【映画評】サクラダ リセット 前篇

2017年03月29日 11:30
サクラダリセット(角川文庫)【全7冊 合本版】

住民の多くが特別な能力を持つ咲良田市。高校生のケイは記憶をすべて保持する能力を、同級生のハルキは世界を最大3日分巻き戻せるリセットの能力を持つ。彼らの持つ力は「管理局」と呼ばれる公的機関によって慎重に監視・制御されていた。だがケイとハルキには、かつてリセットの影響を受けて命を落とした同級生・相麻菫を救えなかったという過去があった。ある日、ケイが所属する高校の奉仕クラブに「写真に入る能力」を奪われた老人から能力を取り戻してほしいという依頼が舞い込む。さらに未来を知る力を持つ“魔女”と呼ばれる老女と出会う。ケイは、一見関連がないように見えたそれらから、菫を蘇らせる可能性に気付くのだが…。

特殊な力を持つ高校生たちが、その力によって死んでしまった同級生を救おうと奮闘する青春ミステリーを2部作で描く前篇「サクラダ リセット 前篇」。原作は河野裕の同名小説シリーズだ。特殊能力を持つ者の力や葛藤を描くのは「X-MEN」シリーズや「SPEC」シリーズと共通するが、本作の主人公ケイは、世界を救ったり破壊したりの、大きなコトを成し遂げようとするわけではない。自分の能力を静かに受け止め、それを持つことを許すサクラダという街を愛している繊細な少年だ。そのため、特殊能力というSF的要素はあるものの、スケール感は小さいし、青春学園ドラマとしての魅力が全面に出ている。

ケイたちは、死んでしまった同級生・菫を蘇らせるため、さまざまな能力を組み合わせながら作戦を練るのだが、それはほとんど裏技のようで、説明されれば「なるほど」とは思うが、何だか都合が良すぎる気も。さらに、2部構成で描く前篇なので、状況説明や登場人物たちの能力の説明が多く、物語はさほど進まないし、サクラダや能力に対する決まり事、能力を組み合わせる構成などがややこしく、ストーリーがモタついてしまっているのが気になる。そんなモヤモヤの解決は、ひとまず後篇までお預けということだ。周囲が記憶を失くしても、自分だけがすべてを覚えている孤独と悲しみを背負うケイを演じる野村周平の、終始憂いを含んだ表情が印象的だ。
【50点】
(原題「サクラダ リセット 前篇」)
(日本/深川栄洋監督/野村周平、黒島結菜、平祐奈、他)
(煩雑度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年3月28日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式YouTubeより引用)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑