近い将来「土地が大暴落」するって本当? --- 高幡 和也

2017年12月03日 06:00

今年の公示地価は、住宅地の全国平均が9年ぶりに下げ止まり、三大都市圏では前年比0.5%の上昇となった。また、(株)不動産経済研究所によると、10月の首都圏マンションの一戸当り平均価格は5586万円で、その1㎡単価は7ヶ月連続で上昇している。(2017/11/15発表)

にも関わらず、最近一部の雑誌やエコノミストが定期的に「2020年以降に土地が大暴落する」という主張を発信している。その主張の原因や理由を挙げれば限りないが、その中でも真しやかに囁かれているのが「2022年に土地が大暴落する」という主張だ。これには、あまり耳馴染みが無い「生産緑地」という制度が関係している。

では、そもそも「生産緑地」とは何なのだろうか?

その制度を簡略的に説明すると、主な内容は次のとおり。

土地(農地)が生産緑地の指定を受けると、

1.基本的に終身の営農義務を負う

2.宅地並課税を回避できる

3.開発(建築)行為の禁止

4.耕作者の死亡若しくは故障(怪我や病気)による耕作不可能以外の指定解除不可

5.指定後30年経過による市町村への買取り申請が可能

6.相続税納税猶予

等がある。(※三大都市圏特定市)

つまりこの指定を受けると色々な義務や制限はあるが、農地を残し営農するなら税制面で色々な優遇措置を受けられることになる。

2022年に土地が暴落するとしている人達の主張は以下の様なものだ。

1991年の改正生産緑地法により生産緑地に指定された農地は2022年で指定後30年を迎える。それにより、「市区町村に対し生産緑地の買取りを申し出ること」が可能になるが、しかし、これまでの市区町村の対応を見るとそれらの農地は買取りされない場合が殆どのため、その土地が民間不動産市場へ大量に供給されることで土地の供給過多状態が起こり地価が下がる(暴落?)というロジックである。(※最近はこの主張に併せて、生産緑地指定解除後、賃貸住宅建設ラッシュにより賃貸住宅が供給過剰になり賃料下落の結果、土地価格も下落するという主張もあるが本質は同じなのでここでは触れない。)

ところで、生産緑地に指定された土地には「杭や看板」で生産緑地である旨が表記される。

まずは、辺りを見回して欲しい。自宅周辺、通勤途中、オフィスの隣地等に「生産緑地」と書かれた杭や看板をどれだけ見つけることが出来るだろうか?

注意して探してみると何ヵ所か見つかるかもしれない。さらに、オフィス街や商店街の近くよりも住宅地の周辺の方がよりたくさん見つかるだろう。しかし、そもそもその全てが生産緑地の指定を解除され売却される訳ではない。

たまに誤解されている人がいるので、あえて明確にしておくが、生産緑地に「期限」はない。つまり、指定から30年経過しても生産緑地でなくなる訳ではなく、30年経過すれば「いつでも市区町村に買取申出をすることができる状態」になるだけなのだ。そしてその後に買取申出をした場合、市区町村は殆どの場合で買い取らないので「結果的」に指定が解除になるだけである。

また、生産緑地の指定から30年が経過し、その買取申出が可能となっても、そもそもそれを検討しないであろう生産緑地の所有者もいると考えられる。それは生産緑地制度の大きなメリットの一つである「相続税納税猶予制度を適用している」生産緑地の所有者達だ。

制度の詳細説明は省くが、この「相続税納税猶予制度」を適用している生産緑地を買取申出する場合は、猶予されている相続税を一括納付しなければならない。その前提条件が付く限り、この制度を適用している生産緑地の買取り申請は稀になるだろう。(※もちろんゼロではない。)

だとすれば2022年に即時買取申出を検討するであろう生産緑地は、相続税納税猶予制度を適用していないものが殆どになることが推定される。東京都が平成27年度に都内市区在住農家を対象にしたアンケート調査(都市農業者の生産緑地利用に関する意向調査)によると、この制度を利用していない生産緑地は全体の約41%である。つまり、この「約41%前後」の生産緑地が解除されるかもしれない「対象地」と考えてもいいのではないだろうか。

さらに同調査で相続税納税猶予制度の適用を受けていない生産緑地について、今後の利用意向を聞いたところ「30年経過後に即時買取申出を行う意思がある」との回答は約8%だ。もちろん残りの約90%が実際2022年を迎えた時点でどういう判断を示すかには不確定要素があるとは思う。しかし、その大半が売却に動くとは考えにくい。何故なら本年6月に改正生産緑地制度が施行され、これまで懸案だった税制優遇の維持や、適用要件緩和、買取申出までの期間短縮等が新たに法整備された為だ。

少し話を戻そう。辺りを見回して「生産緑地」を探してみよう。見つかった生産緑地の約50%~約60%が相続税納税猶予制度を適用していて、残りの生産緑地の内、即時買取り申請を希望している割合は約8%なのだ。

仮に一部の雑誌やエコノミストが言うように、2022年に土地価格の暴落があるとするなら、それは生産緑地解除に伴う土地の供給過剰によるものではなく、「過剰なアナウンスによる地価暴落」を恐れた「急ぎ売り」と「買い控え」がその主因になり代わるからではないだろうか。

ここで述べた理由以外にも、近い将来の地価暴落を主張する声は止まない。五輪後不況や人口現象などその原因や理由も枚挙にいとまがない。しかしその原因や理由を、雑誌やエコノミストが過剰にアナウンスし続けていくことが将来の地価の上振れにも下振れにも大きな影響を及ぼすことも否めない。

※アンケート調査の各項目と各数字は、参議院常任調査室発行「立法と調査」2017.11.NO.394「都市農地の保全と有効利用」より引用。

高幡 和也(たかはた かずや) 宅地建物取引士

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