【映画評】ザ・サークル

2017年11月11日 06:00
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世界一のシェアを誇る巨大SNS企業「サークル」。誰もが憧れるこの一流IT企業に勤めることになった新人のメイは、ある事件をきっかけに、カリスマ経営者ベイリーの眼に留まり、新サービスの実験モデルに抜擢される。サークルが開発した超小型カメラを使って自分の私生活24時間をネット上に公開したメイは、瞬く間に1000万人を超えるフォロワーを獲得し、アイドル的存在になっていく。だが、そこには思わぬ悲劇が待ち受けていた…。

巨大SNS企業が個人のプライバシーを侵食する脅威を描くサスペンス「ザ・サークル」。SNS社会の光と闇を描く本作は、監視社会の危険性に警鐘を鳴らすもので、もしかしたらそう遠くない未来に起こりうる同時代性をはらんでいる。テクノロジーの進歩には功罪の両面があって、サークルの言い分は「隠し事は罪。すべてをさらして共有すれば悪いことはしないし、世界はもっと良くなる」というものだ。どう考えても危なすぎるこの主張に、主人公のメイが何となくのせられてしまうのは、憧れていた巨大企業の中で埋没したくないという虚栄心があったのだろうか。日常に孤独を抱えていたメイは、フォロワーの数を人気と勘違いし、アイドルとなった自分に舞い上がってしまうのだ。

サークルの社員は、個人情報や嗜好を執拗にシェアしたがり、新サービスの提案のプレゼンでは「シェアは思いやり。隠し事は嘘」と全員で大合唱するなど、まるで新興宗教のような不気味さだ。もちろん誇張はあるのだが、あまりにも描写が薄っぺらい。一流の頭脳が集う最先端IT企業で、この無自覚って?!何をシェアするべきかも考えない浅はかさは、見ていて不快だ。10代のティーンエイジャーならともかく、ヒロインは24歳の社会人。家族や友人を犠牲にし、やっと真実が見えてくるようでは遅すぎる。終盤のリベンジが、根本的な解決になっていないのも、モヤモヤが残る原因だ。ただ、実生活でSNS被害の体現者であるエマ・ワトソンが、監視社会によるプライバシー剥奪や、集団心理による個人攻撃を扱ったこんな作品に出演するのが、興味深いところだ。
【50点】
(原題「THE CIRCLE」)
(アメリカ/ジェームズ・ポンソルト監督/エマ・ワトソン、トム・ハンクス、ジョン・ボイエガ、他)
(問題提起度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年11月10日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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