ロッテが重光被告の代表権外し。球団への影響は?

新田 哲史

きのう(20日)、韓国聯合ニュースが特ダネで報じていたが、ロッテホールディングス(HD)の取締役会が21日開かれ、韓国で収監中の重光昭夫被告(ロッテHD副会長・韓国ロッテ会長)が代表取締役から外れることが決まったようだ。獄中にいる本人からの申し出という。

(ロイター)ロッテHD、重光昭夫副会長が21日付で代表権外れる

重光被告は取締役副会長としては引き続き経営陣にとどまり、これまで2人体制だった代表取締役は佃孝之社長のみとなる。日本の裁判所による実刑判決ではなく、日本の会社法で定める役員の欠格事由に当たらないため、いわば自主的に“ツートップ”の座を下りた格好だ。これに対し、昭夫氏と対立する兄の宏之氏は先ほど報道各社に声明文を発表し、「獄中経営は社会的に許されない」と厳しく批判し、経営復帰への意欲をあらためて示した。

現在、重光被告は控訴審での逆転無罪、最悪でも執行猶予を目指しているが、これは推測ながら、今回の代表権外しの背景として、ある種の「法廷戦術」であり、「韓国世論対策」の可能性はある。

韓国の司法の実態は、国内世論の影響が強い。もし控訴審でも実刑判決が出て経営復帰が絶望的になった場合、「同胞の重光武雄氏が日本で一代で築き上げたロッテグループの舵取りが、日本人の手に委ねられてしまう」という、いわば<名を捨てて実を取る>捨て身の戦術をとることで、なにかと日本に対抗心のある韓国世論にアピールし、重光家(韓国名・辛家)に向けられた厳しい視線を懐柔することで控訴審判決を少しでも有利にする狙いなのではないだろうか。

重光被告に先立って、前政権絡みの贈収賄事件で立件されたサムソングループトップの李在鎔被告は、昨年8月の一審では懲役5年の実刑判決で、2月5日の二審判決は懲役2年6月、執行猶予4年となった。おそらく重光被告も控訴審判決まで半年程度は要するのかもしれないが、この“判例”は意識しているとみるべきだろう。しかし、控訴審判決の結果に関わらず、日韓で模索している上場のような経営上の重大決定が当初のスケジュール通りには行くまい。

日本国内での影響としては、菓子メーカーとしての業績に大きく直撃するほどではないが、プロ野球千葉ロッテについては、オーナーの武雄氏も有罪判決で、オーナー代行である重光被告も収監中とあっては、外国の事件とはいえ、今後問題視される可能性もある。

きのうのVlogでも言及したように、現在のプロ野球のガバナンス制度では、オーナーの逮捕・収監は想定していない不備がある。実刑判決直後は朝日新聞くらいしか指摘していなかったが、その後、夕刊フジの名物野球記者、江尻良文編集委員もコラムで重光父子に“辞職勧告”した。

きょうの取締役会で球団に関しての体制変更について取り上げられたのか、まだ不明だが、今後、ファンやメディアから厳しい声があがれば対応を余儀なくされるだろう。