日本は「貿易立国」という勘違い --- 岡本 裕明

2014年04月26日 15:42

日本人は概して円高より円安を好む傾向があります。その理由は「輸出大国ニッポンは円が安い方が有利でしょ」ということかと思います。この前提、考えをそろそろ変えていかねばならない気がします。

まず、輸出大国ニッポンというウソ。日本の輸出依存度はせいぜい10~15%程度です。日本は歴史的にも圧倒的な内需国家なのですが、学校の教科書で「加工貿易の国」とか「資源がないから輸出で稼ぐしかない」と習ってしまったイメージが強すぎるのだろうと思います。


次に電機や自動車メーカーにとっての輸出ですが、電機メーカーは先の円高時代に素早く知恵を出し、対応した結果、今や極端な話、円がどうなろうが影響を受けにくいようになっています。自動車業界も当然その方向にあるはずですが、産業自体の裾野産業が広いため、対応がそこまで敏速ではないのだろうと察しています。

つまり、日本は内需国家であり、輸出産業は現地化、地産池消の発想で海外にその拠点を数多く設けるとともに円建て取引、予約、ヘッジなど様々な工夫をして為替リスクを抑えこんでいます。

こうなると円安になるメリットは何でしょうか? うーんと唸ります。

では円高のメリットです。

皆さんが海外旅行に行くのに円高であれば海外のホテルはより安くなります。海外で売られている土産品もより安くなります。企業でも同じで輸入に頼る会社には大きなメリットがあるのです。小学校の時に習った本当の正解は「資源のないニッポンは輸入に頼らなくてはいけない」ということなのです。これはとりもなおさず円高メリットがはるかに大きいということです(日本に資源がないというとお叱りを頂戴しますが、あくまでも現時点での話とします)。

4月21日に発表になった2013年の貿易収支。史上最大の13.7兆円の赤字です。この発表を受けてトロントのディーラー氏から「この数字をどう捉えたらよいのだ?」と発表の翌日に突っ込まれました。

以前にも指摘しましたが日本の輸出産業はプラザ合意以降徐々に、そして2008年を境に体質が完全に変わりました。日本からの輸出では価格競争力がない、現地の人にとって魅力的な商品が生み出せないなどの理由で日本で「輸出産業空洞化現象」が起きました。そして2012年までの円高局面でその傾向に拍車がかかりました。つまり、言い方に語弊はあるかもしれませんが、民主党政権が日本を空洞化にする体質づくりを強化したともいえるのです。

この結果、日本は円安になっても輸出は増えず、輸入額ばかりが増える事態となったといってよいでしょう。言い換えれば2013年の輸入は前年比増17.3%に対し、輸出は前年比増10.8%なのですが、この差は円安になった分の日本の負担増だったと置き換えても乱暴ではないかと思います。仮にそうならば貿易収支は2012年程度の5兆円台程度の赤字水準に収まったのではないでしょうか? つまり8兆円が円安負担分とみえます。

ところで日本企業が買収する海外企業については為替水準はメリットとデメリットがあります。買収するときは円高であればあるほど円ベースでは安く買収できます。一方、先方からの収益は円安であればあるほど大きな収入になります。つまり、一長一短です。ならば円安でもいいじゃないか、とおっしゃるでしょう。しかし、海外収益を日本の親会社が計上するのはあくまでも決算という机上での話。実際にその収益をキャッシュとして送金するかどうかは別の話です。為替が悪いなら将来の投資のために配当などせず、現地で再投資するのが普通かと思います。

日本の生産構造の変化、経済の成熟性を鑑みたうえで長期安定性を考えれば本来ならば円安より円高の方がよいようにみえます。アメリカが長らく「ドル高政策」をとっていたのも同様の理由です。つまり国内競争力がなくなったからドル高で海外企業を買収しやすくし、結果として世界の有力企業を牛耳るという戦略です。ユダヤならではの発想です。

もう一つ、国防の点からも円高の方がよいかもしれません。円安は海外から日本に資金が流入し、外資による不動産などの買いあさりが生じます。島一つ、村ひとつぐらいの不動産購入はより容易くなるのです。80年代後半の日本がアメリカを買収すると騒がれたあの不動産バブル時代のアメリカの批判の意味はそこにあります。

日本は輸出大国ではないという認識を持ち、為替の影響について再考するにはよいきっかけになるのではないかと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年4月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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