リスク管理の面から考えれば手帳を使うべきではない!

尾藤 克之

師走にはいった。大手書店や百貨店には新作手帳の販売コーナーができる。文化通信のデータによれば、手帳購入者は50代が最多で、購入の60%を女性が占めている。売上のピークは、12月で前年使用していた手帳と同じものを購入する人が多いようだ。これから年末商戦が活発化し、手帳の販売コーナーは1年で最も賑わう時期を迎える。

Googleカレンダーなどのクラウドが浸透し、手帳市場は鈍化していると思う人も少なくないだろう。実は底堅い需要に支えられている。著名人の手帳活用術のいくつかががベストセラーになり、「ほぼ日手帳」は、ロフト手帳部門で12年連続売上1位という人気である。贈呈等の法人用は減少したが、個人用は堅調に推移しているのである。

しかし、そんな手帳ニーズに警鐘を鳴らす人もいる。今回は、『仕事を高速化する「時間割」の作り方』(プレジデント社)を紹介したい。著者の、平野友朗(以下、平野氏)に、手帳のメリット、デメリットについて聞いた。

手帳は一元管理と検索性が劣る

――実際の仕事の管理について話を整理しよう。まずは、仕事を管理するための主要ツール、紙の手帳、クラウド、各々の特性を知らなければいけない。

「結論から言うと、Googleカレンダーなどのクラウドツールのみで管理をするのが一番です。全ての情報を一元管理し、どこにいても情報をアップデート。さまざまな手法を試した結果がこれが一番です。どうして手帳を使うべきではないのか。その体験からお話ししましょう。私も10年以上前は紙の手帳でスケジュールを管理していました。」(平野氏)

「置き忘れたり、持参するのを忘れたり。手元にないとスケジュールを確認できません。歯医者で予約を入れようにも手帳を持っていないため、あらためてこちらから電話するという二度手間が発生したことも数え切れません。Googleカレンダーで一元管理するようになってからは、その場でスムーズに予定を入れられるようになりました。」(同)

――また、平野氏は、手帳は「紛失することで情報漏洩のリスクがある」と問題視する。手帳に、取引先の名刺をはさみ、アドレス帳に詳細な情報を書き込んでいる人を見かける。個人情報のはいったメモリーを無くしてニュースになることがあるが、手帳にはそれ以上の個人情報漏洩のリスクがあると考えられる。

「iPhoneも紛失のリスクはありますがパスワードがかかっているだけ違います。どこかに置き忘れてしまったらどうでしょう。手帳には鍵がかかっていません。ぺらっと開けば個人情報や機密情報がダダ漏れです。私は社会人になりたての頃、手帳をなくしたことがあります。翌日には出てきましたがその夜は生きた心地がしませんでした。」(平野氏)

「今、同じようなミスをしたら始末書では許されない可能性が高いと思います。お詫び文をWEBに掲載して顧客にお詫び状を出して。気が遠くなります。」(同)

手帳は履歴を追えない

――平野氏は、紙の手帳を否定する理由に「検索性の低さ」を挙げている。重要なことを調べようにも手帳は目視するしかない。記憶を頼りにひたすらページをめくるしかない。

「記憶違いがあれば簡単に見付けることはできません。一方、クラウドツールなら検索してすぐに見つけることができます。インターネット検索と同じです。これからは検索して見つける。これが主流になるでしょう。検索することがわかっているなら検索に使用するキーワードを使って予定を書き込めばいいだけですから。」(平野氏)

「また、手帳は、繰り返しの予定を入れるのに適していません。毎週会議がある場合、手帳であれば毎回手書きで予定を書き込みますが、クラウドツールなら1回登録して『繰り返し』と設定すれば未来永劫同じ予定が登録されます。」(同)

――たしかに、毎週月曜日に営業会議があるとすれば、1年間に約50回開催されることになる。また、リスケになればいちいち訂正しなければいけない。

「子どもの頃にやった漢字の書き取りを思い出せば、辟易するでしょう。よく考えてみてください。実際には1年間に50回も同じ作業をしています。分散しているから意識していませんが、それだけの時間を投下しているのです。日単位で考えれば無駄があるようには見えませんが、1年に拡大して考えると無視できません。」(平野氏)

――手帳、ノート、優先順位付け等、簡単にできそうで実は簡単ではない。時間術のスキルはいくつかあるが、自分の向き不向きを勘案して取組むようにすれば、効率は上がってくる。この機会に振り返ってみたいものである。

参考書籍
仕事を高速化する「時間割」の作り方』(プレジデント社)

尾藤克之
コラムニスト