマスプレゼントを買い始める時期でもあり、アトリエを訪問した人々が、アクセサリーや食器などをクリスマス用に購入するケースも。一般人にとっては、今まであまり馴染みがなかった職人仕事の魅力がパリ&近郊に多く存在するのを発見できる機会。同時に、職人にとっては即売会的要素もあり大きな宣伝効果も得られた。
”グラン・パリ”を訪れるパリジャンや観光客に、より幅広い好奇心を抱いてもらい、このエリアで活躍する職人やアーティストのノウハウの豊かさや創造性の素晴らしさに、強くフォーカス。行政と職人がタッグを組み、持続可能な職人・アーティスト仕事を啓蒙し、新たな観光スタイルを提案する、今の時代にふさわしいイベントだ。