知財計画2017、(ホントに)整いました。

首相官邸にて、首相以下全閣僚出席のもと知財本部会合が開かれ、知財計画2017が決定されました。
ぼくは委員会の座長として出席しました。

ぼくの冒頭コメント:
映画やテレビ番組などの海外展開は成果が現れ始めました。
リオ五輪の閉会式で総理がスーパーマリオに扮した、そのメッセージも世界に伝わりました。
2020年に向けてクールジャパンの発信を強めるべきです。
そしてそれらコンテンツは、AIやIoTなどの新技術と組み合わせる戦略を立てる段階にあります。
今回とりまとめたAIやデータの知財システムの政策と、政府が同時に進めているIT戦略とを、車の両輪として回していくことをお願い致します。

知財計画2017、コンテンツ関連は、第4次産業革命への対応と、コンテンツ力の強化の2本柱。
具体項目は以下のとおりです。

I.第4次産業革命(Society5.0)の基盤となる知財システムの構築
1.データ・人工知能(AI)の利活用促進による産業競争力強化に向けた知財制度の構築

①データ利活用促進のための知財制度等の構築
契約ガイドライン、データ取引市場、公正競争秩序の確保
②AIの作成・利活用促進のための知財制度の構築
著作権制度、オープンデータ推進
③第四次産業革命の基盤となる著作権システムの構築
権利制限規定、拡大集中許諾制度、教育情報化
など

Ⅲ.2020年とその先の日本を輝かせるコンテンツ力の強化
1.コンテンツの海外展開促進と産業基盤の強化

①継続的なコンテンツ海外展開に向けた取組
②コンテンツと非コンテンツの連携強化
③クリエイターの創造環境整備
④新技術によるコンテンツ表現開発の促進
AR・VR、ドローン、AIなどを活用した制作支援
⑤模倣品・海賊版対策
リーチサイト、サイトブロッキング等の対策
など

2.映画産業の振興
①映画産業の基盤強化のための取組
②海外展開の質的・量的拡大に向けた取組
③ロケーション支援の強化に向けた取組

3.デジタルアーカイブの構築
①アーカイブ間連携と利活用の促進
②分野ごとの取組の促進
③アーカイブ利活用に向けた基盤整備

AIやデータの活用促進策、コンテンツ海外展開や映画産業の振興に関してはこれまでメモしてきましたので略します。

2012年以来、知財計画には教育情報化の記載もあります。今年はデジタル教科書に関し、以下のとおり整理されました。著作権制度の対応がクローズアップされました。教科書・教材の著作権処理問題は民間の対応も促されるものであり、DiTTとしてもこの課題に取り組んでいきます。

「デジタル教科書の有する公共性等を考慮し、その学校教育制度上における位置付けを踏まえ、デジタル教科書についても、公表された著作物の掲載が必要な限度で認められるよう、必要な措置を講ずる。(短期・中期)(文部科学省)」

なお、学校教育制度上の位置付けを踏まえ、とあるとおり、これはデジタル教科書は学校教育法等の改正が前提となっています。その改正もこれからのこと。制度の整備がしかるべく進むよう、後押ししてまいりたく存じます。

関係閣僚から発言がありました。
文科大臣:柔軟な權利制限など著作権システムを構築。小中学校からの知財教育を推進。
経産大臣:特許法・不正競争防止法などの改正を検討。コンテンツ海外展開を推進。
総務副大臣:放送コンテンツの海外展開を2020年500億円に目標を引き上げ。

オッと思ったのは、農水大臣の「農業は知識産業。スマート農業など攻めの農業を推進する。」という発言。どうした農水省。いいぞ農水省。
金融は知識産業、という金融大臣の答弁を。医療は知識産業、という厚労大臣の答弁を。運輸は知識産業、という国交大臣の答弁を求む。

委員からも発言。
川上委員:AIの開発は若手に予算を回そう。
五神委員:データ活用の規制緩和を。
迫本委員:タテ割り・単年度予算の打破を。
竹宮委員:アーカイブ対応の強化を。

これを受け、安倍首相は「知財創造教育を推進する。コンテンツによるインバウンドを強化する。デジタル・アーカイブの工程表を作る。」としました。知財計画の実行、よろしく。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年7月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。