安倍首相はこうなったら厚労省解体に着手を

2018年02月22日 06:00


厚生労働省は、働き方改革法案で目指している裁量労働制の拡大の実施時期を、当初予定の2019年4月から2020年4月に遅らせる方向で検討に入ったようだ。日経新聞やNHKなどが21日相次いで報じた。厚労省が首相答弁で用意した裁量労働制のデータに間違いがあり、今国会で炎上したことが影響したのは間違いないだろう。

厚労省のデータ不備は、“モリカケ”追及に終始するなど、安倍政権に対して筋のいい攻撃材料がなくて四苦八苦している野党にとっては、格好の敵失。政権に対する同省のサボタージュ説も出たほどのずさんな中身だったが、元経産官僚の宇佐美くんが厚労省内から得た情報では、マンパワーの不足など組織的な疲弊に原因があるようだ。

進次郎世代の議員が提唱する「厚労省分割」

宇佐美くんは以前から「厚労省解体論者」なので、これを機に厚労省のあり方を見直す流れを期待しているが、これは在野のブロガーや学者、評論家などによる極論ではない。あの小泉進次郎氏ら自民党の若手議員たちも同じような問題意識を持っている。

自民党政調会で小泉氏ら若手議員が社会保障の将来像に徹底議論し、こども保険などの政策提言をした「2020年以降の経済財政構想小委員会」。いわゆる「小泉小委員会」の回顧録『人生100年時代の国家戦略』(藤沢烈、東洋経済新報社)には、中盤で「厚生労働省を分割せよ」というズバリの一節がある。

人生100年時代の国家戦略
藤沢 烈
東洋経済新報社
2017-12-08

厚労省は90年代後半の橋本内閣による省庁再編で、当時の厚生省と労働省が合併して誕生した。バブル崩壊後の超絶不景気のなか、橋本行革では省庁のスリム化・効率化をめざしたが、この20年間で社会保障コストは大幅に増え、働き方は多様化。女性活躍、子育て政策のニーズの逼迫化など、所管する業務の領域が膨張化し、必要な人員が足らず「無理ゲー」を強いられている。

小泉小委員会は、抜本的な見直しを掲げ、次のような役割分担による3つの再編案を示している。

①社会保障(年金・医療・介護)子ども子育て(少子化対策・子育て支援)国民生活(雇用・再チャレンジ・女性支援)

②社会保障(医療・介護)子ども子育て(少子化対策・子育て支援)国民生活(年金・雇用・再チャレンジ・女性支援)

③社会保障(年金・医療・介護)国民生活(少子化対策・子育て支援・雇用・再チャレンジ・女性支援)

また、大臣を2人制にする案も提起した。

小泉小委員会による厚労省分割案は党側に提出された後、表現としては穏当に丸められたものの、その年の参院選での自民党公約に「省庁再々編を含めた中央省庁改革について検討」として盛り込まれた。

もちろん、国民的人気の高い小泉氏らが過去に提起したからといって、上の世代の厚労族をはじめとするオジさん議員たちの岩盤もある中では、過激な再編が実現するのは簡単ではない。しかし、小泉氏の父、純一郎首相による郵政民営化を思い出せば明らかなように、時の首相と官邸が本気になって主導し、世論の高い支持を得さえすれば、岩盤に突破口は開けられる。

安倍首相は政局的な動機が絡むと本気出す

ここで重要なのは首相がドリルでぶちあけるための動機付けだ。幸か不幸か、安倍首相と厚労省には、有名な「因縁」がある。第一次安倍政権の崩壊は、当時の厚労省の年金行政における大失態がきっかけだった。

しかし、10年前より見違えるほど政局に強くなった、いまの安倍首相は、与党であろうと、野党であろうと、政敵封じは徹底している。またも今回の失態により、目玉法案をつぶされたとなれば、中長期的に厚労省再編に切り込む活力に十分なりうる。

首相官邸サイトより

私が思うに、復活してからの安倍首相は、政局的なインセンティブが絡むと、政策の大胆な見直しや歴代の政権もやらなかった難題に挑むことも厭わないところがある。経団連に賃上げを要請し、働き方改革や女性活躍を提唱するあたりは、昔の安倍首相には考えられなかったリベラルな姿勢がある。政略的には民進党のポジションを侵食する意味が大きく、敵失も呼び込んで瓦解させることに成功した。

昨年秋から電波制度見直しを踏み込みだしたのも、政局的には、“モリカケ”報道でヒートアップしたテレビ局へのけん制の意味合いもあるのだろう。

現実的には、仮に安倍首相が本気で厚労省再編に乗り出すとしても、この秋の総裁選の後なのが順当なシナリオだろう。圧勝で3選を決めるには、厚労省の族議員の支持も取り付ける必要がある。しかし、厚労省の直面する政策課題の膨張ぶりを考えれば、どんなに遅くても十数年後の小泉進次郎首相の時代まで放置するのは限界がある。

安倍首相が2021年に勇退した後、後任者が長期政権を築き、省庁を再編するだけの求心力を持つことは簡単ではあるまい。その意味でも、総裁選で勝ったあとの任期3年で再編しきるところまでは行かなくても、法案を通過させるなどの道筋をつけるところまではやって、憲法改正とともに小泉進次郎世代への「置き土産」に厚労省再編をやって歴史に名を残してはいかがか?

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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