文在寅は“素晴らしい”大統領だという逆説的真実

2018年05月20日 20:00

韓国大統領府Facebookより:編集部

韓国の文在寅大統領が南北の平和と夢の統一に貢献できる大統領で、ノーベル賞に値するなどと言う人はものを分かっていないということは、「朝鮮半島と日本国益」でも説明したところだ。

しかし、文在寅は日本にとっても世界にとっても良い大統領だという逆説的な一面がある。まず、文在寅は韓国の大企業の力を徹底的に破壊してくれている。李明博などが新自由主義的な政策を進めて、その結果、法人税率や所得税が低くなるなど、企業の競争力は大いに上がった。

だから、日本も企業減税などを進めなくては競争力を維持できなくなっている。そこで、私は福島瑞穂さんなどに、「韓国の企業優遇は日韓両国民共通の敵」という演説でもソウルでして戦って欲しいと主張してきたほどだ。

それが、福島さんは何もしてくれなかったが、文在寅大統領のおかげで企業に有利な政策は後退し、財界人は続々と逮捕されている。これ以上の日本企業と経済と財政に対する貢献はない。

また、米朝の対話ができそうなのも文在寅のお陰だ。文在寅はアメリカと北の仲立ちをするとかいっているが、どっちにとっても迷惑なことだ。私は以前から書いているように、米朝対話のためには文在寅は“素晴らしい”大統領だと思っている。完全に北の意のままに動く存在だから、面子を立てるとかいう必要がないので、米朝にとって変数が一つ減るからだ。

これまでの大統領はそれなりの自己主張をしたがったから邪魔だったが、その必要がない。それが、余計なことしたがると平和のためにならないからあまり動かない方が良い。

ところが、文在寅が米朝の話し合いで蚊帳の外に置かれているのに満足できなくなっていろいろ盲動しているようでもある。

文在寅としては、米朝の話し合いを促進すれば自分の地位向上が図れるとみたのが、逆に、無用になることに気づいて慌ててるのかもしれない。

韓国政府が何かして自分も絡みたいと思うとろくなことがない。足下もみられるし、北も余計な期待をする。アメリカは安倍首相と場合によっては習近平とだけ相談して文在寅にはあまり情報を与えない方が、交渉としてはうまくいくだろう。

ちなみに、薩長盟約ができたら、坂本龍馬は薩摩から用済みでお払い箱になって亀山社中は経営難になり、長州とのパイプをもとめてた土佐藩に拾われて海援隊に模様替え。世の中そんなものだ。龍馬は長州に顔が利くのを利用してあちこちに雇われたフィクサーというのが基本的な性格だと私は思う。龍馬が暗殺された頃、おりょうは下関在住。いわば龍馬は下関市民です。龍馬は本籍土佐、現住所長州、会社は長崎だったとみると幕末のことがいろいろ理解できる。

一方、このところの、北朝鮮の韓国に対する無理難題は、もしかすると、文在寅の自己主張に対する警告かもしれない。北朝鮮は米韓合同軍事演習が実施されていることを理由に、南北閣僚級会談を中止したのはその兆候かもしれない。

しかし、こうした要求は文在寅政権の一部がアメリカや野党勢力に対する嫌がらせをし組んだのかもしれない。

北朝鮮は19日、中国の北朝鮮レストランから韓国に集団亡命したとされる女性従業員の送還を要求し、従業員の送還を離散家族再会事業の条件とするとかいいだした。

2016年4月に中国の北朝鮮レストランから韓国に集団亡命したとされる女性従業員12人の送還を要求したのだが、女性従業員12人をめぐっては、従業員の脱北は韓国の情報機関、国家情報院から指示されたとするレストランの支配人の発言を、韓国の一部メディアが報道していた。

北朝鮮の報道官は「これをどう処理するかが板門店宣言に反映された北南間の人道問題解決の展望を決定するのに大きな影響を及ぼすことになる」として、従業員の送還を板門店宣言で8月に開催するとした離散家族再会事業の条件とするようなことをいっている。

これを無理難題とみることも可能だが、もしかすると、朴槿恵への攻撃かもしれない。つまり、この亡命事件を朴槿恵政権が仕掛けた南北分断策と位置づけ、北に媚びるとともに、反統一勢力として保守派を攻撃するのに使うつもりではないか。もし、彼らを北に返したら、南北融和に不安を募らせている脱北者に対する強い牽制にもなるからだ。

まさかそんなことはあるまいし、それが韓国政府の主流んぼ考えとは思わないが、そういう要素はあるという裏読みくらいはしておいてよいのではないか。半島の政治は昔からそのくらい厳しいせめぎ合いが普通だ。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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