【映画評】裸足の季節

2016年07月01日 06:00
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イスタンブールからおよそ1,000キロの場所にある小さな村で暮らす美しい5人姉妹は、両親を10年前に事故で亡くし、いまは祖母の家で叔父たちとともに暮らしている。厳格なしつけを嫌う彼女たちは、海で男の子たちと無邪気に遊んだことをふしだらと決めつけられ、家に軟禁状態にされた上に、一人また一人と、見合いさせられ、大人たちが勝手にきめた相手と結婚させられていく。そんな中、末っ子の13歳のラーレは、自ら運命を切り開くため、ひそかにある計画を立てていた…。

 

トルコ出身の女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの長編デビュー作「裸足の季節」は、少女たちが古い因習と闘う、甘くてほろ苦い青春映画だ。トルコ生まれフランス育ちの監督の体験が投影されているというが、時代は現代という設定。いくら地方の小村とはいえ、いったいこんな封建的で男尊女卑の世界があっていいのか?!と、思わず怒りがこみあげる。

しかし、そんな閉塞的な村でも若さと美しさとエネルギーを持て余す奔放な少女たちの生命力は、誰にも抑えられない。とはいえ5人の運命はそれぞれ大きく異なり、中には取り返しのつかない悲劇的な事態も。強く意志的な瞳を持つ五女ラーレの存在は、姉たちの無念を彼女独自の反逆精神と計画性ではらす象徴なのだ。

それにしても、女性差別や古い因習、抑圧に虐待(姉妹たちは祖母や叔父に愛されてはいるが、あえて虐待と呼びたい!)と、描かれるのは社会派に傾く題材なのに、この映画のみずみずしさには思わず目を見張る。登場する5人の“名女優たち”の美しさとしたたかさ、時にユーモアも交えた繊細な演出には、誰もが魅了されるはずだ。

10代の美しい5人姉妹の物語といえば、すぐにソフィア・コッポラ監督の「ヴァージン・スーサイズ」が思い浮かぶが、本作はただ単に女の子のフワフワとした心情を映し出すだけではない。これは自由を求めて闘う少女たちのファイティング・ムービーなのである。原題の「ムスタング」とは野生の馬のこと。5人姉妹の長い髪は、決して飼いならされることがない野生馬の美しいたてがみなのだ。

【80点】
(原題「MUSTANG」)」
(仏・トルコ・独/デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督/ギュネシ・シェンソイ、ニハール・G・コルダス、アイベルク・ペキジャン、他)
(ガールズ・ムービー度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年6月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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